第十二話「顔合わせ」
出発前。
隊商に参加する面々で顔合わせが行われた。
俺はラフィの側に控え、状況を見守る。
「この度の隊商リーダーを務めさせて頂きます、テオドール・ヘルツです。
今回は我がフェレール商会の護衛任務を引き受けて下さり、皆さまに改めて感謝を」
深々と礼をしたのち、テオの目配せで隣の女性が一歩前にでる。
金髪の髪を後ろでまとめ、気の強そうなつり目。
「華月騎士団のリーダーをやっているクララ・セルナットだ。
最近は王都迷宮に籠りっぱなしだが、普段は護衛任務をメインに活動している。
私の職は見ての通り戦士」
肩越しに担ぐ武器を指さしながら言う。
戦斧と呼ばれる武器。
しかし斧の部分はそれほど広くなく、見た目は槍に近い形状をしていた。
「右から剣士、
今回はよろしく頼む」
言葉を締めくくる。
どうやら挨拶には自分達の職構成を紹介する目的もあるみたいだ。
(職がわからないと、もしも戦闘になった時にやりにくいしな)
クララによって紹介された面々を俺は眺める。
(女性ばっかだ)
華月騎士団は全員女性で構成されていた。
そしてチーム名に入る騎士団という文字に恥じず、装備は一級品のものを揃えている様に見えた。
情報を調べてみると全員がレベル三十台。
Aランク相当の冒険者であることがわかる。
クララの挨拶に続き、隣の男が前に一歩でる。
「それでは続きまして。
甘味同盟のリーダーをやっていますベルンハルト・ヴィッキです。
我々も普段は護衛任務を活動していましたが、同じく最近は王都迷宮で活動しています。
こちらは私が魔剣士、後ろが治癒術師、後ろから弓、弓、
ベルンハルトのチームは男女二:三の構成であった。
これまでの治癒術師は、魔術師と似たような恰好をよく見かけていたが、ここの治癒術師は神官といった格好。
年齢も他のメンバーよりも少し上に見え、言い方は悪いが「おっさん神官」と表現してしまおう。
弓の職は全員女性。
その中でも注目してしまうのは調教師兼と紹介された女性。
今回の設定上、俺と同じ職になる。
職を示すよう、担がれた弓とは別に肩に一匹の生物がとまっていた。
シャドーホーク レベル12。
黒い鷹だ。
そして、先程からシャドーホークはこちらを注視していた。
『なんか青、さっきからガンとばされてない?』
『ん? ああ、ガンをとばすというより僕のことをすごく警戒してるね』
青はシャドーホークをチラリと見ると、シャドーホークはふっと「いや、俺何も見てないっす」といった感じで視線を外した。
今の青は見た目、愛くるしいが。
生物に本能的な危機感を抱かせるのかもしれない。
挨拶は隣の獣人族の女性に移る。
「レーレ・レヴィーです。
フェレール会長に縁がありまして、今回は依頼を受けました。職は剣士。専門は魔物狩りで、護衛任務は不慣れかもしれませんがご指導よろしくお願いします」
親しみやすそうな笑みを浮かべながらペコリと丁寧な礼をし、挨拶を簡潔にしめる。
こちらはチームでの参加ではなく、単独での参加みたいだ。
(会長から直の依頼、しかも一人にってことは相当な実力者?)
レベルは34と、先までの冒険者よりもレベルだけを見れば上である。
アレクと同じ種族である獣人族。
レーレはアレクの耳とは少し異なり、猫耳に近い形状であった。
続いて、俺達の番となる。
「ラフィ。魔術師」
続いて俺を指さし。
「調教師」
終了。
(えっ、終わり!?
いや、この身体になってからはラフィと会話する機会も多くなったけど、元々は口数少なかったか……)
もうちょっと何か「よろしくお願いします」でも付け加えたほうが友好的に見えるのではと思わずにはいられない。
だが、ラフィの挨拶はそれで充分であったようだ。
他の冒険者はひそひそと「あれが勇者様一行の一人」「オーラが違う」「あとで握手してもらおう」といった会話が繰り広げられている。
詳しい説明などなくともラフィは王都で有名人であった。
「今回の参加する冒険者は以上だ。
我々としてもこれだけの実力ある冒険者に護衛を引き受けてもらえ、非常に心強い。
それでは今回の行程を話しておこうと思う」
テオが地図を取り出し、話始める。
王都からマキナ共和国へと向かう道のりが朱印でなぞられていた。
いくつかのポイントも同時に記されており、そこが一日ごとの予定ポイントであるみたいだ。
「予定ではマキナ共和国までは十八日。
これだけの面々であればハーバー砦から山越えし、行程をあと三日は短縮できるのだが」
王都を南下した先、マキナ共和国へ向かう直線上に”ハースラ山地”と書かれた地名が見える。
「今回、会長の御令嬢も同行される関係上、時間よりも安全を優先しておきたい」
冒険者の面々は「なるほど」といった様子。
(なんで、山越えは駄目なの?)
こっそりラフィに耳打ちし、問う。
(最近はあまり被害を聞かないけど、山道は野盗がでやすい。
それにテオが予定してる道は騎士団が巡回する道だから、魔物の出現も少ない。
すごく安全)
(ああ、なるほど)
ラフィの説明で納得した。
「そのため、遠回りではあるが迂回するこちらの道を行く」
ハースラ山地の更に東側に朱印がなぞられている。
山地をぐるっと回りこむような道だ。
テオの説明に耳を傾けながらも、俺は地図を眺めていく。
道の先には大きく地図の左右を横断する一本線。
”ミルナ川”と記されており、一本線の先は”マキナ共和国”と書かれていた。
この川がアルベール王国とマキナ共和国の国境であることが伺える。
国境を越え、五日ほどで目的地であるマキナ共和国の首都に到着するみたいだ。
「それでは今回の旅が良きものになることを。往復二か月の道、よろしくお願いします」
最後に、説明を終えたテオが言葉を締めくくった。
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