185-1.シュリ城へ①
*・*・*
ホムラ皇国に行く日。
お兄さんがシュリ城に転移する前に、まずセルディアス城へ来て欲しいと言われたから……カイルキア様と
「絶対……ぜぇったい、無事に帰って来るんだぞぉおおおおおおお!!!!」
お父さんである国王様が、私達が執務室に入った途端……私に抱きついて、ずっと泣いてしまっている。
お母さんは『あらあら』と微笑んでいるが、お兄さんと悠花さんでお父さんを私から引き剥がそうと頑張ってくれている。
「ちーちーうーえー!?」
「なにしてんのよ、この親バカ国王!? チーちゃんは急ぎなんだから離しなさいぃいい!!」
「うーるーさーいー!!」
ちょっと、私の故郷? のお城に出かけるだけなんだけど。
ついこの間、カイルキア様とは婚約したのに……どこまでも親バカで少し残念なお父さんです。
「……アインズ様?」
そして、お父さんがずーっとうだうだしていると、お母さんの方から咳払いが聞こえてきた。
「……アクシア?」
お父さんがプルプル震え出したので、お母さんを見ると……お母さんの後ろに般若か阿修羅が見えた気がした。
「チャロナにホムラへの派遣を許可したのは、貴方様ではないのですか? そのように、うじうじと子供みたいになさいませんと。近いうちに開く、カイルキアとの婚約式もあるんですから……キリキリ働きましょう?」
「は……はい」
お父さん、お母さんが死ぬ前もこんなだったかもしれないけど。奥さんのお尻に敷かれてしまっているようだ。……心の内で南無三と唱えるしかない。
ホムラへは、お兄さんの転移魔法で……リンお兄ちゃんも一緒に行くことになった。転移魔法は要するにワープ魔法だから、お兄ちゃんが発動させればあっという間に到着出来たのだ。
(……大きい)
小さい頃は、孤児院の庭から遠くに眺める程度だけだったのに……まさか、自分が尋ねる側になるとは思わなかった。
お兄さんの案内で正門に行くと、
「シュライゼン王太子殿下! ようこそ、シュリ城へ!」
「「「ようこそ、シュリ城へ!!」」」
と、兵隊さん達が出迎えてくださった。格好はホムラらしくと言うか、前世の知識だと中国っぽい服装。チャイナドレスではないが、時代劇とかで見たような青い服装だった。
「うむ! ご苦労!! アシュリンはいるかい?」
「は! すぐに!!」
「……お兄さん、殿下とお知り合いなの?」
こちらの皇太子殿下を呼び捨て出来るくらいなら、そうかもしれないけど。私が聞くと、お兄さんはにっこり笑ってくれた。
「うむ! 幼少期から交流があってね? 頻繁には会えていないが、シュィリンの従兄弟だから顔も似てるよ?」
「リンお兄ちゃんに?」
「……待たせたな」
お兄ちゃんの方を振り返る前に、殿下がどうやらいらっしゃったようだ。
たしかに、雰囲気は力強さを感じるけど、顔のパーツがリンお兄ちゃんとよく似ていた。
「……初めまして、チャロナ=マンシェリー=セルディアスです」
孤児院に居た時だと、はるか雲の上の存在だったが今は違う。私は今日、派遣と指導係もあるが王女としてここに来たのだから。
拙いマナーを使って挨拶をすると、アシュリン殿下は首を縦に振ってくださった。
「よくいらした。……本当に、復活なされた王妃殿と瓜二つだ」
「お……母上をご存知で?」
「ああ。君が生まれた直後にも、実は一度会いに行ったことがある。今日はよくシュリ城に来てくださった。陛下……我が父上もお待ちかねだ。案内しよう」
気さくな皇太子殿下だと思っていたら……お兄さんが何故かちょっかいをして、しばらく組み手の稽古みたいなのをしてしまった。
それを止めれたのはリンお兄ちゃんで、お兄さんにはしなかったがアシュリン殿下にはゲンコツをお見舞いしたのでした……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます