第24話 癇癪

   戦国の武将は英雄 鉄格子 

        悔いるは殺人 人殺めれば

 

「あんたは赤ちゃんの時から癇癪もちで夜泣きがひどかったよ。神社で虫封じしてもらったんだから」私が怒り始めるとすぐにこの話をした。ひきつけを起こしたり、夜泣きがひどく癇の虫を出してもらっても治らなかったと言う。

 

年子で妹がいる。哺乳瓶を取り上げ、自分で飲んでいたとか。ひどい姉だ。

嫌な事があると、頭を柱にぶつけていた。怒りが過ぎるまで打ち続けていた。母は同じ事を何度も話す。


織田信長 豊臣秀吉 徳川家康。 ホトトギスを殺す、鳴かせてみる、待つ。

社会の歴史で学んだ。戦いの歴史。いい変えれば、誰が誰を殺したと実名で書いてある歴史の本。疑問に思った。人を殺した戦国武将は獄に入り罪を償ったのかと。現在英雄だ。


母は時代劇が好きで、水戸黄門や暴れん暴将軍を見ていた。松平健は最後に成敗と言って悪代官を殺す。ドラマでも、将軍が人殺しを命じる。武士以外は牢屋に入っているのに、不公平だと納得出来ない。クライマックスに酔いしれる母には質問出来なかった。

 

誰それの末裔だと自慢するが、私には人殺しの子孫としか映らない。聖書がもし人間の先祖の記録なら、アダムとエバの息子は人殺しだ。

カインが弟のアベルを殺した。人間みんな人殺しの子孫だ。殺意というDNAはみんなあると思う。人が人を裁けない理由は、自分にもその殺意が理解できるからだろう。


大人になっても癇癪は治らなかった。ワイシャツをハサミで切る。熱湯を相手にかける。灯油を部屋にまく。ふすまを外して相手の頭を殴る。自分の腕をカッターで切り、今度怒らせたらお前もこうなると脅した。

相手は私の怒りが収まるのを待つしかない。癇癪通り越して犯罪だ。幸いパトカーも消防車も、救急車も来なかったし、警察のお世話にもならなかった。紙一重だ。

 

親には、虫封じに神社に行くのではなく病院に行って欲しかった。

 

 


  

  

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