第11話

防御力を移動させるか、やってるんだけどな。


「防御力移動、対象変更:グランミノタウロスから僕以外の皆に!」


俺はグランミノタウロスの防御力を皆に限界まで移動させる。


「よし、行くぞっ!」



防御力を移動させたから攻撃が効くようになっているはず!



「焔剣ブレイズソード!!」


俺は火を纏った剣で脛を斬る。


「回転斬り!!」


フロウは斧を回転させて斬る。


「フレイムランス!」


セリィは火の槍を頭目がけて撃つ。


「アイスランス!」


ナージャは氷の槍を頭目掛けて撃つ。


俺達は一斉に攻撃をする。



ドガガガガン!!



「やったか!?」


「防御力を下げたからかなり効いてるはず!」



煙が晴れるとそこには無傷のグランミノタウロスがいた。



「何でだ……!」


「防御力を限界まで移動させたのに無傷だと!?」



アテナ様! ダメじゃないですか!



――他の奴らに移動させるからじゃよ。

良いか?

お主の守護神の申し子というスキルはな、防御力の限界が無くなるという能力もあるのじゃ。



というと……?



――グランミノタウロスの防御力が0になるまでお主が防御力を奪ったら良いのじゃ!



そんなことできるんですか!?



――お主は防御力の限界が無いでな。

じゃが、防御力を0にまでしてもダメージが通るようになるだけで体力の多さは変わらんから油断するなよ?



ダメージ通るだけで十分ですよ! やってみます!



「防御力移動、対象変更:グランミノタウロスから俺に!」



俺はスキルを発動し防御力を奪い続ける。


グランミノタウロスから防御力がとめどなく流れてくる。


どんどん流れてくるっ……!




しばらく攻撃を避けながら防御力を奪っていると防御力が流れてくる感覚が無くなった。


「終わった! ってことはあいつの防御力は0だ!」


「ゼロ!? なら叩けぇ!!」


俺達は攻撃に転じる。


ザシュッ!!


「よし、皮膚通るぞ!」


防御力を0まで下げたのでさっきまでかすり傷ぐらいしか付けられなかったが、肉まで辿り着くことが出来る。


俺達は今がチャンス、と攻撃を浴びせ続ける。



すると、


「ブモオオオオオオオオオオオオオオ!!」


グランミノタウロスは今まで以上に大きく咆哮する。

その咆哮は衝撃派を生み出し、俺達を部屋の端まで吹き飛ばす。



グランミノタウロスはさっきまで黒色だった皮膚を赤色に変化させている。

そして前足を地面に付けて、突進の準備をしている。


「まずい逃げっ……!」


ドォォォォン!!!!


グランミノタウロスは目に見えないほどの速さで部屋の中心から突進してくる。


他のみんなは離れていたので当たらなかったが、俺はグランミノタウロスの角をモロに受けてしまう。



「カハッ……」


グランミノタウロスの防御力を丸ごと自分に足していたのにも関わらず、かなりのダメージを受けてしまう。


通常の状態だったら今ごろあの角に串刺しになっていただろう。


「アル!!」


「アル! 全回復フルヒール!」


ナージャが俺に回復魔法をかける。

すると体の痛みが引いていく。


「ありがとう、ナージャ」


グランミノタウロスは再び立ち上がる。


「ブモオオオオオオオオオ!!」


「今度は何だ!」


グランミノタウロスが叫ぶと今度は周りに蒸気のようなものが現れる。


ドォン!


グランミノタウロスは床を蹴り、とてつもない速さで近づいてくる。


速すぎるっ!?


グランミノタウロスは俺のすぐ近くまで来て腕を振り上げる。


「また俺かよ!」


ドドドドドドドドドドドドドドドド!!


連打。


グランミノタウロスはその巨体に見合わない速さで俺を叩く。


一撃一撃が普通なら即死レベルの攻撃なのだ。防御力が高くても限界がくるだろう。



しかし、俺はスキル【ダメージブースト:防御】で攻撃を受ける度に防御力を上げる。そして俺は防御力に上限がないので防御力は上がり続ける。



「止めさせないといくらアルでも!」



「求めるは火炎。

荒ぶる太陽は空を染め、地を焼き、全ての生命を奪い取る。

今、破滅の炎よ、顕現せよ!

【終焉ノ炎】」


セリィが上級の火魔法を発動する。


するとグランミノタウロスの上に超巨大な火の塊が現れ、落ちる。


カッ! ドォォォォン!!


火の塊がグランミノタウロスに直撃すると刹那、視界が真っ赤に染まる。


「ブモオオオオ!!」


グランミノタウロスは苦しそうに叫ぶ。


皮膚は焼け焦げて肉が露出している。


そして俺への攻撃も止まった。


「よし今だっ!!」


フロウが闘気オーラを纏い、グランミノタウロスに突撃する。


「大切断!!」


フロウは斧を巨大化させ、肉が露出している所を狙う。



シュン!!


