誕生日
近所のレストランからハガキが届いていた。
それには、こんなことが書いてあった。
『お誕生日おめでとうございます! 素敵なお食事・プレゼントを用意して、お待ちしております!』
ハガキを持っていくと、プレゼントをもらえたり、記念写真を撮ってもらったり、デザートが無料だったりするアレだ。
「そう言えば今日、誕生日だったっけ」
私は、あまりの忙しさに自分の誕生日すら忘れていた。
そもそも誕生日って何で祝うんだろうか。
ただ、生まれてきた日というだけで、そこまでおめでたいものなのか。
そんなちょっと哲学めいたことを考えて、ハガキをゴミ箱に投げた。
昔は誕生日というだけで、友達や家族が祝ってくれていたが、今は独り暮らしだし友達とも疎遠だ。
それに今さら誕生日でワーキャー騒げる年でもないし、別に……。
「………………」
しかし、そんな風に考えたら、少し寂しくなった。
自分がこの世界から忘れ去られてしまったような……。いや、自分ですら誕生日のことを忘れていたことを考えると、自分自身の存在すらそのうち薄まって消えてしまうのではないか、という不安というか、恐怖というものを背中に感じずにはいられなかった。
わずかに考えてから、私はゴミ箱のハガキを拾った。
こんなものでも、祝ってくれる人は大切かもしれない。
今日は、少し贅沢をしよう。
食後におっきなパフェを食べて、不自然な笑顔の写真を撮って、プレゼントをもらって少しはしゃごう。
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