第2話 突然の家族

 いつものように帰宅する。

 俺は帰宅部なので帰る時間は早い。


 自宅に到着し玄関のカギ穴に鍵を差し込んだ瞬間に違和感があった。鍵がかかっていなかったのだ。俺はそろりとドアを開いた。玄関には見慣れぬ女物のローファーがあった。これは誰の靴だろう。不審に思い音をたてないように靴を脱ぐ。そして静かに廊下を歩きリビングを覗いてみる。そこには自分と同じ学園のブレザーを着ている見知らぬ女性がいた。彼女は勘が良いのか、俺にすぐ気づき声をかけてきた。


「やあ。緋色君だね。ボクは玲香れいか。今日からこの竹内家でお世話になる事になったんだ。よろしくね」

「よろしくお願いします」


 いきなり何でこうなったのだろうか。そう言えば、親父からは再婚するから覚悟しておけと言われた気がする。まだ、相手の家族と顔合わせもしてないし、いつ再婚するとか同居するとか、こんな美人の姉がいるとか、全然聞いてなかった。俺の親父……いい加減すぎる。


 俺は差し出された右手を握る。

 握手しただけで頬が熱くなるのを感じた。


「なに照れてんだよ。ボクは今日から君のお姉ちゃんになる。だから手を握るくらい平気だろ」


 彼女は腰に手を当てて胸を張る。

 あまり背は高くない。160センチ弱だろう。ショートカットの髪に大きい瞳が印象的だ。そして胸元は寂しい。


「あー。ボクの胸が寂しいって思った? 思ったよね?」

「いえ、そんなこと考えてません。小さいとか思ってません」

「嘘つくなよ。君の目がしっかりと語っているよ。胸がなくてガッカリだって」


 違う。そうじゃない。俺は無言で首をブルブルと横に振った。確かに、胸がないと思ったがそれは単に物理的なサイズを認識しただけで他意はない。貧乳はむしろ好物だから好ましいと思っていた。


「えへへ。じゃあさ。友達呼んでもイイかな。まだ、夕食まで時間あるしね」


 ニコニコしながらスマホを操作する玲香姉さんだ。彼女はちょっと会話してすぐに電話を切った。


「すぐ来るって。へへへ」


 ピンポーン


 チャイムが鳴った。

 もしかして外で待ってたのかってくらいの素早いタイミングだった。


 俺はすぐさま玄関へと向かいドアを開いた。そこには俺がよく知っている女性が三人立っていた。

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