ロシア人の皆さんへ贈る手紙(日本人より愛を込めて)

齋藤 龍彦

【ロシア人の皆さんへ贈る手紙(日本人より愛を込めて)】

 拝啓、ロシア連邦・ロシア人の皆さん、私は一日本国民です。

 さて、在日ロシア大使館の方々、この手紙は貴国の言語、ロシア語に翻訳し、貴国大統領プーチン氏を含む政府中枢に届けるべきです。なぜならば、ここには日本人のロシア連邦という国家とロシア人に対する本音が書かれているからです。



 まずあなた方ロシア人に提案しましょう。一刻も早く日ロ平和条約を結びましょう。簡単なことです。「国後、択捉、歯舞、色丹を日本に返還する」、これを実行するならば一ヶ月以内に平和条約を結ぶことも可能です。『返還』ということばに引っ掛かりがあるのなら『引き渡す』でもいいでしょう。当然ロシアの元を離れることになるのですからロシアの主権など残る理屈はありません。


「日ソ共同宣言には、歯舞・色丹を日本に引き渡すが引き渡した後の主権がどちらになるか書かれていないので解らない」などと貴国大統領『プーチン』氏が言い出すに至っては失笑しか湧きません。

「或る地面」を自分の意志で自分の国の手元から手放すのだから主権が自分のところに残っている道理がない。もし主権を自分の国に残し行使し続けたいのなら「引き渡さない」という方針を貫くしかない。あなた方ロシア人のトップはもはや、そんなことも解らなくなっているのですか?


 さて、ただ今12月です。12月8日はもう過ぎてしまいましたがロシア人の皆さん、この日がなんの日か解りますか? 日本が第2次大戦を始めた日です。1941年12月8日のことです。

 あなた方ロシア人は『第2次大戦』が大好きです。今やロシア人のアイデンティティーは『第2次大戦』にしかありません。


 『ラブロフ』氏、という男がロシア側の交渉責任者となったようですね。この男が実に傑作なことを言っていました。

 2007年、色丹島や歯舞群島に上陸した時でしたか、「戦勝国の行為は神聖で侵すことができない」と明言しました。

(https://www.sankei.com/column/news/181204/clm1812040002-n1.html

 産経新聞2018年12月4日付社説「日露「新協議」 期待よりも危惧抱かせる」参照)

 『戦勝国の行為は神聖で侵すことができない』、『神聖』だとか『侵すことはできない』だとか、もはやこれは宗教です。ロシア人のアイデンティティーは『第2次大戦』にしかないというのは決して暴言でもなんでもありません。


 ロシア人の皆さんが大好きで大好きでたまらない『第2次大戦』。それほどにまで『第2次大戦』が大好きなロシア人の皆さんのために日本人も『第2次大戦』のお話しに付き合ってあげましょう。


 まず、ロシア人の皆さんは勘違いをしています。中国人や韓国人が『第2次大戦』を持ち出すと中国人や韓国人の味方をする者が日本国内に湧いて出てきます。主にメディア、いわゆるマスコミです。

 故に中国人や韓国人の場合、日本人相手に『第2次大戦』を持ち出すと何らかの利得がある。近頃は韓国人の方は怪しくなってきましたが中国人の立場は不変です。


 しかしながらここからがあなた方ロシア人にとっての厳しい現実です。日本国内で『ロシア人に配慮しよう』などと考えるメディアは存在しません。解っていましたか? どういうわけか中国人や韓国人を優遇する日本のメディアは存在する。しかし彼らが優遇されているからといってロシア人も同じ待遇になれると思ってはいけません。中国人や韓国人が日本相手に『第2次大戦』を持ち出しなんらかの果実を得ていても、ロシア人の皆さんが真似することはお薦めできません。


 日本には『日本共産党』という政党があり、彼らもまた中国人や韓国人に非常に同情的で日本人を責め立てて(『南京大虐殺』『慰安婦』など)います。これを中国人や韓国人の方々から見たらどう見えるでしょうか? 想像してみて下さい。

 おそらくは『頼もしい。我々の利益になっている』と感じることでしょう。

 が、この政党が中国人や韓国人に同情的だからといって別にロシア人に同情したりすることはなく、もちろんその利益を代弁するような振る舞いもしません。それどころかロシア人の利益をさらに削るような主張をしています。


