第203話


広場の一角にあるベンチに座り、スゥとルーナの『報告』を聞く。

彼女たちとシーナは、『焼肉串』を食べてきたらしい。

スゥは『塩を振ったとり肉』。

ルーナは『タレがついた肉なら何でも』。

シーナは『魔獣肉』が美味しかったらしい。

「何の魔獣?」と付き添っていたハンドくんに聞いたら『しし肉です』と教えてくれた。

まだ『足りない』様子の2人を見て「もう一度行っておいで」と言うと目を輝かせる。

「シーナ。2人のこと頼んでいいか?」と、ベンチに座らず立っていたシーナに聞くと「はい」と頷いた。


「それでご主人様は?」


「オレはもう暫く此処で休んでから動くよ」


「分かりました。此処は『警備隊』が多いですが、どうかお気をつけて下さい」


「ありがとう」



シーナには悪いけど、もう『困ったこと』に巻き込まれちゃったんだよね。


・・・あれ?

ルーナがシーナから睨まれてる。

反対隣に座ってるスゥを見たら「ルーはね。お店のおばあちゃんを『イジメていた』男の人を「エイ!」ってやっちゃったの」と教えてくれた。



「だって。おばあちゃんが『売り切れた』って言っても『何とかしろ』って」

「何とか出来ないなら並べてあるやつを『タダで寄越せ』って」


「だからといって『突き飛ばす』のはダメです」


『『何処かの誰かさん』がエルハイゼンの城下町で『全く同じこと』をやりましたね』

『被害者は『おばあちゃん』ではありませんが』



・・・耳がイタイ。

ルーナを見るとシュンと落ち込んでいる。



「ルーナ。何のために『隠密行動』の練習をやってるんだ?」



私の言葉にハッとして此方コッチを見てきた3人。

あれ?『気付かれバレてない』と思ってたのか?



「『気配を消す』練習や『音を立てずに歩く』練習を『鍛錬』で取り入れてるだろ?」

「別にそれが『悪い』と言っていない」

「ただ『使う時』を間違えるなよ」



私の指摘に3人は真面目な表情で聞いていた。





ねえハンドくん。

魔獣って『倒したら魔石になる』んじゃないの?


『『魔獣』には二種類あります』

『『魔石化したもの』に瘴気が蓄積されて生まれたものと、『野生の動物』に瘴気が蓄積されて姿を変えたものです』

『そのため、倒したら『体内に溜まった瘴気』は魔石になりますが、肉体は無くなりません』

『体内の瘴気が消えるため、『家畜』同様に食すことが出来るようです』


そうなんだ。

まだ一度も『魔獣と対峙』したことない・・・か、ら・・・・・・


『心配しなくても『大丈夫』です』

『さすがのさくらでも、敵とは『ココロを通わせる』ことは出来ませんよ』



ハンドくんはそう言いながらさくらの頭を優しく撫でる。

さくらの『不安』を少しでも取り除くように。


さくらは『自分は敵の『最期の叫び悲鳴』に耐えられるのか』を心配したのだ。

ココロが繋がった状態で『魔獣を倒した』ら・・・

その不安が『恐怖』になる前に、ハンドくんは不安を取り除きたかったのだ。



『『もしも』の時は、さくらに『結界』を張ります』

『『自分たち』を信じて『守られて』もらえますか?』


うん。

『ハンドくんのいうこと』にウソはないもん。

ハンドくんが『守る』って言ったら、絶対に守ってくれるもん。



さくらの『深い信頼』にハンドくんは改めて誓う。

『相手がどんなに強敵であろうとも、必ずさくらのココロと笑顔を守り抜く』と。




そして『きたる日』には・・・・・








ハンドくんに『不安』を取り除かれたさくらは、露店・屋台巡りの続きに戻った。

ハンドくんはちゃんと『下調べ』してあるのか。

ハンドくん同士の『情報収集』が済んでいるのか。

屋台のメニューのことも『どんなもの』なのかをすべて説明してくれた。

3人が『気にいった』という『焼肉串』の屋台に近付くと、確かに『タレの焼けるこうばしい匂い』が美味しそうだ。


・・・食べてみたい。

スゥが言っていた『塩の焼き鳥』は日本の『焼き鳥』と違うのかな?

タレ味も食べてみたいし、猪肉に近い『魔獣肉』にも興味がある。



『食べてみますか?』

『『串』ではなく、少量ずつ全種類が楽しめる『皿盛り』がありますよ』


あ!それ食べてみたい!


『ではイスに座って待っていましょう』


・・・?此処は『レストラン方式』?


