第21話

「グォォォォォ!!」




スライムドラゴンは再び咆哮する。


俺は剣を構えた。






「来るぞっ!」






「結界!」




俺が叫ぶとナージャは自分達の周りに結界を張った。




ゴォッ!!




スライムドラゴンはブレスを放つ。


ブレスが結界にぶつかると結界に少しヒビが入り、ミシミシと音がする。






「まずいっ!」




アルがいたらアイギスの盾でいとも簡単に防いでくれるだろう。しかし、あちらも手一杯みたいなので助けは得られない。




俺がやらなきゃ! ここでやらなきゃ勇者じゃねぇ!






「みんな、俺の後ろに!」




俺はセリィとナージャを俺の後ろに移動させる。






「ナージャ、3つ数えたら結界を解除してくれ。俺が何とかする」






「え? ……わかった!」






「行くぞ……1、2、3!」




ナージャは結界を解除する。


恐ろしいブレスが近づいてくる。




俺は剣を前に突き出し、叫ぶ。






「ブリューナク!!」




俺がスキルを発動すると剣から真っ直ぐ稲妻が生まれ、ブレスを吹き飛ばし、スライムドラゴンに当たる。






「ギャォォォォ!!」




スライムドラゴンは稲妻が当たると苦しそうに叫び、少し後ろに下がる。




当たったところには大きな火傷跡が出来ている。






「大丈夫か!? 二人とも」




よし、二人とも無事だ。






「さぁ、こっからだ!」




俺は剣を構え、スライムドラゴンに近づく。




スライムドラゴンは近づくなと言わんばかりに火球を放ってくる。




俺はそれを横に転がって避ける。






「付与魔法エンシェント:サンダー」




俺は剣に雷を纏わせる。


そして身体強化で懐に潜り込み、斬り上げる。






「グォッ!!」




しかし、スライムドラゴンは空を飛んでそれを避けた。






「「ヘルファイア!!」」




すると、セリィとナージャが上級の魔法を翼目掛けて発動する。




黒い炎はスライムドラゴンに当たると巨大な火柱を上げて燃え上がる。






「ギャォォ!!」




翼を片方燃やされてバランスを崩したスライムドラゴンは逆さまになって落ちてきた。






「今だっ!!」




セリィとナージャのおかげで大きな隙が出来た。


このチャンスを逃す訳には行かない!






「聖剣エクスカリバー・解放!!」




俺は聖剣エクスカリバーの力を解放する。




聖剣は強烈な光を帯び、一回り大きくなって大剣のような大きさになる。






「くらえ! 金剛断魔斬!!」




俺の剣はスライムドラゴンの両翼を切断する。






「ギャォォォォ!!」




スライムドラゴンは痛みに悶え苦しみ、暴れ回る。


俺は少し距離を取る。






「グルルル…………グォォォ!!」




スライムドラゴンは立ち上がり、咆哮する。




まだまだ元気だな……翼を切り落としたのになんてタフなんだ……!




そう考えているとスライムドラゴンの翼がどんどんと回復していき、すぐに元通りになった。






「……は?」




くそっ、俺の今出せる最大火力だぞ?


それを一瞬で回復されちゃしんどいなんてものじゃない。




こんな化け物どうやって倒せば……






「何で……レイン様の攻撃が効いてないの……」






「あんなの勝てる訳無いよぉ……」




後ろにいるセリィとナージャが涙目で狼狽えている。




くそっ、もうダメか……




いや、違うだろ。


何を弱気になっているんだ俺は!




俺は勇者だ。守らなくちゃいけないだろ!


セリィとナージャの2人を守れなくてこの世界を救える訳なんか無い。




俺は気持ちを奮い立たせて立ち上がり、剣を握る。






「来い、勇者は何度でも立ち上がるぞ!」




「おおおお!!」




俺は雄叫びをあげながらスライムドラゴンに突進した。








――オークジェネェラルサイド――






「何が起こるんだ……」




魔物の死体から魔力がオークジェネェラルに集まっていく。






「終わりだ、お前達。この姿になると理性が保てなくなる。どうなるかは我でもわからない」




この姿? やっぱりパワーアップするのか。


何とか止めないと!