 あなた方が知っているかどうか解りませんが、日本共産党がロシアに対して主張している領土返還要求の中身は、『北方四島に加え全千島列島と南樺太を返還せよ』です。四つの島程度では済みません。


 ロシア人が『第2次大戦』を持ち出しても得られる利益は無い、それどころか却ってロシア人が憎悪の対象にすらなる、と指摘しておきましょう。あなた方は中国人や韓国人ではないと自覚しなければなりません。あなた方は日本人に何をしてきたか自覚しないといけません。


 だがこれほどにまで親切な忠告をしてあげても、それでもロシア人の皆さんの唯一のアイデンティティーが『第2次大戦』であることは変わりないでしょう。

 なにしろ我々日本人はあなた方に日常的にこんなことを言われている。

「国後、択捉、歯舞、色丹はロシア領だ! なぜならそれは第2次大戦の結果だからだ!」と。

 近頃ロシア人の方々はこうした意見を主張するだけでなく「日本人も共有しろ」と押しつけ始めました。(以下参照のこと)


(https://www.asahi.com/articles/DA3S13809256.html?ref=editorial_backnumber

>日ロ平和条約交渉について「日本が第2次大戦の結果を認めることが第一歩だ」というロシアのラブロフ外相の発言への——

朝日新聞2018年12月13日付社説「河野外相 質問無視はひどすぎる」)


(https://mainichi.jp/articles/20181213/ddm/005/070/060000c

>ロシアのラブロフ外相が「日本が第二次世界大戦の結果を認めなければ、一切議論できない」と発言したこと——

毎日新聞2018年12月13日付社説「河野外相の記者会見発言 「次の質問」という傲慢さ」)


 『語るに落ちる』とはこのことです。

 『日本が第2次大戦の結果を認めること』『日本が第二次世界大戦の結果を認めなければ』とはなんですか?

 『現状は認められてない』という意味のことばを自分の口から吐いてしまってどうするのでしょうか。

 私がロシア政府のお偉いさんならこの『ラブロフ』氏を交渉担当者から外します。

 これは俗なことばで『オラオラ系』の男で脅迫は得手だが、頭に血が上るとやらなくていい失態をするタイプです。


 しかしそこまで『ラブロフ』氏に言われてしまったからには仕方ありません。全てのロシア人の皆さんに対し、日本人から言っておかねばならないことがある。

 千島列島、及び南樺太にソ連軍が侵攻を始めたのは日本が降伏の意志を内外に示した昭和天皇の玉音放送のあった日、即ち1945年8月15日よりも後だ。

 千島列島最北端占守島には同年8月18日(終戦から3日後)、南樺太・真岡には同年8月20日(終戦から5日後)にソ連軍が攻撃を仕掛けてきました。


 あなた方ロシア人の〝模範解答〟も既にこちらは入手済みです。

 ロシア側は「日本が降伏文書に署名した9月2日が終戦日だからそれまで戦争は継続していた。だから8月15日以降の日本侵攻も第2次大戦である」と主張する。


 しかしそんな理屈がどこまで通るでしょうか。


 8月下旬にはアメリカ軍を中心とする連合軍が日本進駐を始めています。なのに『9月2日まで戦争をしていた!』というこの主張は無理筋と言うほかない。

 またこのロシアの主張が道義的にも反するのは言うまでもありません。私はあなた方全てのロシア人の人間性を問うているのです。

 『降伏の意思を示した人間に対しなお執拗に撃ち続け、犯し、殺すことのできる人間達がロシア人である』と自分達で外国人に向かい大声で叫んでいるのがあなた方ロシア人なのである。


 日本から奪った北方領土に固執するあまり『第2次大戦終結日9月2日説』に拘泥することで、ロシア人がロシア人自身のことを国際ネガティブキャンペーンしているのです。それに気がつかないのでしょうか。

 あなた方ロシア人は『ウクライナ人の奴らがロシア人のことを国際ネガティブキャンペーンしている!』と思っていそうですが、ロシア人自らが行うロシア人に対するネガティブキャンペーンには敵いません。コイツらは信用してはいけないと、そう他者に確信させるに充分です。あなた方はもしかして途方もないバカなのではないかと、そう思えてなりません。


 言っておきますが日本人を本気で怒らせると怖いですよ。

 日本人と言えばサムライです。サムライに例えて説明しましょう。

 サムライを攻撃し、ひとたび刀を抜かせるような真似をすれば五体満足で家には帰れません。勝ち負けなど度外視です。自分がやられても相手も無事では済まさないということです。

 さてロシア人の皆さんに明るい未来があるでしょうか?