『いいえ。『理由』はすぐに分かります』



ハンドくんに促されて、空いているイスに座る。

そこにはテーブルもあり、屋台の料理を持ち込んで食べられるようになっているらしい。

少しすると「ごっ主人さまー」という声が聞こえた。

声のした方を見ると、列に並んでいるスゥとルーナが手を振っている。

シーナが何か注意するようにかがむと同時にハンドくんから『ピコピコハンマー』で頭を叩かれていた。

はい。そんなところで大声を出したり、大きく手を振ったりする行為は『周りに迷惑』です。

・・・叩かれて当然だね。





あの子たち、また此処に戻っていたのか。

だから『待って』いれば良かった訳だ。


『彼女たちについている仲間ハンドくんに買ってくるように伝えました』

『彼女たちは一周したみたいですよ』

『ですがシーナ以外は『露店』に興味が無かったようです』


あの子たちには『この世界の料理』を教えなきゃね。

それも『この世界の道具』で作れるように。


『『この世界の料理』なら『銀馬亭』で覚えました』

『道具はこの町に『冒険者ギルド』があります』

『そこなら色々と購入出来るようですよ』


『冒険者ギルド』って、ゲームなどにある『アレ』のこと?


『そうですよ』


・・・私も『ギルド』に入ったほうがいいの?


『仕方がないでしょうね』

『彼女たちだけで『パーティ』を作ると、さくらは『お留守番』ですよ?』


私だけ『別行動置いてけぼり』ってこと?


『パーティに入っていないと『一緒に冒険』は出来ないですし『報酬』も出ません』

『連れて行くのも、ついて行くのも無理です』

『イヤでも『やる気がなくて』も、リーダーとして名前だけ入れておきましょう』

『大丈夫です。さくらは『誰よりも強い』ですし、実際に戦うのは『彼女たち』です』


でも・・・いつか『いなくなっちゃう』んだよ?

それでもいいの?


『『パーティの解散』があります』

『その頃には彼女たちも『独立ひとりだち』出来るようになっていますよ』

『それに彼女たちは『さくらと一緒』じゃないとギルドに登録しませんよ』



ハンドくんの『説得』で、さくらも一緒に登録することにした。







「此処が一番『屋台が集中』してるな」


「はい。『安くて早い』です」


「それに『美味しい』んだよ」


・・・どこぞかの『牛丼屋チェーン』ですか?


「ご主人さまは『焼肉串これ以外』に何か美味しいの食べた?」



隣からルーナが興味津々な顔で見上げてくる。

同じ様な顔で反対隣に座るスゥと、正面に座るシーナ。



「オレは『お好み焼き』を食べたよ」


「お好み焼きー?」


「あったかなー?」


「ありましたよ。『臨時休業』の札が出ていました」


「ああ。大量注文を受けていた『予約』か『弁当』でも届けに行ったんじゃないかな?」


「残念でしたね。2人とも」



落ち込むルーナとスゥ。

正方形のテーブルの『一辺』に一人ずつ座らされているのは、ハンドくんから〖 お行儀よく出来ませんか? 〗と注意されたからだ。

『ピコピコハンマー』を出される前にシーナから「2人とも。ご主人様に恥をかかせる気ですか?」と言われて『お利口』に座ったのだ。

シーナたちについていたハンドくんたちの話だと、『『節度のない行動』を繰り返す従者を連れた『主人』が、周囲から嘲笑あざわらわれていた』らしい。



『人の振り見て我が振り直せ』か。


『丁度良い『お手本』がいましたね』


・・・でも『いつまで』もつのかな?

『喉元過ぎれば熱さを忘れる』って『ことわざ』もあるからね。


『『ピコピコハンマー』の出番ですね』


彼女たちスゥやルーナが問題を起こしたら、私が『監督不行届』でせめを受けるのかなー。


『安心して下さい』

『その時は『この大陸全員の記憶』を消して、彼女たちとは『無関係』になりますから』

『そうなったら、彼女たちは『アリステイド大陸』に生まれなくなりますが、それは『仕方がない身から出た錆』ですね』


・・・・・・彼女たちについてるハンドくんたちも『それでいい』の?


『仕方がないですね』


『『教えたことが守れない』のですから』


『もちろん『そうならない』ように厳しくシツケます』


『ですが、自分たちがどんなに頑張っても、彼女たちが『自ら変わろう』としない限り『意味がない』のです』


『無理だと判断した時は、躾は一切諦めます』




彼らは、けっこう『辛辣しんらつ』なようだ。






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