第274話
「シーナ。スゥもルーナも。
『怒気を完全にコントロールするため』だからって、ぶっ倒れちゃうまで鍛錬しちゃダメだよ。
それこそ『意味がない』んだからね」
「はい・・・すみません」
シーナはさくらに深々と頭を下げる。
それにあわせて2人も頭を下げた。
3人は『シーナの暴走』あたりから記憶がほとんど残っていない。
唯一、シーナ自身が『ヨルクが瘴気の影響を受けて暴走した自身に『清浄化魔法』を繰り返しかけて回復させた』ことを覚えているだけだ。
その『覚えていない理由』として、ハンドくんは『瘴気の影響による暴走』とした。
・・・たしかに間違いではない。
シーナの感情が爆発して瘴気を撒き散らしてしまったのだから。
ハンドくんはさくらに『怒気のコントロールの鍛錬に集中しすぎて、怒気と瘴気を読み間違えて身の内に取り込んでしまい、瘴気の影響を多大に受けてしまった』と説明している。
神々の
「でもなー。さくら。
セルヴァンだって悪いんだぞ。
『助けたら本人のためにならない』って、いっさい手を出さねーんだから」
「手を出せば『解決』にならない」
「だからさー。
コイツらはまだ子供なんだよ。
最初は手を貸してやれって」
「息子たちは自分で『なんとか』出来たぞ」
「アイツらは自分たちで『なんとかするしかなかった』んだろーが!」
「だから『なんとかなった』だろう?」
「『なんとかした』んだよ!」
ヨルクとセルヴァンのやりとりは
しかしヨルクにしてみれば、セルヴァンの『放っておけば自分で解決する道を選ぶ』という教育方針で幼馴染みたちが文字通り『
「ねえ、ハンドくん。
日本で『獅子は我が子を
〖 違います。それは
ことわざは『獅子の子落とし』ですよ。
さくらが言ったのは、ことわざから派生した言葉です。
『我が子に厳しい試練を与えることで、その子がどんな子かを見極めて一人前に育てることができる』という意味です 〗
「ほらみろ。さくらの世界でもことわざになっているんだぞ」
「さくら!騙されるなよ!
セルヴァンは何度も『谷の底に落としてる』からな。
さくらだって落とされるかもしれないぞ〜」
ヨルクに脅されると、心配そうに見上げて「落とす?」と聞いた。
ここは別荘の寝室。
さくらはセルヴァンの『あぐらの中』だ。
そんなさくらの頭を撫でるセルヴァン。
「さくらは『我が子』ではないからな。
そんなことはしない」
〖 大丈夫です。
そんなことになったら、ヨルクを代わりに落とします 〗
「オレかよ!」
〖 『さくらの親』ですから当然です。
重量のある岩を大量に落として埋めて差し上げますから、遠慮なく谷の底に落ちて下さい 〗
「落ちるかー!」
「じゃあ、落とすか?」
「止めんかー!」
ワイワイと話が盛り上がるさくらたちの様子を見て、シーナたちの表情にもだんだん笑顔が戻っていく。
その様子を見たセルヴァンとヨルクは「もう大丈夫だな」と目で会話をしていた。
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