第233話
〖 久しぶりに、ユリティアに戻りましょうか 〗
「そう言えば、ユリティアを出てから三ヶ月になるね。
そろそろ、ハンドくんたちも休憩しないと疲れるよね」
〖 戻るのにふた月と言ってたため、宿の人や客たちが心配しています 〗
「ご主人も、師匠も。
たまにはゆっくり過ごされたら良いかと思います」
スゥの現在レベルは185。さくらの公開ステータスはレベル457。ハンドくんの公開ステータスは382。
すでにスゥは独立出来るだけの強さを持っている。
スゥに独立を促したこともあるが、しっかり拒否された。
「今もご主人と師匠から細かい指導を受けているのです。
そんな状態で独立しても、戦略を立てずにチカラを過信して『叩き潰す』戦い方になります。
戦略を立ててもご主人や師匠から注意を受けなくなってから、やっと独立を考えるべきだと思います」
スゥの言葉に、さくらとハンドくんは了承した。
もちろん、パーティを抜けても『共闘』という形で旅を続けることになる。
その場合、経験値を分け与えることなく自分のチカラでレベルを上げていくことが出来る。
さくらもハンドくんも『十分強い』ため、スゥの経験値を分けてもらっている事を気にしていたが、スゥは『指導の対価』と思って納得していた。
そして、スゥは護衛となった時点で『時間の縛り』は消えている。
1人で自由に行動することも可能だ。
それでも、スゥはさくらから離れようとしなかった。
無人島でハンドくんから魔法を教えてもらい、最低限の魔法はひと通り使えるようになったが、余程のことがない限りは戦闘には使わない。
スゥが戦闘で使ったのは2回。
その時から、魔法の練習を繰り返しつつ、属性と弱点属性を勉強している。
『石の雨』で、さくらが地魔法をぶつけて『砂』にし、風魔法で砂を纏めてゴーレムの『目隠し』に使ったのを目の当たりにしたスゥは、『力技では解決しない』と理解したのだ。
さらに『地属性のゴーレム』に対して、砂を水魔法で固めて出来た『土の
そして知った。『ゴーレムの表面をバリアが覆っている』ことと『ゴーレム自体は脆い』ことを。
「私はまだまだ未熟です。
魔法を覚えて『やれる』『強くなった』と思い込んでしまいました」
そう言って深く反省していた。
そんなスゥに、魔法を組み合わせて使うこととその危険性をさくらとハンドくんは教えた。
風魔法の『竜巻』と火魔法の『火柱』をあわせて『炎を纏った竜巻』を4つ作った。
そしてそれを2つずつ纏めると、竜巻の炎は激しくなった。
更にそれが纏まると竜巻は轟炎を纏い、スゥの水魔法では消すことも弱めることも出来なかった。
魔法は重ねれば重ねるほど、それは加算ではなく乗算されることを教えた。
そして、これにはスゥの『火魔法』でも威力を弱めることが出来、繰り返し使うことで炎を消すことが出来た。
「これは『相殺』というんだよ。
威力を
その際に使う魔法が強ければ、一発で相手の魔法を『無力化』出来る」
「それで身を守れば『結界』になりますか?」
〖 魔法を無力化出来るだけです。
先ほどの『炎の竜巻』の場合、炎は消えますが『竜巻』は残っています 〗
「炎は消せても、竜巻の攻撃を受けるということですね。
『炎が渦を巻いている』のか、『風魔法と組み合わせている』のかを見極める目を持たないとダメですね」
「スゥ。竜巻をよく見てごらん」
さくらに促されて、スゥは轟炎が消えて『ただの竜巻』となったものをじっと見る。
「あれは・・・何か混じっています。
でも『魔法』は感じません」
「竜巻があるのはドコ?」
「地面の上・・・あれは石?砂利ですか?」
「そう。あれは魔法ではないよ。
竜巻は地面の砂利を巻き込んでいるんだ。
此処が『草の上』なら、あれに草が混じる。
草も『
これが『水の上』なら、水属性の攻撃を受ける」
「魔法だけでなく、『何処で戦っているか』を判断するのも必要なのですね」
〖 あれは魔法ではありません。
そのため『魔法で防御』は出来ても、魔法をぶつけて威力を削ぐことは出来ません。
あの竜巻に土魔法をぶつけてみなさい 〗
スゥはハンドくんに言われた通りに土魔法をぶつける。
しかし、砂利は何も反応しない。
そのまま威力も数も減らず、竜巻の中で渦を巻いている。
スゥは次に風魔法をぶつけた。
すると竜巻は威力を落とし、それにあわせて砂利も落ちていった。
〖 風の威力が落ちたため、砂利を巻き上げるチカラが減りました。
このまま、風魔法をぶつけてみなさい 〗
「はい」
スゥは風魔法をぶつける度に、砂利が落ちていくのを確認していく。
そして、最後の風魔法をぶつけて竜巻が消滅すると、最後まで巻き上がっていた砂利が地面に落ちた。
「本当に『地魔法』が使われていません。
これは・・・他の魔法でも使えそうです」
「水の上で風魔法の『風の刃』を使ったら?」
「『水を纏った風の刃』が出来ます。
・・・相手は『水の刃』と勘違いして『水魔法で防御する』可能性があります。
ですが『水魔法を使っていない』から、防御は効かない」
「あたり。それを瞬時に判断するんだよ。
どう?出来そうかな?」
「頑張ります」
〖 フォローならします。
まずは『魔法の属性』を見極める目を養いましょう 〗
「はい。よろしくお願いします」
スゥはひとつひとつ、確実に進んでいる。
さくらとハンドくんは、スゥが『今はいない幼馴染み2人』に、そしていつか『指導者』となった時に『間違いなく教えられる』ように指導していく。
もちろん、スゥ本人に『考えて答えを導き出す』ことと『実際に体験させる』のを忘れない。
のちにスゥは自覚する。
『ただ教えられるより身につく』ことを。
『轟炎の竜巻』。これは、さくらが初めてこの無人島で魔法を知って遊んだ時に使い、アリスティアラから「やりすぎです」と注意された魔法だ。
そして、ハンドくんがボルゴたちの『罰』に使った魔法でもある。
もちろん、そのことをさくらは知らない。
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