俺達は止めるためにオークジェネェラルに近づくが、近くは魔力の渦が出来ていて近づけない。






「くそっ、気をつけろよ……」






「とりあえず距離をとろうか……」




俺達は何が起こるか分からないのでオークジェネェラルからある程度離れる。






「グググ……ウォォォォ!!」




オークジェネェラルは咆哮する。


すると、先程見た毒霧がオークジェネェラルを中心に発生する。




俺達は急いで更に離れる。




その霧が魔物の死体に触れるとジュゥ……と音を立てて溶けていく。






「何だあれ……さっきのと比にならねぇレベルの毒だぞ!」






「ああ、それに近づけないと戦えねぇぞ」






「グハハハ、我は瘴気の魔人。魔力を集めて魔物から上位の魔人へと進化したのだ!」




理性が無くなるんじゃ無かったのかよ。


めちゃめちゃ喋るやーん!




おっと、驚きのあまりエセ関西弁が……






「おい、どうするよ」






「1つ作戦がある。俺のアイギスの盾の形を変えて体に纏わせる」






「出来るのか?」






「多分な。じぁ行くぞ!」






「おう!」




俺はアイギスの盾を俺とフロウの体に纏わせる。






「うおおお!!」




俺達は意を決して瘴気の中に突っ込む。




大丈夫だ、ちゃんと守れてる!






「行くぞっ! 付与魔法エンチャント:ウインド!」






「闘気オーラ纏い!」




俺は風を、フロウは金色の闘気を武器に纏わせる。






「瘴気が効かんとは……はぁっ!」




オークジェネェラルは口から赤いビームを放ってくる。




だが、アイギスの盾を体に纏っているのでそのまま進む。




ドォン!




体に衝撃が走る。


しかし、ダメージは無い。






「エアリアルソード!!」






「黄金粉砕斬ゴールドクラッシュ!」




俺達は瘴気の魔人に斬りかかる。




俺の剣は瘴気の魔人の片腕を切り落とし、フロウの斧は瘴気の魔人の肩を吹き飛ばす。






「グォッ!? ぐぬぬ、オオオッ!!」




瘴気の魔人は一瞬膝をつくがすぐに立ち上がり、衝撃波を放ってくる。






「うおっ!?」






「おっと!」




俺達は衝撃波で吹き飛ばされる。






「我は、こんな所で負ける訳にはいかん! アンシェル様の名にかけてぇ!!」




瘴気の魔人は激昴する。


すると、体が更に変形していく。






「コノ命ヲカケテモお前達ヲ殺スゥ!!」




ドォン!!




瘴気の魔人から更に高濃度の毒霧が出てくる。




ジュゥ……




嘘だろ、迷宮の床が溶けていってるのか!?






「グガァァァァァ!!」




毒霧の中から現れたのは体中から腕が生えている異形の化け物だ。






「おいおい、完全なる化け物じゃねぇか!」






「俺は昔、本で読んだことがある。上位の魔物が全生命力を使って魔物をその体に取り込んだ魔物、瘴気の悪魔だ……」






「グガガガ!!」




瘴気の悪魔は腕を数本振るい、魔法を発動してくる。




パキィン!




アイギスの盾が解除された!?






「盾が! やべぇ!」




フロウも声を上げている。


これはまずい。瘴気に触れると防御力とか関係なく溶けてしまう!






「付与魔法エンチャント:ウインド・【風の衣】」




俺は風を体に纏わせて瘴気を吹き飛ばすことでとりあえず時間を稼ぐ。




しかし、この方法では無理がある。


しばらくすれば毒で倒れてしまうだろう。






「フロウ、大丈夫か!?」




しかし、返事はない。




よく見てみるとフロウは風の衣を纏いながら倒れている。




少し遅かったのだろうか。




まずい、早く治療しないと!






――スライムドラゴンサイド――




攻撃をしてもすぐに回復される。




俺の渾身の攻撃も何事も無かったかのように元通りにされた。




恐らく魔力が尽きれば回復は出来なくなるはずだが確信も持てないし、何よりそれまで耐えられる自信が無い。








――このままじゃいつか瘴気にやられる、なら――






――ドラゴン相手に耐久戦なんて無理だ、なら――






「「次で決める!!」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る