第160話 魔法のハンカチ
「ブルーさん・・・大丈夫なの・・・?ブルーさん・・・」
青白い顔で目を閉じ眠るブルー。リーフはブルーの薄い唇に頬を近づけた。かすかに息がかかる。
青と黒が混ざった長い髪、冬の湖のような済んだブルーの瞳。
「ああ、良かった。生きてる・・・」ホッとするリーフ。
その声を聞いたのか、ブルーが目を開けた。
「リーフか・・・」
「ブルーさん!!」
ブルーは、リーフを見てとてもうれしそうに微笑み、手を伸ばしてリーフの頬を触った。
「あ・・・」氷のように冷たい手。「こんなの・・・ダメだよ・・・!」
リーフは慌ててブルーの手をさする。しかしどんなにさすってもその白く長い手が温まることはなかった。
「大丈夫だ、リーフ。」
「大丈夫なんかじゃないよ!!」
「リーフ、私はお前に会えただけでどんなに嬉しいか。もっとよく顔を見せてくれ・・・」
ブルーに顔を近づけたリーフは、ブルーの目があまりよく見えていないことに気付いてしまった。
「どうしてこんな・・・ブルーさん・・・!」
「バニイから聞いたと思うが・・・。」ブルーは目を閉じた。「ここにアリスが来た。」
「・・うん・・・」
「アリスは、自分こそが赤のドラゴンの欠片を集める者だと言った。最初は信じていなかったのだが、アリスは言ったのだ・・・。」
(私を信じるということが、リーフさんを自由にして差し上げるということですわよ)
「私は信じてしまった・・・いや、信じたかったのだ。・・・愛とはなんと愚かなことかな、リーフ。私はお前を散々辛い目に合わせてしまった。これ以上、悲しませたくないと・・・。
いや、違うな、私は、お前がほかの男の物にならなくていい方法があればそれにすがりたいと思ったのだ・・。」
「ブルーさん、ボクは・・・」
「アリスを抱いた後から、体がおかしくなった・・・なにかが・・・
ううう・・・はっ・・うう」ブルーの呼吸が荒くなる。
「大変・・・!バニイさん!バニイさん!」
ブルーはそのまま意識を失った。
ロザソッソは、王の部屋から出てきた後ずっと、ひどく落ち込むリーフに言った。
「もしかしてブルー王を救う方法があるかもしれないわ。」
リーフたちは、城の広間にいる。ブルー王には何人もの医師が手を尽くしているので、リーフにはなすすべもなかった。
「方法って?!」リーフがロザロッソの話に食いつく。
「ま、慌てなさんな。・・・アタシは旅の道中にアンタの話をいろいろ聞いたし、アンタのことを見てきたけどね、あんたにはどうやら”治癒”する能力があるわ。」
「治癒・・・」
「そう。アンタ、ジャックの傷や骨折がすぐに良くなったって言ったじゃない?・・・エッチした後とか、特に・・・。いくら彼が怪鳥だとしてもおかしいでしょ?エリー姫の時も、リーフから出てきた青い光が毒の粉を浄化したってアーサーが言ってたし。」
「アーサーさん・・。」
「やだ、いま落ち込むのはなしね!で、ですねぇ・・・。」
「ん?まさか?」話に参加していたロバートが身を乗り出す。
「ボクが看病したら・・」「リーフがエッチしたら・・・!」
このセリフはリーフとロバートから、ほぼ同時に繰り出された。
「・・・は~い、ロバートが正解。アリスって子がブルーに何をしたか分からないけど、それに対抗するにはリーフ、アンタしかいないと思うの。」
「でも・・・その・・・普通に看病するだけじゃダメかな・・・。」真っ赤になるリーフ。
(ついこの間、ジャックさんとしたばかりなのに・・・すぐに次・・・だなんて・・・)
「まあ、気持ちはわからんでもないけど。」ロザロッソは言った。「たぶんこの方法しかないし、何より時間がないの。ルナから百目の巨人のこと、聞いたでしょ?それよりはるかに恐ろしいものが生まれようとしている・・・。覚悟を決めないとね、リーフ。」
リーフはちらりとルナの方を見た。(殺された百人の巫女たち・・・)
ルナはテーブルに着かず、ただ、暖炉の側で座って話を聞いている。
「・・・わかった・・・。頑張ってみるよ・・・。この世界のためではあるけど、ただ、ブルーさんに絶対助かって欲しいから・・・。」
「じゃあ、今夜ね。」
そう言ったロザロッソも、複雑な気持ちだった。
リーフは夕方、バニイに説明した。
「まあ・・・リーフ様、よくぞご決心を・・・!」厳しい瞳に、流れる涙。
「こんなにお小さいのに、さぞお怖いでしょう・・・・。」
「あのね、バニイさん、実はボク・・・。もう、初めてじゃないんだ。」
詳しくは話せなかったが、バニイはリーフの表情で理解してくれた。
「・・・なんという、運命でしょうね・・。リーフ様が望んだことではなかったでしょうに・・・。お可哀想に・・・。
ああ・・・ですが、お許しくださいリーフ様・・・!わたくしは、あなた様にお辛い思いをさせてしまってでも、ブルー様を救っていただきたいのです・・・!
お小さいころから耐え忍び生きてこられたお方なのです。恐れ多いことですが、わたくしは息子のように思ってお育てし、見守ってまいりました・・・。リーフ様、リーフ様・・・!どうか・・・!」
リーフの手を取り、膝まづいて泣くバニイの肩を優しくなでて、そっと白いハンカチを差し出した。
可愛い、花の刺繍。
「これは・・・」
「魔法のハンカチだよ。すぐに笑顔になれるんだ。そう言ってバニイさんが僕にくれたよね・・・。」
「まだ持っていただいていたなんて・・・リーフ様・・・あなた様のことも、私は娘だと思い・・・・。」
バニイの言葉は涙で遮られてしまう。
「泣かないで、バニイさん。いいんだ、ボクだってブルーさんを助けたいから・・・。」
バニイの魔法のハンカチは、ちゃんと効果が出た様だった。
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