第23話 芸能人2

  興味ない 人やものが あるからと

       変な人だと レッテル貼られ


 忙しいとディナーショーの手伝いにも行く。

 歌手や俳優は従業員専用通路やエレベーターを使う。

 その日も裏でバタバタしていた。

「今日の歌手は誰?」後輩が聞く。

「あの、アンアンって気持ち悪く歌う女性歌手だって」

 さっき、聞いたばかりの情報をそのまま大きな声で伝えた。

 後輩が凍り付く。怖い顔をした青江三奈がすぐ後ろに立っていたからだ。

 壁に耳ありを思い知る。

 

 すれ違ったとき、気軽に挨拶してくれたパンチパーマのおじさんがいた。

 誰だったかしばらく思い出せない。

 見たことはある。北島三郎だった。

 また朝のバイキングの時、目が合う度に微笑んでくれるおじさんがいた。

 あまりに何度も微笑んでくれるので近所の知り合いかなと思っていた。

「そこの位置ずるい」

 先輩が私に待機場所を代わるように促す。

 あの人のファンだとアピールしてくる。菅原文太だ。


 レストラン閉店間際の厨房で、みんなじゃんけんをしていた。

 誰がルームサービスを届けるかというものらしい。

 中森明菜や小泉今日の時に行けた人は除かれる。

 私もじゃんけんに入るように言われた。

 めった会えないらしい。

 

 私はじゃんけんに加わる前にその有名人の名前を聞いた。

 

「あの、70代の役者さんですよね。私は興味ないのでいいです」

 一斉にみんなが声をあげた。

「違う!歌手だよ。矢沢永吉を知らないの」

 

 本当に知らなかった。

 ホテルの表舞台はミーハーでないと居心地が悪い。

 皆から変わっていると言われた。


 私はもぐら。早々に経理課に戻った。


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