第3話
「村までお送りしましょうか?」
執事さんが聞いてくる。
「どうしますか?セリーナ」
「お願いしようかしら」
俺達は村まで送ってもらった。
馬車の中でアテナ様に悪役令嬢の事を聞くために話しかける。
アテナ様? おられますか?
――なんじゃアルバートよ。
創造神様と話すことって出来ますか?
――創造神と? なぜじゃ?
転生する前にちょっと頼み事をされまして。それについて詳しく聞きたいんですよ。
――わかった。ちょっと待っておれ。
お、神様と話せるんだな。
少し待つと転生の時に聞いたあの神様の声が聞こえてくる。
――久しぶりですね、武山一さん。いや、もうアルバートですね。
お久しぶりです。お陰様で元気にやれてます。
――今日はどういった用ですか?
悪役令嬢を助けて欲しいと言われたのは良いんですけど、その肝心の悪役令嬢が誰か分からなくてですね。
――ああ、そう言えば言っていませんでしたね。セリーナ・エリアス、今あなたの目の前にいるその娘ですよ。
えぇ!? そんな雰囲気全然無いけど?
――そうなのですが王子と会った瞬間から変わってしまうのですよ、彼女は。
そうなんですか。それって王子と会わないようにすれば良いんですか?
――それは不可能でしょうね。彼女の運命なのですから。殺されるのも運命なのですがね。
運命って変えられるんですか?
――普通は無理ですね。
ですがあなたなら変えられるかもしれない。
本来は生まれてくるはず無かったのですから。
俺はどうしたら良いんでしょうか?
――あまり詳しいことは言えませんが今日すべき事位なら教えてあげましょう。
今日すべき事、ですか……
――村に着いたらまず森に入って2人の子供がいるからその子供とさらに森の奥へ行くのです。
2人の子供? まぁはい、わかりました。
俺は神様との会話を終える。
「アル、さっきからぼーっとしてどうしたの?」
「外の景色を眺めていたんですよ」
別に隠す必要も無いが、一応神様と話せることは隠しておこう。
「村まで行って何をするの?」
「そうですね……ちょっと森にでも入ってみましょうか」
「それって村に行く必要ある? 近くの森じゃダメなの?」
「もちろん村でも何かしようと思っていますが何があるか分からないんでね」
「ふーん」
「あ、セリーナ。職業って何なんですか? 神の啓示しましたよね?」
「私? あんまり言いたくないんだけど……」
「え? どうしてですか?」
「私、黒魔道士なの……」
「攻撃魔法が得意な魔法使いですよね? なぜ言いたくなかったんですか?」
「お父様もお母様も白魔道士でずっとそれに憧れてたから……」
「なるほど……でも黒魔道士も良いと思いますよ」
「ありがと。あ、そろそろ着くわね」
馬車は村に着いた。
「いってらっしゃいませ」
「執事さん、この村ってなんて言う村?」
「メルンです」
「わかった。ありがとう」
「アル、早く早く!」
セリーナは凄くはしゃいでる。
そんなにお出かけするのが嬉しいんだな。
「はーい」
――メルン――
俺達は村の門をくぐり、村の中へと入る。
この村は畑が沢山あるな。
すると道を歩いているおじさんに声をかけられる。
「どうした、子供だけで?」
「ちょっとお出かけにこの村に来てみました」
「そうかそうか。田舎だけどいいところだからゆっくりしていきな」
「そうします」
「さぁ、セリーナ行きましょ……って、どうしました?」
隣を見るとセリーナが縮こまっている。
「家族と使用人以外の人に会う機会あんまり無くて……」
ほうほう、セリーナは人見知りなのか。
ほんとにこんな子が悪役令嬢になんかなるのだろうか?
「大丈夫ですよ、僕が付いてます」
「ほんとに……?」
「本当ですよ。さ、行きましょう」
俺はセリーナの手を引いて村をぐるっと回った。
途中、美味しそうな果物を売ってる店があったのでお父様から貰ったお小遣いで買って食べた。
なんかデートみたいで楽しいな。
前世はそんなこと全く無かったな。自己中心的な性格だったし誰も寄り付かなかったな。
「とりあえずぐるっと回れましたね」
「うん! 楽しかった! みんな優しいし」
「怖くないでしょ?」
「うん! あ、そういえば森に行くんじゃなかったの?」
「そうですね。一通り村は回れましたし行きましょうか」
「うん!」
セリーナは元気だな。俺ちょっと疲れたよ。
俺達はすぐ近くにある森に入っていった。
「モンスターが出るかもしれないんで離れないで下さいね」
「モンスター!? モンスターが出るの?」
「大丈夫ですよ。僕が守りますから」
「ちゃんと守ってね?」
セリーナが上目遣いでそう言う。
美少女にこんな事言われたらおじさんはりきっちゃうぞぉ!
