第34話 吹き込む息
白い砂浜に倒れこんだマーリン王子。
顔色はひどく青く、死んだように動かない。
「王子、王子!」 スカーレットが心臓の音を確認する。 動いていない。
「・・・マーリン王子が・・・・」茫然とするスカーレット。
「急激に・・・強力な魔力を使ったために・・お体が持たなかったのか・・・」
「死んじゃったの?!」リーフものぞき込む。息をしてない。王子は銀髪の青白い人形のようだった。
「そうだ、人工呼吸、やってみる!」
リーフはつい最近、体育の授業で人形を使った人工呼吸の仕方を習ったのだ。まだ覚えている。
マーリン王子を、習った通りにまっすぐ砂浜に寝かた。首の後ろをあげ・・・「気道確保・・・だっけ」
細かいとこは覚えていないので怪しいが
「心臓の横のへこんだとこを押して・・・」思い切り両手を重ね、体重をかけて押す。
王子はなすがまま、体がぐにゃりと上下した。
「何をしてるんだ、おい、大丈夫なのか・・・!」スカーレットはリーフを止めていいのか悪いのか分からないまま、 オロオロしている。
次に・・・「人工呼吸・・・」
リーフは一瞬躊躇した。キスするってことになる・・・。
でもここで王子を助けないのは、男らしくない気がした。
王子の鼻を押さえて、唇を重ね、息を吹き込む。
王子の胸元が膨らむ。
王子の唇は冷たい。
胸を押さえる、息を吹き込む、何度も繰り返す。
リーフのほうが酸欠になりそうだった。
何度目か唇を重ねたとき、感触が変わった。
王子の手がリーフの頭に伸びて
そのままキスをした。
「~~~~ん~~~~?」
「王子!!」
マーリン王子が目を覚ます。助かったのだ!
リーフから唇を離すと、体を横にしてせき込む。
スカーレットは「よかった・・・ご無事で、ご無事で・・・」と涙を流した。
しかし王子の容態は決して安心できるものではなかった。
遅れて駆けつけてきたおじいちゃん医師は、王子の体がひどく衰弱していると判断した。
実際王子は歩くこともままならず、座るのがやっとの状態だ。
「この城では満足な治療ができません。薬草の園もありますので、中央の城にお連れしましょう。」
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