するとグランミノタウロスはその場から消えた。


「消えた!?」


「違う、後ろだ! フロウ危ない!」


ドガァン!


フロウは床に叩きつけられた。


グランミノタウロスは一瞬でフロウの後ろに移動したのだ。


「フロウ!」


「ガハッ……防御力移動してなかったら確実に死んでた……」


「全回復フルヒール!!」


ナージャはフロウに回復魔法をかける。



「後は任せとけ!」


グランミノタウロスは速くなった。それも目で追えないくらい。


だから!


「固定魔法展開【リフレクト】!!」


俺は鎧の魔石に手を当ててそう叫び、固定魔法を展開する。


この装備は昔国王に貰ったものでこのように叫ぶことで魔石の魔法を使うことが出来る。


そして俺の装備の魔法は衝撃を吸収し、それを倍にして放出すると言ったものだ。


「アイギスの盾を皆に!」


俺はアイギスの盾をドーム状に発動し、皆に被害が出ないようにする。


「衝撃派なら速さは関係ない!」


俺は身体強化でグランミノタウロスに近づく。


「行くぞ! ダメージ上乗せ、衝撃派!」


俺はダメージ上乗せで今までの戦いの分のダメージを衝撃派に上乗せする。


「ブモッ!?」


グランミノタウロスは危険を察知して距離を取ろうとするが、衝撃派はすぐにグランミノタウロスまで到達し、部屋の壁に叩きつける。



ドガァァァァァン!!



部屋の壁が大きく崩れる。


「やった……か……?」



ゴォォォ!!


煙の中からレーザーが放たれる。



「ぐぁっ!!」


俺は突然のレーザーをまともにくらってしまう。


そのレーザーを放ったのはもちろん


「あれでもダメなのかよ……」


グランミノタウロスである。


無傷という訳ではなく、背中から血が大量に出ているがそれでも尚、立ち上がり攻撃してくる。



「どんだけ化物なんだよ……」


もうダメかもしれない……

俺の最大火力だぞ?

それを受けてもまだ立ち上がるなんて……



――諦めるでない。



アテナ様……そんなこといったって無理ですよ。やれることはやりました。



――誰かを守るんじゃなかったのか? 仲間は後ろで震えているぞ。



守りたかったですよ。でも、もう良いです。どうせ無理です。



――全く……仕方ない、答えを教えてやろう。



答え? 何のですか。



――やつの倒し方じゃよ。



そんなのもうありませんよ。防御力もゼロにしたし、最大火力をぶっぱなしましたよ。



――守護神の申し子の能力の1つ[能力変更]を使うのじゃ。



能力変更?



――ああそうじゃ。それは自身のある能力値を別の能力値と変えることが出来るのじゃ。



ってことは、防御力を攻撃力に変えれば!



――そういうことじゃ。さぁ、仲間を守るんじゃぞ。



はい!



「皆、諦めちゃダメだ! まだ希望はある!」


「希望なんてあるか! お前の最大火力もダメだったんだぞ!」


「大丈夫、動きさえ止めてくれれば倒せる」


「ったく、やるしかねぇよな!」


「行くぞ!」


「「「おう!」」」


「私が魔法使って止めるからそれまで時間を稼いで!」


ナージャがそういうので俺とフロウはグランミノタウロスに近づき、ヒットアンドアウェイで攻撃をする。



「私が牽制するわ!」


セリィはそう言って詠唱を始める。


「求めるは雷。

怒れる神は雲を作り、愚かな者に裁きを下す。

今、神の裁きを愚かな者に与えん!

【神界ノ鉄槌】」


突如空中に雲が現れ、巨大な稲妻がグランミノタウロスを襲う。


グランミノタウロスがいくら速いとはいえ、光よりも速く動くことは出来ない。


「ブモオオオオオオオオオ!!」


グランミノタウロスは少し痺れたのか動きが鈍る。


「よし、行けるよ!」


ちょうどナージャが魔法の準備を終えた。


「【冥界ノ門】」


ナージャがそう叫ぶとグランミノタウロスの後ろに巨大な門が現れる。


すると門が開き、中から無数の手が出てきてグランミノタウロスにまとわりつく。


「行けるよ!」


「ありがとう! 行くぞ!」


俺は飛び上がる。


「能力変更:防御力を攻撃力に!」


俺は防御力を攻撃力に変更し、剣に炎を纏わせる。


「終わりだっ! 獄炎剣!」


「おおおおおおおおお!!」


ズバァン!!


グランミノタウロスは真っ二つになり傷口から大量の血を吹き出す。



「やった……やったぞ!!」



守護神の申し子侮ってたな。

こんな能力もなあるなんて。

ガチチートじゃねぇか。



こうして俺達は冒険者初日にしてSランクの魔物を倒すことが出来た。

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