第五章

第97話



ヒナリが部屋に戻ると、ドリトスに『膝だっこ』されているさくらが姿を現している神々相手に怒っていた。


「何があったの?」


ヨルクに清浄クリーン魔法を掛けてもらいながら小声で尋ねる。


「さくらが『何か』をしたいと言っているらしいんだけど・・・。『この世界』の物じゃないから此処では使えないって止められてて」


さくらは神々と『思念で会話』をしてるためヨルクたちは神々の言葉でしか判断出来ない。





『この世界で何してもいい』って言ったクセにー!


テレビ観た〜い!

ドラマ観た〜い!

アニメ観た〜い!

映画を観た〜い!

ゲームした〜い!


「ですから。テレビもゲームも此処では出来ないと言ってるでしょ」


やーだー!

やーだー!


「ワガママ言ってもダメだって」


「『出来ないのは出来ない』って言ってるだろ?」


・・・ハンドくん。ジタンは何してる?


『執務室にひとりでいますよ』


「何をするつもりだ?」


創造神の言葉にさくらはニッコリ。


ハンドくん。『ジタンにハリセン』!


「コラコラ。『八つ当たり』は止めなさい」


八つ当たりじゃないもーん。


『まだ『さくらの魔石』を交換していない『バツ』です』


「まだ『換金』していないのか・・・」


そっぽを向いたさくらの代わりに説明をするハンドくんに苦笑するしかない創造神たちだった。


・・・さて。ジタンは何発のハリセンを受けたのだろうか。

何故ハリセン攻撃を受けるのか気付いていないジタンは、『さくらの魔石』を買い取るまでハンドくんたちから攻撃を受け続けるのだろうか。




ねぇハンドくん。此処でもタブレットが使えるんだよね〜?


『使えますよ』


「さくら。ダメって言ってるでしょ。『部屋マンション』に戻らないと・・・」


「さくら?何処へ『戻る』と言うの?」


女神の言葉にヒナリが慌ててさくらの前に出る。

ヒナリに気付いたさくらはふくれっ面から笑顔になる。



『あ!ヒナリ。おかえり〜』


「『おかえり』じゃなくて・・・」


『・・・じゃあ『行ってらっしゃい』?』


小首を傾げたさくらは脱力しているヒナリを不思議そうに見ている。

そんなさくらの頭にドリトスがポンッと手を乗せた。


「話がよく分からないから説明してくれるかね?」


「私がお話します」


女神の一人がさくらに代わって説明をしてくれた。


身体をほとんど動かせないさくらが『ヒマだから遊びたい』と神々に訴えているが、それには『さくらの世界の道具』が必要。

そして、それを使うには『マンション』以外ではダメらしい。


「それは此処では使えないってことですか?」


さくらの手を握りしめているヒナリの言葉に創造神が首を横に振る。


「そうではない。『この世界の物ではない』からだ。さくらの世界では『当たり前』の物でもこの世界では『存在しない』。悪用・転用されても困る」


・・・そんな『技術』もノウハウもないクセに〜。


さくらの言葉ツッコミに苦笑する創造神たち。


「ねぇ、さくら。『テレビ』や『ゲーム機』の存在を『乙女たち』に知られたら此処に居座られる事になるのよ」


女神に「それでもいいの?」と言われたさくらは涙を浮かべて『イヤイヤ』と首を横に振る。

さくらにとって今いる乙女たちの存在は『むべき相手』でしかない。


「だったら『この部屋の中だけ』で使えばイイだろ。持ち出さなければ良いんだし」


「ハンドくんたちが結界を張っておるから乙女たちはこの部屋へは入られぬ」


ヨルクやドリトスの言葉にさくらの目が輝いて何度も頷く。


『もし誰かが持ち出そうとしてもハンドくんが気付いて止めてくれるよ〜。ね?ハンドくん♪』


さくらの言葉にハンドくんたちはハリセンを出して左右に揺らしたり素振りをし出す。


「・・・・・・分かった。『部屋のひとつ』とこの部屋を繋ごう」


ため息を吐いた創造神が折れると同時にハンドくんから『繋ぐ部屋の準備は出来ています』と連絡がきた。

「いつの間に・・・」と呆れる神々を他所よそに『やった〜!さっすがハンドくん!』と喜んでいるさくら。

さくらに誉められたハンドくんたちは一斉に『グッドサイン』を見せていた。




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