『フン、日本人ごときに何ができる?』とあなた方ロシア人は鼻で笑ったかもしれません。


 だができることがあるんです。

 アメリカ政府とイギリス政府に見解を求めることができます。


 こう言うとあなた方ロシア人は『外国に助けを求めるとは。やはり日本人などたいしたことはない』と思ったことでしょう。

 しかし話しはあなた方ロシア人の大好きな『第2次大戦』の話しです。


 交渉担当者の『ラブロフ』氏という男が『戦勝国の行為は神聖で侵すことができない』と曰ったというのは先に指摘した通りですが、戦勝国とはソビエト連邦一カ国だけだったでしょうか?

 第2次大戦というのは日露戦争のように一国対一国の戦争ではありません。戦勝国は複数あり、その中の一つがソビエト連邦だったということです。

 ここが肝です。

 連合国であり戦勝国であるアメリカ政府やイギリス政府が『降伏の意思表示をした相手をなお執拗に撃ち続けその領土を自国領とするソビエト連邦の行為』を第2次大戦だと認めるでしょうか? 第2次大戦に含めてくれるでしょうか?


 そう、我々日本人はアメリカを始めとする当時の連合国諸国に問います。これが大事です。このことは首相官邸のサイト(自民党・安倍政権)に報せるべきと思い既にメールをしました。

「こうした一部の旧戦勝国(むろんロシア連邦のことです)の振る舞いがあなた方の歴史観に暗い影を落としてはいないか」とアメリカ人やイギリス人に問います。「ロシア人は『我々は連合国として戦争に勝利したから日本から領土を獲って良い』と主張している」、と。


 このように公に日本人が問い始めれば旧連合国諸国は「北方領土交渉は日ロ2カ国間の問題だ」という傍観者の姿勢をとり続けられないと考えます。

 最低限日本が降伏の意志を示した1945年8月15日以降のソビエト連邦による大規模な日本侵攻が第2次大戦に含まれるかどうか態度を明瞭に示すほかなくなるでしょう。

 アメリカ政府やイギリス政府に『1945年8月15日以降から始められた対日戦闘は第2次大戦とは関係無いソビエト連邦の私戦争である』という声明を出してもらうことは現在の米ロ、英ロ関係を鑑みれば案外難しいことではありません。


 アメリカ合衆国においては、議会・マスコミなどが『ロシア疑惑』などを煽りロシア人に敵対的な世論が定着しています。

 イギリスの方も亡命ロシア人をロシア政府が毒物を使い暗殺しようとしたという事件のため、やはりイギリス世論もロシア人に対し非常に敵対的です。

 まして『降伏の意思を示した相手をなお撃ち続けた行為も第2次大戦に含まれる』ということにされたら『連合国こそが正義である』という、アメリカ人やイギリス人の『正義の歴史観』が台無しになってしまいます。

 ロシアを切り捨てるだけでその『正義の歴史観』が守れるのならアメリカ人やイギリス人は確実にこの道を選択するでしょう。ロシア人の皆さんはどう考えますか?


 今までアメリカやイギリスが『ロシア人の主張する第2次大戦観』を問わなかったのは日本人がそれを訊かなかったからです。訊いて答えを引き出したらロシア人の皆さんは一気に奈落の底です。日本人がひとたび本気を出せばあなた方ロシア人の薄っぺらい『第2次大戦』を根拠とした北方領土占領の大儀などいっぺんに吹っ飛びます。ロシア人の皆さんは大好きでたまらない『第2次大戦』に裏切られるのです。


 しかし旧連合国はアメリカとイギリスだけではありません。では他の連合国はロシア人の皆さんの当てになるでしょうか?


