星流夜
鈴木田
第一話 私はケイナ
「タケ兄、そこのネジ取って。太いやつ」
私はカルクDX28が倒れないように抑えながら、タケ兄にネジを取ってくれるよう頼んだ。
ゲームをしていたタケ兄は、めんどくせぇーな、と言いながらもネジを手渡してくれる。
二歳年上のタケ兄は、いつも文句は言うが、私にとても優しい。
ちなみに『カルクDX28』とは、私が四年前から作っている万能人型ロボット、カルク・デラックスの二十八号機目だ。
このロボットは、掃除、洗濯、料理に始まり、水汲みや食料探し、お宝発掘、悪党の撃退まで、あらゆることをやってくれる完璧なロボットなのである。
カルクDXが完成すれば、この貧しい生活ともおさらばだ。
「タケ兄、そっちのドライバーも取って。プラスの方ね」
「お前はもっと効率的に作業ができないのか? そんなんじゃ、ロボットの完成は程遠いな」
文句を言いながら、タケ兄はドライバーを渡してくれた。
私は、ありがとう、と言って受け取る。
「それがそろそろ完成しそうなんだよね。昨日、東のゴミ山でヤンロボが故障して動かなくなってるの見つけちゃってさ。マサに運ぶの手伝ってもらって、パーツたくさん手に入れちゃった」
ヤンロボとは、昔の人間の生活圏をパトロールするセキュリティロボットである。
いつも「ヤンヤンヤン」と音を出しながら走っているので、『ヤンロボ』とみんなは呼んでいる。
人間の文明が滅んでからも、ヤンロボを含めて、自律移動するロボットはプログラムされた通りに動き続けている。しかし、それらのロボットを制御する方法を、今の人間は知らない。
だから、人間の生活を守っていたセキュリティロボットも、今や人間に脅威ある存在となっていた。
「まじか、すげーな。でも近づく時は気を付けろよな。殺されるぞ」
「分かってるよ。ちゃんと石を投げて動かないことを確認してから近づいたから大丈夫」
セキュリティロボットに近づいて敵だと認識されると、機関銃やらビームやらで撃ち殺されてしまう。確かにリスクは大きいが、ちゃんと動いていたロボットから取れる部品はとても貴重なのだ。
「しかもね、コジローから聞いたんだけど、西に大きなクレーターがあるでしょ。あの向こう側にもっと大きなゴミ山があるんだって。そこにいけばカルクDXに足りない部品が見つかるかもしれない」
「クレーターの向こうって、どれだけかかるんだよ。行くだけで日が暮れちまうぞ」
「でもそこまで行かないと部品が見つからないの。お願い、手伝って」
嘘だろ、とタケ兄は首を振るが、私のお願いをタケ兄が断ったことは今まで一度もない。
「明日の朝、コジローとマサを誘って出発、いいでしょ?」
私がそう言うと、タケ兄はしぶしぶながら、分かったと答えた。
## 続く
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