第186話
モゾモゾと動いたさくらが目を開けると周囲は『真っ暗』だった。
『何か』がさくらを目覚めさせたのだ。
その『何か』が音なのか気配なのか。
魔物の声だったのか。
何だったのかが分からなかった。
〖 目が覚めましたか? 〗
「あれ?ハンドくん。どこ?」
〖 そばにいますよ 〗
さくらは布団に
しかし、『布団の感触』が自分の『今いる場所がベッドの中』だと教えてくれている。
何も見えない『闇の中』にいる事で恐怖が湧き上がってきたが、ハンドくんが頭を優しく撫でる感触が伝わってきた。
〖 大丈夫ですよ。もう少しだけ『このまま』で居てください 〗
〖 『ナイショのしぃー』ですよ。出来ますか? 〗
ハンドくんの言葉に両手でクチを押さえてコクコクと頷く。
なぜだろう。『ナイショのしぃー』という言葉に『懐かしさ』が込み上げて来る。
・・・そして気持ちが『落ち着いた』。
本来は『内緒』をさす言葉だったと思う。
だけど、私『たち』は『かくれんぼ』の時にも使ってたっけ。
・・・・・・私『たち』?
誰だったのかな?
覚えてないから『小さい頃』かな?
ずっと撫でてくれていたハンドくんが『ぴたり』と止まった。
その瞬間にふたたび押し寄せてきた『恐怖』で身体が固まる。
ダン!ドタン!バタン!という物音が『隣の部屋』から響いてくる。
「おい!『この部屋』で『間違いない』のか!」
「そうだ!『一番奥の部屋』だ!」
「『誰もいない』じゃないか!」
「『荷物』もないぞ!」
「この部屋には『誰かが使っていた痕跡』すらないぞ!」
「『襲撃』は失敗だ・・・仕方がない!
「分かれて『町を出る』ぞ!」
「決して捕まるな!『シューヴァイン』で生きて会おう!」
ふたたびバタバタッという音が階下へ向かっていく。
しばらくするとその音も聞こえなくなった。
〖 もう『かくれんぼ』は終わりですよ 〗
〖 よく『頑張りました』ね 〗
ハンドくんが頭を撫でてくれるが『何が起きていた』のか分からない。
・・・・・・どういうこと?
私は『此処にいる』のに。
〖 さくら。それは『あかり』をつければすぐに『分かります』よ 〗
あかり・・・光魔法というか『懐中電灯』をイメージすると、両手の中に『電球』のような大きさの光が現れた。
それと同時に周りの『闇』がザザーッと音を立てて引いていき、部屋の中に広がる『外の明るさ』で、まだ『陽が高い』ことを証明していた。
それはあの『有名なアニメ映画』のワンシーンのように。
・・・天井を見回したが、残念ながら『ぽよん』って落ちてこなかった。
「え?・・・『まっくろくろすけ』?」
〖『魔法生物』ですよ 〗
〖 元は『ケセラン・パサラン』の亜種だったようです 〗
「・・・亜種が魔法生物?」
〖 さくら 〗
「ん?なに?」
〖 『それ』は後にしましょうね 〗
『
「ヒナルク様!ご無事ですか!」
何故だろう。
『私の名前』を呼びながら『私の部屋の前』を通り過ぎて行った。
「え?え?ヒナルク様?
何故か慌ててる声で、私も『いまいる場所』が『私が借りてる部屋ではない』事を思い出した。
「ここはドコ?わたしは〖 さくら 〗」
ハンドくんが遊びだした『私の言葉』を塞ぐ。
部屋の外では警備隊副隊長が『私』の名前を呼んで探している。
「遊んでたらダメだね」
〖 『用事』を終わらせて、後であそびましょうね 〗
「うん」
ハンドくんが頭を撫でてくれる。
ベッドをおりて、近くの扉を開く。
私がいたのは『私の部屋の2部屋隣』だった。
私が部屋を出た音に気付いたようで「ヒナルクさま〜!!」と廊下へ飛び出してきた。
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