 フランス政府には発言力はありません。ナチスドイツにあっさり負けてパリ陥落。パリ解放もアメリカ軍とイギリス軍のおかげで解放してもらったようなもので『レジスタンス神話』なるものでかろうじて面子を保っているような〝お情け戦勝国〟です。なんらの発言力も無いでしょう。何かを偉そうに語ればアメリカ人やイギリス人にバカにされるだけなので今さら第2次大戦のことなど語りたくもないでしょう。


 中華人民共和国の方はどうでしょうか? きっとロシア人の皆さんは非常に当てにしていることでしょう。だが中華人民共和国は連合国ではありません。連合国でないということは戦勝国でもありません。第2次大戦が終わったのが1945年で中華人民共和国建国が1949年なのだから当たり前です。確かに連合国の中に『中国』という国は存在しますが、その中国は『中華民国』という国で中華人民共和国とは別の国です。今現在台湾にその残党勢力が残存しています。


 つまりロシア人の皆さんが独自の第2次大戦観を振り回しても、かつて仲間であったはずの他の連合国はあなた方ロシア人の価値観に同調することはありません。


 例えばアメリカ合衆国は日本の小笠原諸島や沖縄群島を占領しましたが、それらを自国領に編入することなく日本に返還してます。いったん領土を奪ってしまったら新たな領土獲得のための〝古典的な意味での戦争〟となってしまい『連合国は正義だ』という価値観が崩壊するためです。『結局外国の土地を奪うのが目的だったのだ』と後世言われるようなことがあればもはや正義の戦争でもなんでもありません。


 今一度ダメ押しをしておきましょう。

 あなた方ロシア人の〝独自の歴史観〟に付き合うと第2次大戦も『連合国は降伏の意思を示した相手すら殺し続けた』『連合国が領土を奪うための戦争だった』ということにされかねませんから、アメリカ人やイギリス人は自国の正義を守るため、あなた方を見捨てるのは確実です。

 案外日本人が訊いたらこれ幸いとばかりに、ロシア人を窮地に追い込むため『1945年8月15日以降から始められた対日戦闘は第2次大戦とは関係無いソビエト連邦の私戦争である』と言い出すんじゃないでしょうか。ソビエト連邦が1945年8月15日以降にした行為は第2次大戦とは関係無い私戦だったことが旧戦勝国によって公認される未来は案外近いのかもしれません。いかにロシア人の皆さんが振り回す『第2次大戦ガー!』という史観がマヌケであるか、ということです。



 さらに執拗に『第2次大戦』の話しを続けましょう。なにしろロシア人の皆さんは第2次大戦が大好きですから。


 ロシア人の皆さんは「第2次大戦の結果」と言うが、結果の逆、即ち始まった時はどうだったでしょうか?


 第2次大戦が始まった時、ソビエト連邦は日本の交戦国ではありませんでした。これは歴史的事実です。ソビエト連邦は『日ソ中立条約』という条約を破ったのです。

 第2次大戦が始まった時、ソビエト連邦は日本の交戦国ではなかった。これは歴史的事実です。ソ連は『日ソ中立条約』という条約を破ったのである。果たしてそんな国と結ぶ条約に意味があるのでしょうか。

 もちろんロシア側から、条約を破った歴史的事実について悔恨の意志が示されたことは無い。

 ロシア人達に告ぐ。あなた方は条約を破って日本に戦争を仕掛けた。それを「第2次大戦の結果だ」と吹聴し続けるのならこちらも「条約破りのロシア」と声を大にして国際社会に言い続けることにします。

 目には目を歯には歯を第2次大戦には第2次大戦を。

 ロシア人の皆さんが『結果』を言い続けるのならこちらは『始まり』を言い続けます。

 どういう未来になるか予測できますか?

 長期的にロシア連邦という国、ロシア人という民族は、国際社会で永遠に浮上の目が無くなります。いったい誰が条約を破る国・条約を破る人間達となんらかの約束をしようとするでしょうか?

 『ロシア=条約破り』というイメージが定着してしまったらどうなるか?

 ロシア連邦という国家とロシア人という民族を信頼する国家も人間も世界からいなくなると断言できます。

 あまり第2次大戦を連呼するとそういう未来になると明言しておきましょう。



 次に移りましょう。

 実は北方領土を日本が取り返す方法があります。

 中華人民共和国がロシアから領土を取り返すその時に、日本も中華人民共和国と歩調を合わせる形で領土を取り返せばいいのです。


 ロシアと中国は国境を確定させたことになっています。

 しかし中国人達がこの約束をいつまで守るでしょうか? ロシアの皆さんは条約破りで札付きですが、中国人の方も『南シナ海は軍事基地にはしない』と言っておきながら軍事基地を造っています。

 つまり、中国人が約束を破る可能性は常にある。あなた方ロシア人は中国人を友邦国の国民と勘違いしてはいないだろうか?


