176-2.冒険者ギルドでも①(アレスタ視点)






 *・*・*(アレスタ視点)











 冒険者ギルドがどーのこーのしなくても、俺達の出る幕はなかった。


 もちろん、噂が拡大し過ぎないように手は尽くしたが……それでも出回ってしまった絵姿は、リュシアだけでなくセルディアス国内各地に出回り……元子爵の事件を色々誇張した観劇まで出来てしまった。


 一度、リーシュとデートついでに観に行ったが、誇張もやりまくり。いかに、王女殿下が素晴らしい演説をしたかを再現しまくっていた。


 王女殿下自身は、孤児院に行く以外はあまりリュシアの街を訪れなかったお陰で、噂は噂で半分以上美化されるだけで済んだが……。



(と思った矢先に、帰還発表と王妃様の復活って……)



 益々、あり得ない事態が起きてしまった。


 悪い意味ではなく、もちろんいい意味でだが。規格外過ぎないか??


 王妃殿下の復活って、どうやったんだ??


 しかも、強固派がほぼ捕縛可能が出来たと、俺達冒険者ギルドにまで通達が来ていた。であれば、これから増えようとしていた勢力が全て潰えたと言ってもいい。


 加えて、【枯渇の悪食】が先日まで蔓延しかけていた情報もあったが、それは王女殿下もだが最高神である『フィルド=リディク=ラフィーネ』様より事なきを得たと。


 んでもって、これまでごく一部でしか公開していなかった……悪食で喪われたレシピを王女殿下経由で公開することが決定となったらしい。



(……えらい事ですまねーぞ?)



 王家に戻られた事は何よりだが……下手すると国の恩人って言葉だけでも片付けられねぇ。


 友好国だけでなく、他国から繋がりを求めようと縁談が持ち込まれるだろう。まあ、それは無理だと俺は今日届いた通達で知ったが。



(……良かったな、カイルキア)



 マックスからだが、ひと月前に報告があった懸念事項が無事に報われたらしい。


 王女殿下とカイルキアが正式に婚約することになったそうだ。こればかりは、涙をこぼしそうになったぜ。



「さて」



 書簡にある程度目を通し終えてから、俺は待たせていた副ギルマスのラージャと一緒に別の部屋に行くことにした。



「……まさか、この時期に行なうとは思いませんでした」


「ちょうどいいだろ? マックスから聞いた事実の一部を話すには」



 執務室のすