第150話
ドリトスとセルヴァンは2人ともさくらの召喚された日に此処にいた。
もし『召喚部屋に人が配置されていない』ことに気付いていれば・・・
あの時の
その事を何度も後悔していたのだ。
ジタンも父王たちが瘴気にあてられて変わっていることに気付いていた。
しかし『自ら動く』ことを怠った。
召喚部屋に人が配置されないのなら、自分が召喚部屋で『
そんな簡単なことすら気付かなかった自分も、父たちと同じように『瘴気にあてられていた』のだろう。
今も思う。
『父の罪は自らの罪』なのだと。
そして先日の『ボルゴ事件』でドリトス様がセルヴァン様に仰った言葉。
「『罰』を受けないのもまた『罰』じゃ」
その言葉はジタンにも深く突き刺さった。
そしてジタンはヨルクと共にさくらの世界の本を読み、『光合成』という言葉に気付いた。
そして『教科書』で詳しく勉強をした。
さらに先代の聖なる乙女が生きていた『沖縄戦』の本や写真集をはじめ、『当時の本』をハンドくんに贈られて次々と読み続けた。
執務補佐官も数冊読んで目を充血させていた。
先代の乙女に対して行っていた無礼を後悔したが、謝罪はもう届かない。
『後悔先に立たず』
さくらの本で知った『ことわざ』だ。
それを『身を持って知った』のだ。
そして二度と『同じ過ち』を繰り返さないと歴代の『聖なる乙女』たちの墓前で誓った。
そして『計画を実行』させたのだった。
一階までひと通り見て回ったさくらたちは、『元・応接室』にいた。
この部屋に置かれていた堅苦しい『応接セット』は一掃され、ソファーやカウチ、ローテーブルなどカジュアルな姿に一変していた。
「あー!『ハンモック』まであるー!」
従来の吊り下げ式や自立式、そしてハンモックチェアも設置されていた。
さくらは吊り下げ式のハンモックに駆け寄る。
すぐにハンドくんたちがハンモックを動かないように支えてくれて、さくらは「わーい!」と喜びながらハンモックの中にコロンと寝転がる。
ハンモックの軽い揺れがさくらの眠気を誘うが『お昼ごはんは寝転がったままでは食べられませんよ』と言われて慌てて起き上がる。
身体を起こしたものの、まだ自分で揺れて楽しんでいるさくらを、セルヴァンが苦笑しながら迎えに行き抱え上げる。
「ゴハン食ったら『外』に行こうぜ」
「さくらは暖かくしないと風邪を引くから気をつけなきゃね」
「気を付けるよな〜。『
セルヴァンの横のイスにおろされたさくらに、ヒナリとヨルクが声をかける。
ヨルクの言葉に、また慌ててイヤイヤとクビを左右に振るさくら。
そんなさくらの頭をセルヴァンは撫でる。
「大丈夫だ。さくらが風邪を引いたら『
「なんでオレたちが!」
セルヴァンの言葉にヨルクとヒナリが慌てる。
「さくらはお主たちにとって何じゃ?」
「「雛!」」
いつものドリトスの質問に、2人はいつも通りに声を揃えて答える。
その『やりとり』にようやくジタンはセルヴァンの『言葉の意味』に気がついた。
「ああ。さくら様はお二方の『雛』ですから・・・『風邪を引かせたら親の責任』ということなんですね」
ジタンの言葉にヨルクとヒナリが「「あっ!」」と顔を見合わせる。
「そういう事じゃ」と笑うドリトスは隣に座るさくらに「『身体を暖める魔法』は何か使えるかね?」と尋ねる。
「んー。・・・ハンドくん。何か『心当たり』ある?」
『『カイロ』をイメージしてみたら如何でしょう?』
「カイロかー。あれは『鉄が酸化する熱』を使ってるんだよね」
『それでしたら『地魔法』ですね』
「『鉄を含んだ石』を
『昔のカイロで『
「それもやっぱり『地魔法』だね」
さくらとハンドくんは次から次にアイデアを出していく。
そのやり取りにジタンは目を丸くしていた。
さくらとハンドくんは『構造』や『仕組み』も知っている。
それを『土台』として次々と『最適な魔法』を選んでいくのだ。
「ねえ『湯たんぽ』のポケット版って作れないかな?」
『たしかありますよ』
『ですが湯たんぽでは『低温やけど』をしてしまいますよ』
『それに小さい分、冷めやすくなります』
「ペットボトルの小さいやつにお湯を入れて、冷めてきたら『火魔法』で
お湯だから『火魔法』と『水魔法』のコンビネーションかなー?
『温度』だから『空気魔法』かな?
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