第29話 3人の男
この世界に来てたった二日だが、リーフは二晩とも、男の横で眠る羽目になった。
朝、騒がしい声で目が覚める。
「リーフはどこだ!ここにいるのは分かっている!」
「ん?」 どこかで聞いたような声が。
「アーサー王子、お待ちください!」 これはスカーレットの声か。
バタバタと足音が近づいてきたかと思うと、バンッ と勢いよく扉が開いた。
そこにはアーサー王子とジャックと、二人を止めようとするスカーレット&その他数人の兵士が立っていた。
「いかにアーサーさまといっても無礼でしょう!ここはマーリン王子のご寝所でございますよ!」
スカーレットの静止もむなしく二人はドカドカ入っていく。
部屋の中央、ちょこんと黒髪の女の子がベッドの上にすわっている。 「リーフ!」
「あれ、アーサーさんたちどうしてここに・・・?」
ベッドがら立ち上がったリーフは
服を着てなかった・・・・。
昨夜マーリン王子にTシャツを切り裂かれて、シーツにくるまれたままだけの状態で眠りこけていたので、寝ている間にすっかり取れたしまったのだ。
自分の姿に気づいてさっとシーツで体を隠すリーフ。
そして横には・・・マーリン王子がいる・・・。
ジャックとアーサーがリーフのそばに走り寄ってきた。
全裸で、傷だらけで、あざの跡が痛々しい小さいリーフを見てジャックは激怒した。
「おい、おまえ!リーフに何をした!」
すでに起きていたマーリン王子に掴みかかるジャック。
「王子に触るな!」
剣を抜くスカーレット。
「これはどういうことか、説明してもらいましょうか、マーリン王子」
意外に冷静なアーサーが言った。
マーリンは銀の髪をかき上げ、「では、あちらの部屋にてご説明申し上げましょう。私もお聞きしたいことがあります。」
リーフが着替えをしている間に、マーリン、スカーレット、アーサー、ジャックは別室で話をしていた。
マーリンは1000年前に王族にかけられた呪いから、酒場でリーフが氷ネズミのことをしゃべっていたのを、スカーレットが聞いたこと、
尋問のこと、そしてリーフのおかげで呪いが解けたようだ、ということを詳しく話した。
黙ってマーリン王子の話を聞いていたアーサーとジャック。
リーフが尋問されたあたりのくだりは怒りを抑えるのに少々忍耐が必要だったが・・・。
アーサーも、リーフとの出会いから宿屋でのことを簡単に説明した。
「私には・・あの娘が必要なのです。妻として迎えたい」
と言ったマーリンに掴みかかろうとするジャックを抑えながら、アーサーは考える。
アーサーはツルギの国の第2王子。
ツルギの国は、ここマーリンのホシフルの国のすぐ西側、同盟国である。
北のヒョウガの国をはじめ、南のグレンの国、超大国ツバサの国などの脅威に対抗するべく力を合わせている。
同盟国の行き来は自由で、互いの国での物資の援助を惜しまず、信頼関係が大きな基盤になっていた。
いまここはマーリン王子のホシフルの国。
アーサーが一人の女の子のために、争いを起こすわけにはいかないのだ。
悩むアーサー、本気のマーリン、激おこのジャック、にこりともしないスカーレット。
地獄の現場に、着替えが済んだリーフが、いい匂いとともにのんにトコトコ部屋に入ってきた。
「おなかがすいたからパンケーキ焼いたよ~」
皆が一斉に渦中の人を見た。
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