186-2.孤児院へ②
しばらくの間……私とマザーは互いに抱きしめ合いながら泣き続けていた。
まるで子供のように、お互いに喚き泣くだなんて思ったが無理もない。私が冒険者となって、この孤児院から離れてたったの二年……ううん、三年振りとは言え。
「久しぶりね、チャロナ」
マザーはマザーらしく、私達を出迎えてくれたのだ。
呼び方などについては、事情を知っていてもマザーはマザーのまま。私を以前のように、『チャロナ』と呼んでくれたのだ。
「マザーも無事で……本当によかった」
「ふふ。……たしかに失ったものもないとは言い切れないわ。けど、ちゃんと残っているのもある。全部を悲しんではいないの」
「あの……誰が亡くなったの?」
カイルキア様から、多少なりとも死傷者が出たと聞いていた。それを受け止める覚悟がないとは言い切れない。けど、ないままでは良くないとは思っている。
マザーに質問すると……場所を移動しようと孤児院の裏に案内された。
「……あなたが知っている子だと。ディアナとエリオよ」
「!!?」
そのふたりは……私がちょうど孤児院を出立する前に、親を病気で亡くした姉弟だった。
まだ小さくて、私が出立まで面倒をみたりしていた。親を亡くした自覚があまりなかった年頃だったが……私によく懐いてくれていた。
なのに……嘘でしょ?
「ディアナ……エリオ!!」
襲撃から数ヶ月経っているので、亡骸はとっくに土の中だ。私は感極まってその場で泣き崩れた。だが、地面に膝がつく前に、誰か温かな手を差し述べてくださった。そっちを見ると、カイルキア様がいた。
「……辛いのは、わかる。だが……」
ここで泣き崩れていても仕方がないのは、わかってくださる。しかしながら、あのふたりは……もうこの世にはいない。以前、カイルキア様の言葉にもあったように……フィルドさん達にもし頼めてもお母さんのように生き返らないだろうと。
でも、悲しくて苦しいことには変わらないので……私は彼の腕の中でマザーと再会した時以上に泣いてしまい……しばらくしたら、泣き疲れて眠ってしまった。
目が覚めた時は、懐かしい孤児院の個室に寝かされていて……私が目を覚ましたのがわかると側にいたカイルキア様が駆け寄ってきてくださった。
「カイル……様」
「大丈夫か……?」
「……ご迷惑、おかけしました」
「それは構わない」
支えながら起き上がると、扉の方からノックが聞こえてきた。
「カイル〜。あたし達だけど、チーちゃん起きた?」
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