第175話



そして、さくらは彼女たち3人に『自分のチカラで生きていく』手助けをしたいと思っているらしい。

『まっすぐな心』で生きていけば、再び『この大陸』で生まれることが出来るからだ。


ただ、さくらは『セルヴァンが『自分と一緒に旅をする』と知ったら悲しむのではないか』と気にしているようだ。

「セルヴァンが『一緒に暮らすことができない』家族なのに、自分が彼女たちと一緒に『楽しそうに過ごしている』のを見せられるのは知らされたらツライのではないか」と・・・




・・・そんなことは無い。

彼女たちに・・・特に小さな2人には『強く生き抜くすべ』を教えて欲しい。

どんな時でも『前向き』に生きていく『強い心』を。

そして『シアワセ』を教えてほしい。



何より、さくらの『優しいココロ』と『思いやり』が嬉しかった。

彼女たちにも『その優しさ』を知って受け継いでほしい。

魂に『刻みつける』ことが出来れば、それが『彼女たちの本質』となる。

何度転生しても、彼女たちはその『優しさ』を持って、まっすぐ生きていけるだろう。




「さくらは『彼女たちのこと』に気付いているのか?」


〖 はい。『鑑定魔法』で気付いています 〗



・・・さくらには『事故で亡くなった』とだけ話していたが。



〖 『ボルゴの反乱』の一部は、高熱を出して寝ていた時に『時間を超えて』知りました 〗



あの時。貴方は『どうやって正気に戻った』か覚えていますか?

ハンドくんにそう聞かれ、セルヴァンは「まさか・・・『さくら』が?」と口にした。



〖 はい 〗



ハンドくんがそう言うと共に『あの日の映像』が脳裏に現れる。

それと同時に、自分自身の意識が『その場』に飛んだ。



正気を失い、際限なく怒気を放つ自分。

このままでは間もなく『憤死』するだろう。

そんな精神的に危うい自分の後ろにさくらが姿を現して、何時いつも甘える時のように「セルぅ」と言いながら抱き締めた。

さくらはそのまま姿を消したが、自分の怒気は瞬時に無くなり、正気に戻って倒れているボルゴを冷ややかな目で見下ろしていた。





「俺は・・・・・・さくらに『救われた』のか・・・?」


〖 さくらは『夢をみただけ』だと思っています 〗



今いる自分は、すべて『さくらのおかげ』だった。

あの時、さくらが現れなかったら『今の自分』はいない。


そして今。

『妻たちの魂』をも救おうとしてくれている。



さくらには感謝してもしきれない。




〖 さくらは『感謝して欲しい』からやっているのではありませんよ 〗



そうだ。

さくらは『無意識』に手を差し伸べる。

そこに『打算』はない。

もちろん『見返り』を求めない。

純粋に『優しいココロ』で動いているのだ。


あの時・・・『天罰騒動』で『さくらの魔石』を20個も無償提供してくれた。

おかげで枯渇していた『乙女の魔石』の代わりに使うことが出来た上、詳しい『指示』もすることが出来た。

そのため『最小限の被害』で済んだのだ。

そのお礼に向かった『貴賓室さくらの部屋』で『眠っていた』さくら。

彼女は目を覚ますと、真っ先に『みんなが無事だったか』を心配してくれた。

その後も何度か『魔石は足りてる?』と心配してくれていた。

ジタンの話だと、『さくらに指示されたハンドくんたちが『こっそり』、保管庫の魔石を追加してくれている』らしい。

そのため『魔石を買い取る』ことを失念していたそうだ。




そんな『優しさ』を・・・彼女たちの『ココロ』にも刻んでほしい。



自分のように『凍った心』を『優しい気持ち』で癒せるように。





セルヴァンの頬を涙が走る。

涙は止まらず、セルヴァンは立て膝をついて座り込み、左手で頭を押さえる。




セルヴァンはこの『自分以外誰もいない空間』で、子供のように大きな声をあげて泣き続けた。









身体を揺すられて、さくらは目を開ける。

窓の外はすでに陽が傾いていた。



「・・・寝ちゃってた?」


〖 はい。色々とお疲れのようですね 〗



ハンドくんにはバレているみたいだ。

上半身を起こして「ん〜っ」と伸びをする。

ハンドくんがブラシで寝ぐせを直してくれる。

ひどい寝ぐせの時は『時間魔法』で直すハンドくんだけど、簡単に直せる寝ぐせはいつもブラシでかしてくれる。

ハンドくんと私の『スキンシップの一つ』だからだ。




「・・・ねぇ。ハンドくん」


〖 いいですよ 〗


「・・・・・・いきなり『説明』吹っ飛ばし?」


〖 自分たちの間に『言葉』は必要ですか? 〗


「・・・いらないね」


〖 はい。いりません 〗




そして〖 セルヴァンには直接『説明』して許可も頂きました 〗と教えてくれた。



「いつのに!」


〖 さくらが寝ているあいだに 〗




さくらは驚くが、すぐに「さっすがー!私のハンドくん!」と手を叩いて喜ぶ。

〖 当たり前です。自分はさくらの『世話係』で『相棒』ですから 〗とハンドくんは寝ぐせの直ったさくらの頭を撫でながら答えた。





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