サンタクロースのプレゼント

nobuotto

第1話

 サンタはお気に入りの椅子に座って、暖炉の火をずっと見ていました。

「プレゼント、プレゼント、プレゼント」

 椅子をゆらしながら何度もつぶやいています。

 そこに息子のジュニアがやってきました。

「父さん、やっとそろったよ。僕としては最高のプレゼントだと思う。父さんもみてくれないかな」

 プレゼントのある広間にサンタも行きました。そこには、小さな箱がうず高く積まれています。その箱の中に子供たちが喜ぶ機械が入っているのだそうです。

「君の好きにすればいい」

 箱の中に入っている機械を子供たちが喜んでくれるのかどうか、サンタはわかりませんでした。子供たちが何を喜んでくれるのか、それが分からなくなってきていました。

 だからサンタは引退することを決めました。

 一緒に見ていた奥さんがサンタに言いました。

「これでいいのかしら。あの子はプレゼントの意味がまだ分かってないと思うの」

 ジュニアはいつも「大丈夫、大丈夫。もう父さんの代わりができるから」と言うのですが、奥さんは心配していました。

「彼も一生懸命考えたのだろ。それでいいんだよ」

 サンタは暖炉の部屋に戻って行きました。そしてまた椅子を大きく揺らして考え込んでいます。

 サンタが悩んでいたのはトナカイへのプレゼントでした。

 ずっと二人で世界中の子供たちにプレゼントを贈ってきました。トナカイはいつも元気に空を飛んでプレゼントを運んでくれました。

 最後にトナカイにお礼がしたかったのです。

 世界中の子供達にプレゼントを贈ってきたサンタですが、トナカイへのプレゼントとなると何も思いつきませんでした。

 プレゼントを渡す時にサンタを引退することをトナカイに告げようと思っていました。だけど、そのプレゼントが思いつきません。

 長い間揺られていた椅子が止まりました。

 やっと決まったのです。

 そして自分の部屋にこもりっきりになりました。


 何日かしてサンタはトナカイを部屋に呼びました。

 トナカイも年をとっていたので、歩き方もゆっくりです。

 サンタが引退することをトナカイは何となく気付いていました。だから、自分も引退することを決めていました。

「あなたに何を贈ればいいか、ずっと考えていました。世界中の子供へのプレゼントはすぐ思いつくのだけど、あなたへのプレゼントは本当に分からなくて」

 サンタはポケットから金色に光る鈴を取り出しトナカイの首にかけました。

「すっかり錆びていたからね。そんな鈴だと夜空を照らすこともできないでしょ」

 サンタはトナカイの鈴がピカピカになるまで、ずっと磨いていたのです。

「ありがとうございます」

 そう言いながら、トナカイは心の中で思っていました。

「けど、あなたがいない空を飛ぶことはないんです」

 少し寂しそうにトナカイは微笑みました。

「とても、とっても嬉しいです」

 すっかり綺麗になった鈴をつけたトナカイは、初めてサンタと空を飛んだ時のようにサンタの回りを飛び跳ねました。

 そして「私からも」と言って、今度はトナカイがサンタに大きな箱を渡しました。

 箱を開けると、そこには赤い靴が入っていました。

「すっかり古くなって、汚れがたくさんついていたので。それに、ヒビもあちらこちらに入っていたので」

 赤だが茶色だかわならない色になっていた古い靴が、暖炉の火よりも赤く輝いています。

 今年のクリスマスのために、トナカイもずっとサンタを靴を磨き続けていたのでした。

 実は、サンタはいつもプレゼントをあげるばかりで、自分がもらうのはこれが初めてでした。だから、プレゼントをもらうことがこんなにも嬉しいことだと、サンタは初めて知ったのです。

 サンタは赤い靴になんども口づけし、大事そうに抱え込んで、丁寧に履いて、一歩づつゆっくり歩きました。

 そんな二人をジュニアと奥さんがみていました。

「母さんの言っていた通りだ。プレゼントは新しくて面白いものが一番だと思っていたんだけど。もっと勉強しなくちゃだめだな」

 ジュニアの手をにぎり奥さんはうなずきました。


 クリスマスがやってきました。

 サンタとトナカイは子供たちへのプレゼントを積んで夜空を飛んでいます。

 サンタの横にはジュニアも座っています。

 サンタの赤い靴が夜空にくっきりと浮かんでいます。

「父さん、ファイト、ファイト」

 そう子どもたちに励まされながら、ピカピカの鈴をつけたトナカイも楽しそうに夜空を駆けるのでした。



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