 中国人達は今も『ロシア帝国は清国(今の中国の前の前の中国)から領土を奪った。将来必ず取り返さねばならない』と怪気炎を上げています。ネット上でその様子は観察できるはずです。『中国とは国境を確定させた』などというのは絵空事でしかありません。


 ロシアが弱った正にその時中華人民共和国と中国人はかつて失地した領土を奪い返しに来ます。『被害者意識を募らせた大国』がどれほど恐ろしいかあなた方ロシア人は自覚した方が良いでしょう。一般的な中国人の感覚では『被害者=中国人、加害者=ロシア人』なのです。


 ではロシアがいつ弱るか、ですが、既にあなた方の国ロシアは弱っています。回復の見込みもないでしょう。

 日本も人の事は言えませんがロシア連邦も人口が減り続けています。ただでさえ広大すぎるロシアでこのまま人口減少が続けば人口密度は致命的なレベルにまで到達します。特に不便でへんぴ極まりないロシア連邦東部はロシア人にとっても移住するのに気が進まない地域となっていて人口密度の希薄化に歯止めがかかっていません。そんなロシア東部の街々に中国人達が続々と移住し住み着いていることくらいあなた方ロシア人も承知しているでしょう。日本人だって知っているのですから。

 そう、中国人達が『かつてロシア人が清国から奪った土地』と信じている場所に中国人達が移住し続けているのです。

 そのロシア人人口の希薄化故にロシア連邦東部が中華人民共和国の手に落ちるのは時間の問題です。


 ただ、そうしてロシア東部を名実ともに自国領にしようとしても一国でやると汚名を一カ国で着ることになる。それはあなた方ロシア人の国、ロシア連邦のクリミア半島併合で証明されています。

 仲間といっしょにやれば非難を緩和できる、と中国人達が考えるのは当然の成り行きと言えるでしょう。その際仲間に誘うのはロシアとの領土問題を抱える日本です。案外渡りに舟になるんじゃないでしょうか。ひょっとして欧州からはフィンランドも名乗りを上げるかもしれません。

 その時欧米がロシアの味方になってくれるかどうか……きっと期待できないことでしょう。


 だから『今のうちに安倍(日本国首相)を騙して条約を結ぼう』、とあなた方ロシア人は考えるかもしれません。だがあなた方は『日ソ中立条約』という条約を破っています。ロシア正教も一神教ですが一神教の価値観には『同害同復』という価値観があります。やられたことと同じことをやり返して良いという価値観です。これは素晴らしい価値観だと思います。

 日本人はあなた方ロシア人に条約を破られたのだから、今度はあなた方に対し条約を破り返す権利があります。これが同害同復です。安倍晋三という男を騙してもロシアの将来は安定することは無いと言っておきましょう。


 日本と中華人民共和国、ひょっとして欧州からはフィンランドまでが名乗りを上げて協調してロシア連邦に奪われた領土を取り戻すとなると、さて、北方領土問題は『四島』だけで済むでしょうか?

 先に日本共産党が『四島だけでなく千島列島の最北端占守島までと南樺太も取り戻さねばならない』、と言っていることを紹介しました。こちらの主張の方が人気が出てしまう可能性もあります。


 あなた方ロシア人が日本人にやったことを活字にして見せてあげましょう。


 日本人との条約を破り、日本人が降伏の意思表示をした後も日本人を撃ち、日本人を犯し、さらには日本人を強制連行し、日本人に強制労働をさせた。日本人が降伏の意思を示した後にどれほど多くの日本人がロシア人によって殺害されたことか!


 日本人があなた方ロシア人に恨みを抱かないと思っているのですか? 今の日本政府だけを見て日本人を量ってもらっては困る。あなた方がどれだけ途方も無い憎しみを受けているか理解していないのですか? ロシア人の皆さんはいつから世間知らずのお坊ちゃんお嬢ちゃんになったのでしょうか?

