189-5.じゃがいもパン①







 *・*・*










 以前、エイマーさんに教えたちぎりパンもいいかもしれないが。


 せっかくなので、もう少し惣菜パンぽいのを作ろうと決めたのだ。だから、差し入れのパンも今日は控えめにしたわけである。



「私が今日提案したいのは、じゃがいもを使ったパンです」


『『『お芋??』』』


「蒸しパンとかではありません。ちゃんと、パンです」


『『『わぁ!?』』』



 まずは、生地作りから。



 薄力粉



 バター



 牛乳



 塩




 イーストを使わないパンだけど、子供達に教えるレシピとしては最適だと思う。


 これも、ロティと私の記憶にあるレシピから抽出エクストラクションしただけなんだけど。



「バター以外はボウルに入れて、バターは別のボウルに入れて……お湯の上で溶かしてから入れてください」



 湯煎って言葉はこの世界にないから、何と無くで伝えてみる。


 溶かしバターを粉類と一緒にしたら、手でまとまるまでしっかり混ぜていく。マシュラン達の方は、それぞれ自分達で混ぜていた。


 ホムラでの襲撃事件以降、いつからこの孤児院に来たかは聞いていないけど……マザー達に教わったのかな?


 はじめてにしては、おぼつかないところもあるが手つきは良かった。



「丸めれるようになったら、ボウルに戻して。上に濡れ布巾をかけてください」



 ラップは流石に出せないから、いつもの対策ではあるけれど。



「出来た!!」


「ふにふにしてる!!」


「なんか気持ち良い!!」



 子供達ははしゃぎながら生地をこねていたわ。大人のように生地を強く叩き過ぎる……これまでの間違った作り方を知らないから綺麗に出来ていた。



「はい。膨らんでくるまでに、中に入れる具材を作りましょう!」


「王女様ー! それがお芋??」


「そうよ? 前に食べてもらったピザパンに似た味になるわ」


『『『わーい!!』』』



 私も最近は作っていないが、今日のためにピザソースはあらかじめ仕込んできた。このソースが今日のパンにとって大事な味の決め手になるわけで。


 とりあえず、じゃがいもの皮剥きからはじめると……シミットが綺麗に薄く剥けていたのだ。私がパーティーにいた頃は、何も出来なかったのに……色々変わったのだろう。


 少し嬉しくて、少しだけ寂しく感じた。


 だけど、それを顔に出すわけにはいかないので次の指示を出すことにした。



「じゃがいもを適当な大きさに切って、沸かしたお湯の中で茹でてください。刃物には十分気をつけて」


『『『はーい!』』』



 誰も怪我することなく、その作業も順調に終わり。次に茹でたじゃがいもと持参して、班ごとに分けたピザソース。あとマヨネーズを入れて混ぜていく。


 明太子のような、薄ピンク色の具材が出来上がったので……子供達は食べたそうな顔になったので、苦笑いしか出てこない。

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