第15話 Boy's Side(1)
ぼくの下にサラがいる。ぼくらはともにベッドの上にいる。2人とも服を着てはいない。両手で顔を包むようにすると、サラは目を伏せて少しだけ身体をよじった。サラがこんなにかわいいのを、どうして今まで気づかなかったのだろう。不思議に思いながらまたキスをする。夢のような時間。長い時間。
右手でサラの左胸を軽く握った。ボリュームがあって柔らかい、というのは気取った書き方で、率直に書かせてもらえるなら、
おっぱいでけー、やわらけー。
となる。桃色に光る身体に触れられるたびにサラはせつなげに息を漏らし、それを見るぼくの興奮も高まっていく。頭が沸騰しそうだ。それでもあわててはいないはずだった。ここまではあのときもやったことだし、ここから先のことはあのときはよくわからなかったけど、今ではきちんとわかっているつもりだった。
「いくよ」
耳元でそう呟くと、サラは小さく頷いた。その潤んだ瞳がぼくから外れてドアのほうを見たので、どうして、と思った瞬間に、強い力で真横に突き飛ばされていた。ベッドから床にかなりの勢いで落ちてしまった。
母さんがものすごく怖い顔をして立っていた。ベッドに右足をかけているので、蹴飛ばされたんだな、とわかった。そして、自分が今カエルのようにひっくりかえってしまっているのもわかった。股間にはカエルにはないみっともないものがあって、それがみっともない状態になっていたので、あわてて隠そうとすると、母さんがわめきだした。とても高い声で早口なので、何を言っているのかさっぱりわからない。ただ、すごく怒っているのだけはよくわかる。机の上にあるものを手あたり次第投げつけてきた。英和辞典が背中に当たって死ぬほど痛い。最後にクッションを思い切りぼくの顔面にぶつけると、母さんは大きな足音を立てて部屋から出て行ってしまった。
うわー、しくったー。
それしか考えられなかった。父さんも母さんも夜まで帰らないはずだったのですっかり油断していた。最悪だ。こんなところを見られて、これからどうすればいいんだ。全身が興奮から覚めて急に冷えていくのを自覚しながら顔を上げると、サラがベッドの上に座ってぼくを見ながら優しく微笑んでいた。白いタオルケットで身体を覆い隠した姿は清純そうに見えて、邪魔されなければいやらしい行為に及んでいたとはとても思えなかった。
「ばれちゃったね」
心の底から楽しそうに笑った。ちっとも笑えないよ、と言いたかったけど、光り輝く彼女の笑顔をぼくの心無い言葉で曇らせるわけにもいかなかった。
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