第53話 チョコケーキとフワフワ

スカーレットはリーフの腕をとって、王子から引き離した。


「ララ様、リーフ様はマーリン様とご結婚されるお方・・・。そのようなことは・・・!」

咎めるようなスカーレットの瞳がララに向けられる。


「私は恋をしてはいけないのかい?」

ストレートにララは言った。


「男の私か、女だった私かわからないが、心がリーフを求めているんだ。

27年間あらゆることを我慢してきたが、これだけは・・・この気持ちだけはどうしても我慢できそうにない。」


ララ王子の言葉は恋の歌のように響いた。


「しかし、ララ王子、マーリン王子もまた、リーフ様を命よりも大切に想われているのです・・・!」



(おいおいおい)

ちょっと心の中でツッコむリーフ。

(ボクの意思は関係ないのかよっ)


(だいたいさ

どいつもこいつもボクのことよく知りもしないで、好きだの言ったりキスしたり、***しようとしたり、ちょっとひどくありません?

中身は15歳の純情ボーイだっつーの!!てか今の姿だって、巨乳ってこと以外色気もないただの女の子じゃないかー)

と、これを口に出して言えないのがリーフのダメダメなところである。

しかし、そこはクラスの雑用係で鍛えてきた処世術、リーフは禁断の秘儀を繰り出した!



「シクシク・・・・。ボクのためにケンカしないでください・・・・。

ボク、どうしていいのか・・・。」


泣いたふりである。


すぐに顔を手で覆い隠したので涙が出なくても大丈夫。


これにはララ王子もスカーレットも大弱りだった。

泣いている(フリの)リーフを前にオロオロするばかり。


「も、申し訳ございません、リーフ様!どうぞ・・・どうか泣き止んでくださいませ・・・!」

どうしていいか分からず謝り続けるスカーレツト。

「すまない、リーフ。悲しまないでおくれ・・・。

ソフィア、リーフを部屋で休ませてやってくれないか・・」

王子も困り果てていた。


心であかんべーをしながら、まんまとその場を離れることに成功したリーフ。

一人になった部屋でため息をつく。

「ほ、ほんとうにこれからどうしよう・・・・・・」


「こんな時は」


リーフは紫のツボを取り出し、せっせとお菓子を作り始めた。


「ストレス解消だー!」

という名の現実逃避なのだが、ひたすらケーキの生地を混ぜる。

今回はチョコレートケーキ。


甘い匂いに誘われて、城中の兵士がリーフの部屋を見に集まって来る。

「あれっ、みんな来たの?!いいよ、おいでよ!

今日はい~っぱい焼いちゃうからみんな食べてねーー!」

リーフはヤケクソ気味にケーキを焼き続ける。


いつの間にかお酒を持参する兵士まで出てきて、ちょっとした宴会みたいになった。


このホシフルの国でよく飲まれているブランデーみたいなお酒は、チョコケーキ合うようだった。



リーフが何度目かのケーキをツボから取り出した時、リーフの手に何かがしがみついてきた。


小さくて茶色くてフワフワの、なにか。


「ん?」


リーフはその手の主と目が合った。

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