186-1.孤児院へ①
*・*・*
お饅頭もとい、中華まんについては成功どころか大成功に終わり。
特に、肉まんについては普段の食卓にも出したいと皇帝陛下から、厨房の料理長に教えてもらえないかと頼まれ……料理長さんからは、『素晴らしい、素晴らしい!!』と叫んでは子供のようにはしゃいじゃった……。今までの作り方が稚拙だったと何度も頷くくらいに。
「このように、素晴らしい饅頭の作り方! 是非とも、城下にも広めとうございます!!」
「お役に立てましたか?」
「はい!! それはもう!!」
よかった、と思って少しばかり安心が出来た。国民に広めるのは少し先でも、このシュリ城を中心に浸透出来れば大丈夫。
中華まんは、肉まんだけでも少し食感を加えたりチーズを入れるレシピを伝えれば、料理長さんは卒倒しかけた。
あとは任せろと、アシュリン殿下に言われたので……私は、お兄さんに連れられて孤児院に行くことになった。
私のせいで襲撃されてしまったが、マザーは無事にいると言う今の孤児院に。
「…………」
「大丈夫よ、チーちゃん?」
馬車に揺れられながら、私は向かいに座っている
「…………うん」
心配とも違う。
不安に思っているのだ。私のせいでマザー達が危険な目に遭って……死傷者が出てしまった。私が知っているか知らない相手かはともかく……誰かが死んでしまったのだ。それを、たとえマザーが許してくれても私は許せない。
自分で、自分を許せないのだ。
「……と言っても、チーちゃんには酷かしらん?」
「…………」
「馬鹿どもがけしかけたとは言え、きっかけはチーちゃん。その弱点にもなる孤児院については、消した方がいいだろうと踏んだってとこね?」
「…………マザー達に、なんて言えばいいんだろう」
「落ち込んでいるよか、笑ってあげなさい? あんたは、カイルの婚約者なんだし……セルディアスでの第一王女でしょ?」
「……うん」
笑える、だろうか……マザー達の前で。
先に泣いちゃうってのは予想出来ちゃう。そんなことを悠花さんと話していると……馬車が目的地に着いたのか止まった。
「行くわよ、チーちゃん?」
「うん!」
悠花さんと一緒に馬車から降りると……少し遠くで『わぁ!?』と声が上がった。
「姫……チャロナ!!」
駆け寄ってきてくれたのは、初老の女性。
三年前とほとんど変わらない、マザー・リリアンだった。
「マザー!!?」
私も駆け寄ると、ふたりで同時に抱き合う。
ここが外とか、地面につくとかまったく気にせずに……私達は感極まってお互いに涙を流してしまう。
「よく……よく、無事で」
「マザーも……無事で、良かった!!」
それから少しの間だったけれど。
私達は周りに見守られながら、泣き続けていたのだった。
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