第35話 中央の城へ

中央の城とは。


ホシフルの国のほぼ中央にある、国の拠点となる城である。


ここ、みどりの村から、国で一番大きな川”ギンガ川”に沿ってさかのぼると、馬ならば三日ほどの距離。



一刻も早くとの医者の言葉を受けて、スカーレットは大急ぎで馬車の用意をする。


「マーリン王子が自分を助けるために、大きな魔力を使って倒れたのだとしたら・・・。」

なんとなく責任を感じてそばに寄り添うリーフ。王子もずっとリーフの手を握って離さない。


半時もたたないうちに出発の準備が整った。

「細かい荷物は、後続の者に任せる手筈を整えました。、我々はすぐに出発しましょう!」


スカーレットは、王子とともにリーフを馬車に乗せようとする。


「えっ?!ボクも行くの?!」

「当たり前だ!だれのせいで王子がこのようなお姿になったと思っている!」

痛い所をつかれるリーフ。まあ元はと言えば、マーリンたちがリーフを連れてきたせいなんだが・・・。


しかし、あまりこの村より遠い所に行くと、いよいよ現実の世界に帰れなくなる気がする。

とはいえ、馬車の中で動くのもままならない、ぐったりしている王子を見捨てるのも心苦しい・・・。



王子は迷っているリーフに言った。

「リーフ、お前がおとなしく着いてきてくれれば、私の邪魔をした老兵士は不問に処してやろう。

本来ならば反逆罪で死刑にも相当する罪だ・・・。」


「えっそんな・・・」


お菓子をくれたおじいちゃん。優しくしてくれて、リーフを助けようとしてくれた。

見捨てることなど出来ない。

マーリン王子はそんなリーフの性格を見抜いていた。



「・・・わかりました、行きます。行きますから、おじいちゃんに酷いことはしないで下さい。をこれまで通り兵士として雇ってあげてください」

「わかった」 王子は約束を破らないであろう。


リーフは自ら馬車に乗り込んだ。王子の対面に座ろうとしたが、王子は自分の横に抱き寄せる。

リーフの顔が王子の胸にひっついた。

「あったかいね・・・。こうしていると呼吸が楽なんだ。」


銀の髪、ヒスイ色の瞳の王子はそうしたまま、再び眠りについた。


「出発!」


スカーレットの凛々しい号令が響く。


リーフたちを乗せた馬車は、中央の城に向かって進み始めた・・・。

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