青いハンカチを持った少年

@hiroma01

第1話青いハンカチを持った少年

学校でイジめられていたわたしはいつもこうやって誰も来ない神社で泣いていた。

何をやっても成果を出せずに周りからはバカにされていた。


「大丈夫?」


そんな時、一人の少年と出会った。

同じ歳くらいだろうか、でも自分が通っている小学校では見たことがない。


その少年は心配そうにポケットからハンカチを取り出した。

青いハンカチ。


ハンカチには刺繍で<坂上>と書かれてあった。

少年の苗字だろうか。


ハンカチを受け取ると少年は嬉しそうな表情をこちらに向けた。

人から優しい笑顔を向けられたのが久しぶりで大粒の涙がまた流れ落ちた。



少年は隣に座ってわたしの悩みを聞いてくれた。

泣きじゃくりながら全てを打ち明けた。


答えを出さない少年はただ笑顔で頷いてずっと話を聞いてくれていた。

それがすごく嬉しくて、前向きになれた。


ハンカチを洗って返すと言ったら少年は首を横にふる。


「それお父さんの形見なんだ」


辛い思いをしているのは自分だけじゃなかった。

この少年にもいろいろあるんだ。

なのにこんなにも強い。


わたしは彼のそんな強さが羨ましかった。




その日から少年は神社に来てくれるようになった。

おもしろい話をしてわたしを励ましてくれる。

いつの間にかわたしは彼が好きになっていた。


背中を押してくれて、真っ暗な道を明るく照らし出してくれる彼を。

それからは少しずつ強くなっていった。

嫌なことは嫌、やめてほしいことははっきりと言えるようになった。


―――学校でこんなことがあったんだよっ。


日課になっていた彼との密会。

でもそれはやはり終わりは来るもの。


ある日から少年は来なくなった。

ずっと待っても、時間を変えても来なかった。


何かあったのか心配だったがどこに住んでいるのか聞くのを忘れていた。

背中を押し続けてくれた彼の笑顔はずっと消えることはない。


決して後ろ向きにならない。

それくらいのことしか少年への恩返しは思いつかなかった。





それから時間が過ぎていった。


私はまたこうしてここに来てしまう。

私はまたこうしてここで泣いてしまう。


あの時誓ったはずの心が折れかけていた。


泣いて。

大声で泣いて。



「大丈夫?」


うずくまる私の前に現れた少年。

涙が止まり、眼を大きく開けて彼の方へ視線を向ける。


満面な笑みを浮かべた少年のその手には青いハンカチ。

見覚えのある刺繍の入ったハンカチ。


「君…これ…」



「おじいちゃんの形見、ってパパが言ってた」



受け取ったハンカチは間違えようのないものだった。


会社でうまくいかず、彼氏にもフラれた散々な日。

私はまたこのハンカチに救われた。

大声で泣き叫びながら少年にありがとうと言った。

心を込めて、<少年達>に負けない笑顔を向けて。


「ありがとう、坂上君!」

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