第60話 本気の牢屋
事態はたいへん深刻なのであった。
リーフが連れてこられたのは、薄暗い地下の牢屋。今までの監禁部屋(?)と違って、かなり本気の牢屋である。
頑丈な石の壁が四方を固めており、扉も二重の鉄格子。
ふかふかのベッドなどあるはずもなく、血の跡が残る石の台の周りには、見るだけで恐ろしい拷問器具がずらり。
「やってないことでも白状しそう・・・」
リーフは部屋の隅で震えあがった。
「これからどうなるんだろう・・・ボク・・・。」
男に戻れたのは超嬉しい。しかし、女の時のようにチヤホヤされなくなったということなのだ。
エッチなことでは散々な目にあってきたけど、守ってもらえたし衣食住不自由はなかった。
今はシャツ一枚だけ与えられて裸同然の格好だし、頼みの壺も持ってこれなかった。
まさに丸腰状態である。
「でも、やっぱり久々の男の姿は嬉しい!」リーフくんであった。
「にしても、どうして戻れたんだろう??う~ん、でもまあいいか。
蒼月の儀の前に男に戻れたんだからよかったんだよ・・・。本当にセーフだった!」
男の体になると一層、男とする、なんて考えられない。
「秘薬のせいとは言え、一瞬マーリン王子と・・・流されそうになったもんなぁ。
危ない危ない。」
本当に危ないのはこれからである。今度こそ本気で逃げ出さないと、どう見てもリーフは拷問されてしまうだろう。
歯医者さんで使うような先のとがった鉄の棒や、刃がギザギザのノコギリや、トゲトゲのハンマーまで、ありとあらゆる拷問道具が揃っている。
どんなに痛い目にあわされても、女の子のリーフを連れてくることはできないのに。
しかし窓もない拷問部屋には逃げ出せるような隙はなかった。
部屋の外には当然見張りもいる。
この時、リーフは知らなかったが、ララ王子が拷問役を引き連れて地下牢に向かっているところだった。
リーフが困り果てていると、「クルクル~」と聞き覚えのある鳴き声が。
「あ、クルクル!」
クルクルは何か引きずりながら鉄格子をくぐり抜けてきた。
あの紫の壺を器用にしっぽに巻き付けている。
クルクルはリーフの前にツボを差し出した。
そしてコンコンと顎で叩く。
「ああ、お菓子を焼いてほしいんだね。ていうか、クルクルはボクがリーフだってわかるの?」
クルクルはうなずくようなしぐさをする。
「ありがと~!嬉しいよクルクル!それにしてもよくこの地下牢までこられたねぇ。」
クルクルはクルッと回って、何か呪文を唱えるような声を出した。
すると、リーフの横のあたりの石の壁に、ドアが出現する。
「ええっ?!うそ、魔法?!」
そのドアは薄くてぼんやりしていて、すぐに消えてしまいそうだ。
クルクルはリーフをドアのほうに押した。
「急いでこのドアに入れって言ってるの?・・・よし、行こう!
今のこの状況より最悪ってことはないだろう!」
リーフは魔法のドアを開けた。
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