第59話 再び!!

夢を見たのは久しぶりな気がする。

こっちの世界に来ていつも疲れ果てたり気を失ったりして眠りについていたから。



リーフは大ちゃんで、高校の入学式。

桜が咲いて綺麗だな、後で写真を撮るのかな、とか思っている。


3年間着れるようにと親が買った新しい制服はブカブカで、なんだかモゾモゾする。

案内してくれる上級生はみんなすごく大人に見えた。


「きみ、可愛いね」

3年男子の先輩が話しかけてきた。

(ボク男なのに、可愛いはいやだなぁ)と思っていると、先輩に抱きしめられてキスをされた。

「えーーー?」驚く大ちゃん。

唇を離したその先輩の顔は、アーサーだった・・・・・。




「・・・・アーサーさん、ひさしぶりだなぁ・・・。」

朝日が柔らかくベッドに掛けられた薄絹を照らす中、リーフは目覚めた。


横には動物のままのクルクルが眠っている。

起きたばかりなのに、明日の夜の”蒼月の儀”ことを考えてしまって心が重い。


起き上がりうとすると、何か自分に違和感を感じた。

違和感じゃなくて、しっくり感かもしれない。体が・・・、胸のあたりが軽い。


「ん?」


すごく懐かしい感触・・・。


「ん?」


胸がない、股にある、これは・・・・!


「あーーっ!」


リーフは男に戻っていた!




「うっそ!やった!」


着ていた寝間着を脱いで素っ裸になり、色々確かめてみる。


「もどってる!もどってる!やったーーー!」


リーフが狂喜乱舞していると、寝ずの番をしていた女戦士たちが近寄ってきた。


「リーフ様、いかがなされた!」


「あ、あのねっ」ニッコリ笑うリーフ。しかし・・・


「ぎゃああああ!」

女戦士たちは悲鳴を上げた。それもそのはず、可愛いお姫様を守っていたつもりなのに、そこに座っていたのは裸の男の子だったのだから・・・!!



「なにやつだ!リーフ様はどこだ!」

女戦士たちが一斉に剣を構える。


「え?ええ?」

「まさかおまえ、リーフ様を・・・!」

「ええ?」

「我が国の王子が切望された姫だど知っての狼藉か!」


「えーーーっ?!」

混乱してまだ状況が分かっていないリーフ。


騒ぎを聞きつけてスカーレットと二人の王子が部屋に駆けつけてきた。

「リーフが襲われたとは、まことか?!」

「はい、王子様、リーフ様は消え、代わりにこの少年がベッドに・・・」

「いやいや、あの、ボクが・・・」


マーリン王子が裸のリーフに詰め寄る。

「言いなさい、リーフに何をした!どこにやったんだ!」


「だから・・・」


ここでハッとするリーフ。

今まで、いくら自分が男だと説明しても分かってもらえなかったじゃないか。

ということは、今ここで自分がリーフだと説明してもきっと分かってもらえないだろう。

じゃあまてよ、もういっそ女の子のボクはいないことにすれば、王子たちはあきらめてくれるんじゃないだろうか。


リーフにしてはなかなかいい線だったのだが、一石二鳥を狙った嘘が仇になる。

「ボクは夜、リーフさんと結ばれました。

そしてこっそり窓から彼女を逃がしました。

今はもう、すでに遠くに行ってしまっているはずです。

リーフのことはあきらめてください!」


今考えた嘘の割にけっこうスラッと言えたなぁ、とリーフが満足していると、二人の王子とスカーレットの顔色が変わった。


「いますぐこの者を地下牢に連れて行け・・・!」ララが低い声で兵士に言う。

「え・・」


「城の兵を集めてリーフ様をお探ししろ!」スカーレットが急ぎ出ていく。


リーフは強そうな兵士たちに取り押さえられた。

「待ってください!どうしてボクを牢屋に入れるんですか!」


「あたりまえだ!」マーリンが怒りを抑えられない様子で怒鳴った。

「王子の妻となる女を、蒼月の儀の前に犯したとなれば死刑に値する大罪ぞ!!」


「しっ、死刑・・・犯すって・・・」焦るリーフ。

引きずられるように地下に連れて行かれる。


「待ってください、ボクは・・・ボクは・・・・・!」

王子たちもスカーレットももはや男に戻ったリーフの味方ではない。

やばいことになったぞ、とやっと気付くリーフだった。

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