第256話


さくらが魔石の精製に疲れて眠っているのを見たスゥは、自分の指導をしてくれる担当のハンドくんに声をかけた。


「ご主人はお休みですか?」


〖 どうしました? 〗


「いえ。ご主人が『戦闘の最初に金ダライを落とす』と仰っていたので。

それに・・・瘴気で具合が悪くなったのではと。

もしそうでしたら、早めにどこか広場に入って休んで頂いた方が良いかと。

そう思いましたので」


〖 大丈夫です。私たちのリーダーたちがついていますから。

それに、歩みを止めて長くダンジョンにいるよりも、先に進んでこのダンジョンから早く出る方がご主人のために良いと思いますよ 〗


「はい。分かりました」


師匠のいう通りだ。

このご主人の身体に負担をかける危険なダンジョンに長くいるより、1秒でも早くこのダンジョンからご主人を出した方がいいでしょう。


スゥはそう考えると、「その角を曲がってすぐにバジリスクが10体います。その先の広場にコカトリスが7体います。そのコカトリスの卵を狙っているのでしょう」


〖 バジリスクは毒を持った巨大なトカゲです。

攻撃の際に口から毒を吐くことがあります。

攻撃した時に毒を撒き散らします 〗


「それは『血液に毒が混じっている』ということですか?」


〖 はい。そうです。

では、『どう戦えばいい』ですか? 〗


「切ると血を流す。その血に毒が混じっている。

血が噴き出すということは、毒が霧状に撒かれてしまう。

じゃあ、血が出ないようにするには・・・」


スゥは同じように考えているシーナとルーナに目を向ける。


「シーナ。ルーナ。ここは私に一任してもらえますか?」


「スゥ?・・・何を?」


「スゥ。1人じゃ危ないよ。

私たちも一緒に戦うから」


「いえ。これは私じゃないと出来ません。

師匠。バジリスクは『火に弱い』のでしょうか?」


〖 はい。ですが気をつけて下さい。

このバジリスクは火に弱いタイプなだけです。

バジリスクの中には『火を吐く種族』もいます。

すべて『同じ』だと思っていたら危険です 〗


「焼き殺した方が良いと思ったのですが・・・それでは意味がありませんね。

アイテムを手に出来ませんし」


〖 スゥ。魔法の実技を始めた時に教わったことを覚えていますか? 〗


「・・・弱い魔法を重ねると強い魔法になる。

魔法に同系列の魔法をぶつけると威力を弱められる。

竜巻は地面の石などを巻き上げるけど『風と地の魔法』ではないため、地の魔法は効かない。

水の上で風の魔法を使うと・・・・・・師匠。

もし風のヤイバに火の魔法を使うと、切り傷は火で焼かれて血は出ませんか?」


〖 はい。その通りです 〗


スゥは何かを確信したように頷くと、シーナたちに向いて「手伝ってほしいことがあります」と伝えた。



バジリスクがコチラに気付き振り向くと「キシャー!」と威嚇して素早く近づいて来た。


「今です!」


「「【火の玉ファイヤーボール】!」」


スゥの合図でシーナとルーナが、詠唱を同時に終えて火の魔法をバジリスクに向ける。

しかし初期魔法のため威力が弱く、さらにバジリスクまで届かず床に落ちてしまった。


「風よ。あの炎を纏い敵を切り刻め【 風の刃ウインド・カッター】」


スゥの出した風の魔法は、シーナとルーナの出した火の魔法を纏ってバジリスクに襲いかかる。

バジリスクは一瞬で切り刻まれ、切断部分は火で焼かれて血は出ていなかった。


「やった・・・?」


ルーナが喜びで声をあげようとしてハンドくんに口を塞がれる。


「ルーナ。騒いではダメだ。

この先にも魔物がいる」


スゥの注意にコクコクと頷いたルーナからハンドくんが離れる。

黙々とバジリスクの解体をしていく。

初めての『毒を持つ魔物』の解体だったため、ハンドくんの指示で慎重に解体をしていった。

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