第84話
2人はこの『
それまで使っていた室内に置いていた私物などは、ハンドくんたちが新しい部屋へ移動させてくれた。
実はヒナリとヨルクにも同じ階の部屋が別々に与えられている。
・・・これで最上階には『空いている部屋』がなくなった。
ハンドくんたちが部屋や廊下の掃除などを一手に引き受けると申し出てくれたため、好意を受けることにしてある。
これがハンドくんたちの『経験値』になるため、任せることにしたのだ。
更に『屋上庭園』の世話はハンドくんたちがするが、ヒナリやヨルクも手伝うらしい。
「さくらの『好きな場所』を守るため」らしいが、翼族は基本的に自然が好きだ。
この屋上庭園を2人も気に入っているのだろう。
それによって、王城に務める者たちが上がる必要がほとんどなくなった。
ハンドくんたちは最上階全体に結界を張れることになった。
そうすれば、今朝は未遂で済んだが『聖なる乙女たち』によるさくらへの『
侵入者からもさくらを守ることが出来る。
ジタンを招く以外は結界を張りっぱなしに出来るのだ。
・・・ジタンの来訪をよく思っていないハンドくんたちがジタンの来訪をスルーする可能性もあるが。
そして2人は知る由もなかったが・・・
神々が4人に存在を隠す必要がなくなったため、以前同様リビングに居座るようになるのだった。
ただしジタンの前では今まで通り姿を見せないが。
逆にさくらが1階の温室へ行く時は、ハンドくんたちが廊下に『人払い』の魔法を使い、温室自体には結界と『覗き防止』の魔法が張られることになった。
「ヤッ・・・アッ!ヤァァァァー!」
突然さくらが何かに怯えるように悲鳴を上げたあと上体を逸らして『けいれん』を起こし出した。
「何があったんじゃ!」
周囲を見回すが、部屋の中にいたハンドくんたちがいない。
するとドンッと物凄い音が部屋の外から何度も聞こえてきた。
さくらを守るように抱きしめるセルヴァンと2人を庇うように覆い被さるドリトス。
「早くさくらを連れて寝室へ!」
突然現れた女神に驚きを隠せない2人。
しかし再度女神に促されて、さくらを連れて寝室へ入った。
扉を閉じると、室外の音と振動が遮断されて『結界が張られた』ことに気付く。
ハンドくんたちが張る時は結界が白く光るが、今は何も変わったことが起きなかった。
これは『神々の結界』なのだろうか。
実は中からは分からないが、寝室の外では金色に光っていたのだ。
『部屋の中』から分からないようにしているのは、さくらに『外で何か起きている』と気付かせないための配慮だ。
そのためハンドくんたちの結界も中にいると分からないのだった。
あれほど苦しそうにしていたさくらが、寝室に入ると呼吸はまだ荒れつつも怯える様子だけはなくなっていた。
ベッドに座ったセルヴァンの腕の中でさくらは再び眠っている。
「これは一体何が起きているのですか?」
セルヴァンが心配そうにさくらの額に手をあてている女神に聞くが女神は黙って首を横に振る。
なぜ『言えない』のだろうか。
「此処にいればさくらは守られますか?」
「ええ。それは大丈夫です」
女神の言葉にセルヴァンとドリトスは安堵の息を吐き出す。
「ひとつお尋ねしても宜しいでしょうか?」
ドリトスの言葉に「答えられる事でしたら」と女神が頷く。
「何故我らに神々の姿が見えるようになったのでしょうか」
ドリトスのこの質問は、今この場にいないヒナリたちも含めた4人が一番『知りたかった』ことだ。
でも女神が笑顔で教えてくれた理由は、あまりにも驚くものだが納得出来る事だった。
「貴方方は『さくらと共に生きる』ことを選ばれましたから」
そのため『さくらと同じ』ように神々の姿が見えるようになったらしい。
・・・『世話係』のハンドくんたちも神々の姿が見えるようだから、『世話役』の自分たちもハンドくんたちと『同じ立場』なのかも知れない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。