第2話 門
彼は丘を下り、街の前に立つ。
目の前に門があり、門番が立っている。細身、中背で、肩辺りまでの黒髪、中性的な容姿で、男か女かはっきりわからない。
門番は言う。ここに入るには、元いた世界の記憶も、立場も所有物も、名前すらも捨てる必要がある。それでもいいか?
彼は、門番の顔を見、今や自分の氏素性、記憶が思い出せないことに気づく。 門番、苦笑して言う。
「すでに覚悟の上か。通るがよい」
彼、うなずいて門をくぐる。
門番は門を通る彼に、新しい彼の名を告げる。だが聞いた瞬間、彼はそれを思い出せなくなる。
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