第2話

「二人ともちょっと待ってね……」


「[不殺の呪い]」


黒い霧が俺と父の体を包む。


「これで力加減気にせず戦えるわよ」


これは母の魔法である。


この魔法がかかった人は相手を殺せなくなる。怪我はするが、死なない。死ぬほどのダメージを受けると気絶するのだ。


よく決闘に使われていると母から聞いたことがある。


「お、これで全力が出せるな」


お前、7歳の子供相手に本気出すのかよ。


そう思いながらも少し本気の父と戦うのが楽しみである。


いつもは手加減させてるからな。どっかの戦闘民族見たいになってしまう。


オラわくわくすっぞ!


閑話休題。


父の職業は剣士フェンサーである。

剣を使うのが得意で攻撃と素早さが高いが防御が低めといったものである。


完全に分が悪い。こちとら素早さが低いのだ。反応出来るかどうか。


――おい、アルバートよ。


おっと、どうしましたか、アテナ様。


――お主、自動防御アブソリュートガードを使えば良いではないか。


そんなのあるんですか?


――素早さが低いもののためのスキルじゃな。それを使えば素早さ関係なしに守れるぞ。 ま、妾は自分で反応する方が早いのじゃがの。


そんなのあったのか、よし、これなら防御面は完璧だ。


「お父さん、準備出来ました」


「ああ、俺もだ」


「じぁ、決闘始め!!」


母がそう宣言した瞬間、


「アイギスの盾! そして自動防御アブソリュートガード!」


俺はその2つのスキルを組み合わせる。


目の前に光の壁が現れた。これがアイギスの盾らしい。


「じぁ小手調べに……」


父は目にも留まらぬ速さで俺の後ろに回り込み、剣を使う振り下ろす。


「後ろ!?」


完全に反応が遅れた。このままじゃまずい! そう思っていると


キィン!!


光の壁が後ろに移動し父の斬撃を防いだ。


「チッ、ダメか」


「あっぶねぇ……」


「なら壊せばいいな。[破壊剣]デストラクションソード!」


父の剣が禍々しい光を帯び、巨大化する。


「あなた! そんなことしたら……!」


「不殺の呪いがあるから大丈夫、さっ!」


「うおおおおぉ!?」


あれはまずい。絶対にヤバいやつだ。アイギスの盾でも防ぎきれないかもしれない。


「砕けろぉ!」


父の剣が迫ってくる。


こりゃ負けたな。


キィン!!


