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 少し震える筆跡で書かれた手紙を読みながら、温かいものが胸の中に広がるのを感じた。

 彼女に会いたい。そして、彼女もおれに会いたがっている。違う星に住み、少し前までは名前も知らなかったはずの他人だったはずなのに、今は違う。おれとイヴは、この手紙を通して確かに繋がっていた。


 ありとあらゆる計画を考えた。

 イヴが月面連絡船に乗り、壊れかけの基地を脱出し、地球に来る。はっきり言って無茶だ。だからこそ、備えなければならない。故障に備えて修理器具を持ち込むべきだし、水も食料も多めに積んでおくべきだ。考えつく限りの可能性を列挙した。今までで一番長い手紙になった。


 それを打ち上げたあと、おれは食料庫を確認した。一ヶ月過ごしてどれだけの食料が減ったかを数え、あと何ヶ月保つかを計算した。人がいないから電気も水道もガスも止まっている。当然、食料は次々に腐っていく。

 今は長い間保存できる缶詰や真空パックのものを集めて凌いでいるが、それが尽きたときのために、どうにかして自分で食料を生産できるようにしておきたい。一人が二人に増えたとき、焦らないためにも。


 おれは車で街を駆け回り、保存の効く食料を集め回った。

 そうしているうちに届いた返事は、今までで一番短かった。その代わりに小さなペンダントが同封されていた。バラの花を象った、丸くて青いペンダントだった。

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