 日本人に将来何らかの報復をされても仕方のない歴史をあなた方ロシア人は持っている。





 だがこの過酷な状況から逃れる手がないではない。

 その方法とは、『スターリンという名のグルジア人(近頃はジョージア人らしい)の独裁者がやったことでロシア人は悪くない』、と言えばいいのです。

 ただしそのためにはスターリンが日本から奪ったものをロシア人が継承しないことです。

 それこそが北方領土、北方四島、即ち国後、択捉、歯舞、色丹です。

 たった島四つでロシア人の皆さんは日本人に報復されない大義名分を得る。

 だというのに貴国の大統領『プーチン』氏と来たら「二島でどうだ。ただし主権がロシアか日本か解らない」などというセコいことを言い出し、二島すら返還しようとしていない。

 たった島四つと引き替えに歴史的な大罪から将来のロシア人を守れるというのに、現ロシア政府はロシア人の将来の運命を考えていない。ロシア人達の未来を考えていないのはいったいどの男でしょうか? 『プーチン』氏と『ラブロフ』氏という男は確実にロシア人の将来の運命を考えていません。


 中国人達が人種という概念を持ちだし民族感情を高めてきたらいよいよロシア人の皆さんは要注意です。しかもこうした場合中国人に同情する者の方が多くなってしまうという、ロシア人の皆さんにとって最悪の展開も考えられます。

 人種も民族も信じる宗教も何もかも違う中国人とロシア人。あなた達ロシア人はそれでも中国人を信用し続けますか?


 今ならたった四島日本に返還するだけでロシア人の皆さんはこの危機を脱することができます。全てスターリンという独裁者に責任があることにして彼の遺産を引き継がず放棄することです。まあ事実スターリンが8月15日を過ぎても戦争をし続けろと日本攻撃命令を出したのは明白ですからロシア人の皆さんはスターリンの遺産の相続放棄をすればいいだけなのです。北方領土をロシアが放棄しないということはスターリンの負債をもロシア人が相続するという意味になります。相続とはそういうことです。


 北方四島(国後、択捉、歯舞、色丹)をロシア人の皆さんが放棄しないというのはグルジア人の独裁者の罪をロシア人の皆さんが引き受けるという意味です。その覚悟があって北方四島を放棄しないつもりですか?

 将来もっとロシア領が削られる可能性を考えたら日本の世論が「四島でいいや」となっている今のうちに手を打つのが賢明です。この手紙は日本国首相官邸のサイトにも送っています。


 さあロシア人の皆さん、スターリンの財産を受け継ぐのは止めるのが正解です。それともグルジア人の独裁者のやらかした罪を子々孫々までロシア人が受け継ぎますか?

 一刻も早く北方四島(国後、択捉、歯舞、色丹)を日本に返していただきたく思います。そうして日本と平和条約を結べば将来確実に起こるであろう中華人民共和国のロシア領獲得政策に対応しやすくなるでしょう。ロシア人の未来のために今何をすべきか解っていますか?



 最後に今現在北方領土に住むロシア人の皆さんの事も考えておきましょう。

 なにしろ日本人は優しいときはもの凄く優しいのでこれくらいのことは考えてあげるのです。


 日本には俗に『ヘイトスピーチ対策法』と呼ばれる法律があります。

 まずは以下を参照して下さい。



http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=428AC1000000068

>平成二十八年法律第六十八号

>本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律

>第二条 この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの



 正確な翻訳ができたのなら一目瞭然ですが、この法律は普通の日本人には法的保護を与えません。法的保護を与える対象者はあくまで『本邦外出身者』に限ります。つまりは外国人です。日本の政治家の皆さんは与党も野党も日本人より外国人にお優しい政治家ばかりでこの法律も常識的に考えて『法の下の平等』に反する違憲立法でしかないのですが日本の与党の政治家も野党の政治家も気にする様子がありません。

 つまり我々普通の日本人の中に『ロシア人は出ていけ!』『ロシア人はロシアに帰れ!』と言い出す者が出て、あなた達北方領土在住のロシア人の方々が同じように言い返したとしても悪者になるのは普通の日本人の側です。


 どうでしょうか? 北方四島が日本に返還されても当該四島に住むロシア人の皆さんが追い出される心配は無いと断言できます。


 そしてこれは些細なオマケかもしれませんがあなた方北方領土在住のロシア人の皆さんは『プーチン』氏を批判する自由を手にすることができます。むろん日本の首相を批判しても身柄はまったくもって大丈夫だと、これまた断言できます。

 北方四島に住むロシア人の皆さんはその島々が日本に返還されてもなんら心配する必要は無いと言っていいでしょう。


 もし北方四島が日本に帰ってきたら我々(と敢えて複数形で言っちゃいましょう)はきっとこう言うでしょう。

 北方四島在住のロシア人の皆さん、ようこそ日本へ! と。



                                 敬具

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