第187話
「・・・・・・『これ』は一体どういうことなのか説明して下さい」
下の酒場へおりたさくらと副隊長。
しかし酒場も『ひどい有り様』だった。
「良かった!無事だったか!」
さくらの姿を見た
「オレは何ともない。
「いや。俺らよりマスターが・・・」
そして、しがみついて泣きじゃくっている『オッチャンの娘』。
彼女のおかげで『私は無事』だったのだ。
・・・ごめん。ハンドくん。『魔法』つかうわ。
『水魔法なら良いですよ』
オッチャンに近付くと、泣きじゃくっていた娘さんが振り向いた。
「・・・ヒナルクさま」
「ありがとう。キミのおかげでオレは助かった」
そう。昼ごはんを食べたあとに彼女が訪室してきて『別の部屋のカギ』を渡してきたのだ。
「お休みになられる時はこちらの部屋を絶対お使い下さい」と。
それだけを言って、すぐに部屋を出て行った彼女の様子がおかしかったから、『ハンドくんの1人』が護衛としてコッソリついていった。
すぐに宿屋を出てどこかへ出かけた所までは知ってたけど・・・
アクビしてるのに気付かれて、ハンドくんに寝るように言われちゃった。
〖 ご飯もデザートも食べたのですから、もうお休み下さい 〗
〖 夜ご飯が遅くなればデザートはナシですよ 〗
そう言われて、あてがわれた部屋に入ったらそのまま寝ちゃったんだった。
起きたときに『真っ暗』だったし、寝ぼけていたから『部屋が変わってる』のを忘れてパニックになるし・・・
『大きな音』が怖かったし、ハンドくんはナデナデ止めちゃったから怖かったし・・・
『少しでも物音をたてたら『隠れている意味』がないですからね』
・・・『隠れてた』のも忘れてたの。
でもオッチャンたちが『私を守ろう』としてケガをした。
オッチャンは鑑定魔法で
『神官』たちが来るのなんて待ってられなかった。
オッチャンの隣に膝をつく。
『床に広がった血の海』がオッチャンの生命が終わろうとしていることを証明している。
「ヒナルク様!立ってください!」
血で汚れます!と言われたが、そんなもん『オッチャンの生命』が消えかかってるのに気にしてる方がおかしいだろ。
「助けてくれてありがとな」
私がそう言うと、彼女は俯いて首を左右に振る。
「オッチャン。いつも美味いメシ食わせてくれてありがとな」
私がそう言うと、声が聞こえたのかニヤリと笑ってくれた。
「だから。これが『オレからの礼』な」
オッチャンの上に手を翳して『水の回復魔法』を発動させる。
・・・・・・ぴちゃん。
雫が一滴、水面に落ちる音がした。
すると『水の波紋』がさくらを中心に『宿屋全体』の床に広がっていく。
まるで『柔らかい空気』が水色の光となって、波のように繰り返し広がっていく。
その波が金色に輝くと、
床に横になり『忍び寄る死』を覚悟していたオッチャンのキズもみるみる塞がっていった。
この『奇跡のような光景』は神殿の手で『秘匿』とされた。
「ヒナルク殿」
神官長に呼ばれて立ち止まる。
穏やかで優しい目をしたこの神官長を見ているとドリトスを思い出す。
「こんな時間にお呼びして申し訳ございませんね」
「いえ。『神官長』様がそう簡単に神殿から出られては、警備隊の皆様が大変でしょう?」
「時々『困らせてみたい』と思いますわ」
神官長の言葉に背後に控える若い警備隊員が青褪める。
この神官長は
『さくらとは違いますから』
私は『困らせてみたい』じゃないよ。
『困らせている』んだもん♪
『さらに『悪い』です』
自分の方が「行動力がある〜」と勘違いしているさくら。
『冒険旅行中』は、ちゃんとそばにいて『お世話』をしないと、と改めて誓うハンドくんだった。
神官長の私室に招かれたヒナルク。
神官長は「ヒナルク殿と大事なはなしがあるから」と警備隊員に『部屋の外からの警備』をお願いした。
「ヒナルク殿。この度はご迷惑を承知で『押し付ける』事になってしまい申し訳ございません。その上、貴方の『奇跡』を私共の『功績』として奪う結果になった事も申し訳なく思っています」
神官長は深く頭を下げてくる。
「神官長様。頭を上げて頂けませんか?」
「これは『自分自身が望んだこと』でもあるのですから」
そう。
私は『宿屋で見せた奇跡』を『神殿の起こした奇跡』にすり替えてもらったのだ。
回復魔法は一般的に『光魔法』が有名だ。
しかし『水魔法』と『木魔法』にも回復魔法はある。
『光の回復魔法』が有名なのは『初心者レベル』で覚えられるからだ。
ただし光魔法を使える人が少なく、そのほとんどが『神官』として神殿に『
ちなみに、この世界では男性でも女性でも共に『神官』と呼ぶ。
そして水魔法と木魔法の回復魔法は『上位
この冒険旅行に出る前、神々に『基本魔法』をすべて教わってあるから、もしも「中位級魔法を使ってみろ」と言われても困りはしない。
もちろん『使う相手』は『言った張本人』だ。
・・・どっちに転んでも、私は『珍獣扱い』になるところだった。
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