第43話 光のリボン

スカーレットは服に隠し持っていた短剣で自分の腕を刺している。


蛇の毒から何とか意識を保とうと必死だった。


「それを見たならわかったであろう・・・!リーフ様は妖精王の末裔、マーリン様の妻となられたお方だ!

その方の足に描かれた紋章は、マーリン様が恩自らの血で描かれた妖精の婚印!

泉の者に身を落としたおまえなどに触れられるはずはないのだ!」


「も、紋章・・・?」

リーフは自分の足太ももの裏を見た。そういえば何か紅い模様が描かれている。

「全然気が付かなかった・・・。」


蛇男は一瞬だじろいだが、すぐにニヤリと笑った。


「面白い・・・妖精の花嫁を地獄に落とすというのも悪くない。

どうせ未来永劫呪われた我が身、今更どのような天の裁きでも恐れまいぞ。」


蛇男はリーフの体を乱暴に引き寄せる。男のむき出しの下半身が触れて、リーフはゾッとした。


「やめろ!」

スカーレットが懸命にナイフを投げるが、男は目もくれず叩き落とした。

「大事な王の妻が汚されるのを黙って見ているがいい・・」


意識はあるが、ほとんど動けないスカーレットは美しい顔を歪めて歯ぎしりする。


リーフはせめて、スカーレットが見ているのだから、何が起きても情けない自分にならないぞ、と覚悟を決めた。

「ボクは大丈夫だから。スカーレットさん、もし逃げられる時があったら、一人で逃げるんだよ!」

リーフは目を閉じる。




その時、急に男が動かなくなった。


「くっ・・・なんだ?」


蛇男の右足の一部が金色に光っている。

それがリボンのように男の体全体を締め付けながら延びていく。


マーリンがかけた魔法だった。

同時に、リーフとスカーレットの体が自由になった。



「動ける!手足が動くよ、スカーレツトさん!」

「よしっ・・!これなら走れる!今のうちに行きましょう、リーフ様!」


二人は金のリボンに包まれてもだえる蛇男の横をすり抜け、とにかく走り出す。

「出口はこっちでいいのかなぁ!」

「わかりません!がとにかくここを離れませんと・・・!」

「でもこんな洞窟で迷ったら・・・」焦るリーフ。


その時、みどりのコケがまばゆく光り始めた。

まるで指し示す光の道のように。


「・・・!妖精の力です、リーフ様!この道を参りましょう!!」


二人はただグリーンの光の道を信じてひた走る。

大理石のような岩が消えて、灰色の普通の岩になったころ、


本当の光が差す出口が見えてきた。

森の木々と星空が出迎えてくれる。


「やった!出られたんだ!」

リーフは思わずスカーレットに抱き付いた。

よく見ると二人とも裸に近い格好だったが、ギュッと抱き合った。


「この小さなお体でこのわたくしを守ろうとしてくださった御恩、きっと忘れませぬ。リーフ様に命の限りお仕えします・・・!」

スカーレットは心から誓った。


そこに一羽の巨大な鳥が飛んできた。

見覚えのあるハゲワシだ。

「ジャックさん?!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る