第333話


青年が『やらかした』のは、さくらたちが泊まって3日目のことだった。

いつものようにスゥたちはさくらとハンドくんを残しダンジョンへ行っていた。


「あれ?ヒナルクさんはダンジョンに行かなかったんですか?」


さくらがダンジョンに向かう6人を城門で見送って、屋台で買い食いしてから戻って来たらカウンターからそう話しかけられた。


「・・・そんなこと、あなたには関係ないんじゃないですか?」


「え?あ、まあ・・・そうなんですが・・・」


「リブロ。何サボってるの。

すみません、ヒナルクさん」


「あ、おい・・・!

俺はヒナルクさんに聞きたいことが・・・」


「どうせロクでもないこと言うんでしょ!」


「違うって!

ヒナルクさん!俺も仲間にしてもらえませんか?

俺の方があの『ヒョロいの』よりは戦えると思うんです!」


「・・・魔物相手に戦えないばかりか、同じパーティの女性に意見も言えず尻に敷かれていたクセに」


さくらの言葉にギロッと睨んでみたが「おーおーコエ~」とバカにするような口調で言われただけだった。


「うわっ!」


ドサッと音がして、ロンドベルが床に落ちてきた。


「もう・・・なんですか一体」


「ベルくん。

この『女のドレスの中に隠れる』ような軟弱者が『ヒョロい』ベルくんより頭も戦闘能力も高いってさ」


「・・・ほう」


「それで偉そうに『自分を仲間に入れろ』だとよ。

魔物が出たと聞いて、女2人の後ろに隠れた軟弱者のクズの分際で」


「俺は軟弱者じゃ・・・」


「ウサギ1羽を3人で倒すのに何十分掛かった?」


「だいたい15分、だ」


何故か威張って言うリブロ。


「・・・ヒナルクさん・・・・・・今なんて?」


「ウサギ1羽」


「・・・・・・・・・それ以外に?」


「いない。

ついでにそいつを3人がかりで解体して、丸焼きにして食い終わるのに3時間も掛かっていた」


「・・・そんなのが?」


「『強い』んだとよ。

ヒョロいベルくん。チョイと撫でてやって」


「素手ですか?」


「その方がいいんじゃない?」


「フッざけんな!」


さくらとロンドベルの会話にキレるリブロ。


「ふざけてはいない。

おまえが弱すぎることを自慢するからだ」


よっわい。よっわい」とバカにするさくら。


「ダメですよ。弱い相手に『おまえは弱い』なんて事実を突きつけては」


「俺は弱くない!」


「ああ。失礼。

『弱すぎる相手』でしたね」


この時点で冷静さを欠いているリブロの方が負けていることにリブロ以外は気付いていた。

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