第258話
このダンジョンに入って5日目。
少しずつ疲労が蓄積し始めている気がする。
「ねえ、ハンドくん。
このダンジョンって何階まであるの?」
〖 300階です 〗
「・・・え?マジで?」
〖 そうです 〗
「5階までの小さなダンジョンだと思ったら300階の大規模ダンジョンだったって・・・。
ユリティアの冒険者ギルドが知ったら『びっくり仰天』だよね」
〖 伝えてありますよ。
『壁に魔石が埋まってて、同時に魔力を送ったら奥の壁が開いた』って。
何階まであったかはダンジョンを出てから報告する。
何が起きるか分からないから、人を寄越さないように、と 〗
「そうだね。スゥたちだから進んで行けるんだもん。
でも、シーナとルーナは多少の影響は受けているんでしょ?」
〖 そうですね。
でも、ちゃんと休みを取れば大丈夫でしょう。
さすがに体調を気をつけていますよ 〗
「何かあったら、スゥの負担が大きくなるからね」
〖 そこもちゃんと分かっているようです。
スゥに『自分たちの様子がおかしいと思ったらすぐに教えてほしい』と頼んでいましたよ 〗
「・・・ねえ、ハンドくん」
〖 明日にしましょうか 〗
「そうだね」
一日しっかり、鍛錬もなしで休息をとるようにという話になった。
ハンドくんが作る結界は瘴気の浄化をしてくれるから、明日一日ここから出なければ、シーナとルーナ、そしてスゥも、体内に溜まった瘴気を浄化出来るかな?
ハンドくんから〖 明日一日は休息の日とします 〗と言われて、シーナとルーナは困惑していた。
「ですが・・・早くダンジョンを出た方が、ご主人様にも良いのではないでしょうか?」
「ご主人さまの体調が悪いのですか?」
「たぶん違う・・・」
スゥは少し考えてからシーナたちを見る。
「私たちの体調を心配したんだと思う。
シーナたちだけでなく、たぶん私も気付かないうちに『瘴気の影響』を受けている。
このままいけば、私たちの誰かが正気を失う。
そうなる前に『休息時間』を設けてくれたんじゃないですか?」
最後はハンドくんに確認する様に問いかけた。
〖 その通りです。
通常より瘴気が強く、3人の身体には大きな負担がかかっています。
・・・疲れが蓄積していませんか? 〗
ハンドくんの言葉に3人は顔を見合わせる。
「たしかに・・・私は、ルーナもですが『疲れやすくなっている』と思っていました」
「私もです。魔物が強いためだと思っていました」
〖 その甘い考えは禁物です。
魔物が強いということは、あなたたちのレベルも上がっているということです。
すでに、ここに入った時からレベルが20も上がっています。
それでも『強くなったと感じられない』理由はなんでしょう? 〗
ハンドくんに言われて、慌てて自分たちのステータスを確認する3人。
「あ・・・本当にレベルが上がっている」
「じゃあ、私たちが疲れているのは・・・瘴気のせい?」
〖 そうです。
明日一日『身体を休める日』にします。
料理以外すべて禁止とします 〗
「鍛錬も魔法の練習もダメですか?」
〖 ダメです。
今回の休息は『回復する前と後』を検証するためです。
いいですか?『少しでも多く回復する』のが目的です。
それなのに鍛錬などをして疲れるなど『
それにこれは『ご主人を休ませるため』でもあります。
ご主人には移動でも瘴気の影響が出ています。
鍛錬はこのダンジョンを出てから『相応しい場』を提供します。
気付いていますか?
たとえ結界内であっても、鍛錬時に出す『闘気』で魔物が『活性化』して寄って来るのですよ 〗
そう言われて慌てる3人。
それまで、結界内で鍛錬していたからだ。
「申し訳ございません。これからは注意します」
「師匠。私に『文字かるた』を貸して下さい。
明日は文字の勉強をします」
「私には『計算ドリル』を貸して下さい」
〖 スゥはどうしますか? 〗
「ユリティアで購入した本を読もうと思います」
〖 それでは明日、結界の中央にテーブルを出します。
久しぶりに3人で勉強をしていなさい 〗
「「「はい」」」
時々、3人で文字かるたを使ったり、各々の能力にあわせた計算ドリルで勉強をしている。
そのため、ユリティアで数日の滞在は3人一緒の部屋にしていた。
ルーナは文字は読めるようになったが、まだ書けない。
計算はまだ1桁の足し算・引き算で『繰り上げ・繰り下げ』は出来ない・・・というより、指折り数えている状態だ。
シーナは書けるようになってきたが、たまに『鏡文字』になる。
計算は2桁3桁でも足し算・引き算が出来るようになったが、時々『繰り上げ・繰り下げ』で間違える。
スゥは問題なく読み書きは出来るようになった。
計算は掛け算と割り算にはいり、『九九』を
そして、スゥは「復習になる」との理由から2人に勉強を教えている。
「日本みたいに週に2日。
『休みの日』を作ってあげたらいいね」
そう言ったさくらの願い通りにしてあげたいが、この瘴気の強いダンジョンにいる間はスゥたちにも影響が出るため難しいだろう。
そのため、ここから出たら出来る限りさくらの願いに添うように調整しようと、ハンドくんは考えていた。
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