「「「え?」」」


アイギスの盾は父の剣を難なく弾いた。


それにヒビひとつ入っていない。無傷だ。


「いや今の攻撃俺の全力なんだけど……」


「アル、お前の勝ちだ」


「ほんとうですか? やったぁ!!」


「じぁ呪い消すわね」


母がそういうと俺達を包んでいた霧が無くなった。


「7歳の息子に負けるなんて……自信無くすわ」


なんかすまんな父よ。

父の威厳って大事だよな。

俺家族いなかったけど分かるぞ。

実年齢40過ぎてるから。


「元Aランクの冒険者が何言ってるよ。さ、夕飯の支度するから先にお風呂入っちゃいなさい」


「「はーい」」



いつもの様に母の美味しい夕食を食べる。


昔、掃除とかする使用人はいるのになぜ食事は母が自分で作るのかと聞いたことがあった。


そしたら母は「大事な家族には自分の作った料理を欲しいのよ」なんて言っていた。


ああ母よ、あなたの料理はなんて素晴らしいんだ。


「アル、大事な話がある」


心の中で母に感謝していると父が真剣な表情でそう言う。


「なんでしょう」


「家は騎士の家と言うのは知っているな?」


「はい。確か貴族に仕えているんですよね?」


「そうだ。その仕えている貴族にお前と同じ歳の娘がいる」


「それがどうかしましたか?」


「お前はその貴族に預けることになった」


「え!? それはなぜですか?」


「そこの娘の護衛として来て欲しいと直々に貴族からお願いがあってな」


「なるほど……」


「もちろん嫌なら断ってくれても構わない」


「いえ、ぜひ行かせてください。お父さんとお母さんと離れるのは寂しいですがもっと色んな経験を積見たいですし」


「そっか。なら早速明日の朝出発するぞ」


「アル、私は寂しいわ……」


「15になったらちゃんと帰ってきます。

とゆうかたまに帰ってきますので安心してください」


その日、俺は最後の家族団らんを楽しんだ。


翌朝


貴族の家から迎えの馬車が来た。


そして中から執事のような老人が出てくる。


「アルバート・シュタイン殿、こちらへ」


「それではお父さんお母さん行ってきます!」


「元気でな」


「いつでも戻ってきていいわよ」


母が俺にハグする。父もそれに続いて抱きしる。


「お元気で!」


俺は馬車に乗った。


貴族の家か……とうとう神様が言ってた悪役令嬢のお出ましかな?


「着きました。ここがエリアス家の屋敷です」


それは一言で表すとデカい、だ。


何がって? 誰かの銅像だよ。家もデカいけどそれよりインパクトあったよ。


「あの銅像は?」


「あれは初代当主、グレイ・エリアス様の銅像にございます」


「まぁそうだろうね……」


馬車から降りて門をくぐり、玄関に歩いていくと数人玄関の前に立っていた。


お、お出迎えか?


玄関の前に立っていたのは厳ついおじさんと超絶美人と美少女だった。


最高じゃねぇか、おじさん以外。


「よくぞ来てくれた! 話は聞いているぞ!」


厳ついおじさんがごっつい手を差し出してくる。


握手を求められているのだろうが手、握りつぶされないかな?


「初めまして、アルバート・シュタインです」


恐る恐る手を握るとブォンブォンと振られ腕がもげるかと思った。いやまじで。


「ああ、よろしくな! 私はボレアス・エリアスだ! おい、お前達も自己紹介しろ!」


そう言われて美人さんが自己紹介する。


「ごきげんよう。私はミラ・エリアス。ボレアスの妻よ」


「よろしくお願いします」


次に美少女が自己紹介する。


「ごきげんよう。私はセリーナ・エリアスよ! あなたと同い歳よ! よろしくね!」


「あなたがそうでしたか。よろしくお願いします」


「さぁ、立ち話もなんだ。中に入って話をしよう」


そう言って俺は屋敷の中へと案内された。


屋敷の中はキラキラしていた。


西洋の豪邸と言った感じか。俺は日本の家よりも西洋の方が好きだったから良かった。


俺は書斎のような部屋に連れていかれた。

なぜかボレアスさんと二人きりなんだが。


「さぁ、君を呼んだ理由については聞いたか?」


「お嬢様の護衛と聞きました」


「ああそうだ。まぁそれだけじゃないんだが」


「他にもあるのですか?」


「セリーナは家族以外の人とあまり接した事が無くてな。それで同年代の誰かと関わりを持って欲しいと思ってな」


「なるほど。そういうことでしたか」


「だからセリーナと君の立場は対等だ。私達は君を自分達の子供と思って接する。だから君も私達を家族と思ってくれ」


「わかりました!」


「じぁとりあえずセリーナを連れて近くの村にでも出かけてきなさい」


「わかりました。では失礼します」


俺は部屋を出た。


さぁ、セリーナをお出かけに誘いに行こう。


部屋が分からなかったのでメイドさんにセリーナの部屋の場所を聞く。


コンコン


「セリーナ、入っていいですか?」


「いいわよ」


「どうしたのアルバート」


「アルでいいですよ。お父様に近くの村にセリーナと出かけて来いと言われまして。誘いに来ました」


「そう。わかったわ。準備するから外で待ってて」


「わかりました」


それからしばらく待った。


「お待たせー」


セリーナは動きやすい格好に着替えてきた。


きっとこれを選ぶのに時間がかかったのであろう。


「似合ってますよ」


「ふふ、ありがとう」


「じぁ行きましょうか」


「そうね」


俺達はすぐ近くにある村へと向かった。


セリーナが悪役令嬢かと思ったけど違うみたいだな。性格も穏やかそうだし、美少女だし。


いやそれは悪役令嬢でもあるか。


今度聞けたらアテナ様経由で神様に聞こうっと。

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