え? まだ子供だってか?
死んだのが35ぐらいだったからもう40越えてるよ。実年齢がな。
それからどんどんと森を進んで行った。
すると川があった。
「川か。お、水は結構綺麗だな」
手で少し掬って飲むとひんやりしていて美味しい。
「アル、誰かいるわ!」
「え?」
セリーナが指を指す方向を見てみると2人の子供がいた。
あれが神様が言ってた子供だな。
でもなんか様子がおかしいぞ。
二人とも焦ったような顔をしている。
「ちょっと見てきます」
「置いてかないで!」
様子がおかしいので急いで近くまで行くと魔物と交戦中だった。
相手はゴブリンが2匹か、助けに行かないとな。
「セリーナ、ここで待っていて下さい!」
セリーナが着いてきていたので少し離れたところで待っていてもらう。
俺は2人の子供の前に出る。
「大丈夫か!? 俺も戦うぞ!」
「本当か!? 助かる!」
「ありがとう!」
「グギャ!」
1匹のゴブリンが棍棒を振り回してこちらに向かってくる。
「俺が攻撃を受け止める! その隙に倒せ!」
「大丈夫なのか?」
「俺の職業はガーディアンだ!」
「わかった! なら任せる!」
「自動防御アブソリュートガード!」
「アイギスの盾!」
俺は2つのスキルを使う。
「グギャ!」
ゴブリンが俺に向かって棍棒を振り下ろす。
キィン!
光の壁が棍棒を容易く受け止める。
その隙に1人が斧でゴブリンを斬る。
「ギャ!」
そう短く叫び、ゴブリンは絶命した。
もう一体のゴブリンはそれを見て全速力で逃げていった。
「ふぅ、何とかなったな」
「ありがとう、助かったよ」
「君凄いね!」
「君達もなかなか強いな。あ、自己紹介しないとな。俺はアルバート・シュタインだ」
「俺はフロウだ。よろしくな!」
「私はナージャ。よろしくね!」
「おーい、セリーナ。もう大丈夫だよ」
俺がそう呼びかけるとセリーナは少し離れたところからやってくる。
「ど、どうも。セリーナ・エリアスです……」
「エリアスってあの貴族の!?」
「あのおっきい銅像がある家だよな!?」
やっぱりあの銅像有名ななんだ。
インパクト絶大だもんな。
「そ、そうよ」
セリーナが少し自慢げになる。顔も少しニヤついている。
「二人とも、良かったら俺達と友達になってくれないか?」
「もちろんだよ!」
「ああ!」
俺達は握手をした。
「ほら、セリーナも!」
「よろしくね! セリーナちゃん!」
「よろしくな! セリーナ!」
「よ、よろしく……」
初めての友達が出来た。セリーナも嬉しそうだ。良かった良かった。
「それで、2人は森に何しに来てたんだ?」
俺はフロウとナージャにそう聞く。
「森の奥に伝説の冒険者が隠居してるって噂があって会いに行こうと思ったんだ」
「伝説の冒険者?」
「ああ、なんでもドラゴンを1人で倒したとかいう人らしいぜ!」
「凄い人なんだね。俺も会いたくなったよ。一緒に行ってもいいか?」
「もちろんさ! 友達だろ?」
「私も行きたい!」
セリーナも行く気満々だ。
「じぁ伝説の冒険者を探すぞー!」
「「「おー!」」」
「じぁまずこのゴブリンの剥ぎ取りをしないとな」
フロウがそう言うと全員が固まる。
「え……」
「なんだよ怖いのか? 仕方ないな、俺がやってやるよ」
フロウはそう言ってゴブリンの小さな角をナイフで丁寧に切り取ってバッグに入れる。
「さ、行くか」
「お、おー……」
俺達は森の更に奥へと進んで行った。
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