第98話




さくらはドリトスに膝だっこされた状態で、神々が部屋同士を繋ぎ終わるのを待っていた。

マンションの部屋はさくらの世界と繋がっている。

それは『空気』も同様だ。

さくらには問題がなくても。

ハンドくんたちに問題がなくても。

神々にも問題がなくても。

ドリトスたちには『毒素を含んだ空気』となるらしい。

ちょうど、この世界アリステイドの空気が『さくらにとって害があった』ように・・・



それを神々がドリトスたちも一緒に過ごせるようにしてくれるそうだ。

そうしたらその部屋マンションで私を回復させたい時も皆と一緒にいられるようになるんだって説明してくれた。



それを聞いて一番喜んでいたのはヨルクだった。

ヨルクは『閉鎖された空間』にさくらを連れ去られて二度と会えなくなるのを怖がっていたからだ。

ヨルクの気持ちを知っているドリトスは、ヒナリから「本当ほんっとーに『さくらバカ』なんだから」と呆れられるヨルクに苦笑するしかなかった。




『さくらは『おバカ』なの?』



『さくらバカ』という言葉に、さくらは『自分がみんなからバカと思われている』と思ってしまったようだ。

不安そうな目でドリトスを見る。

そんなさくらを抱きしめて頭を撫でながら「ヒナリはさくらをバカにした訳じゃない」と話す。

それに気付いたヒナリとヨルクも慌てて『さくらが大切だから誰より何より優先するんだ』と必死に説明する。

でもさくらには『言い逃れ』のようにしか聞こえず・・・

ドリトスの腕の中で目を閉じた。


ドリトスがさくらの背を軽く叩きだして眠ったことに気付いたヒナリとヨルク。

ハンドくんたちから『さくらを悲しませた罰』として『結界の中』に閉じ込められてハリセンを受けた。

2人は後ほど『さくらはおバカなの?』と聞かれたセルヴァンから、更に『ゲンコツ』を落とされるのだった。





『・・・・・・ヒナリ』


「なあに?」


『・・・・・・・・・セルヴァンは?』


帰ってくる?とさくらに聞かれてセルヴァンの『言伝ことづて』を思い出した。


「さくら。セルヴァン様は『怒気が落ち着くまで自室にいる』って仰ってたわ」


『セルヴァン。大丈夫?』


「ええ。大丈夫よ。怒気も弱くなったわ」


『もう怒らない?』


「部屋にいるからもう怒らないわ」


『良かった〜』


さくらは安心したように笑顔を見せる。

そんなさくらの頭をドリトスが撫でる。


「セルヴァンなら心配せんでも大丈夫じゃ」


『うん・・・でも『アッチの部屋』にいるの分かるかなぁ?』


「ハンドくんたちがいるから大丈夫よ」


ヒナリの言葉にハンドくんたちが『OKサイン』で『任せろ』と意思表示をし、さくらは楽しそうに笑う。

しかし、すぐに表情が暗くなった。


『ヒナリー。ヨルクが『また』いないよー』


「まったく・・・何処行ったのよ!」


『ジタンの部屋へやにいる』


「待ってて。すぐに連れてくるから」


必要ひつようない』


ハンドくんがハリセンを取り出した。

叩きに行くのかもう行ったのか。

誰も怖くて聞けなかった・・・のだが、怖くない人物が1人。


『もう叩いた?』


2人ふたりとも。何度なんどでも』


『そんなに『何度でも』叩いてるの?』


『『いつも何度でも』。まるで『おわらい』のように』


ハンドくんの言葉にさくらは笑い出す。

ハンドくんが言った『何度でも』『いつも何度でも』が『曲のタイトル』だと気付いたからだ。


『元気になったら歌っていい?』


『もちろん『元気になったら』ですよ』


『ウン!』


笑顔でハンドくんと会話するさくらの頭を撫でながらヒナリは思う。

ハンドくんはさくらを笑顔にするのが上手い、と。



『さくら。ヨルクにはなしいたジタンが『おかね用意よういしたいがいくつ換金かんきんしてもらえるか』いています』


『無理のない範囲で』


『それではまず10りましょう。様子ようすくにつぶれなかったらまた追加ついかりつけていきましょう』


『はーい』


ハンドくんが多少物騒なことを言っていたが、さくらは気付いていないのかハンドくんに丸投げしているのかハンドくんを全面的に信用しているのか・・・


ヒナリは普段とは違うハンドくんに少し怖くなった。

しかしさくらの性格を知っているドリトスには『元気な頃のさくらが2人』いるようで見ていて面白かった。



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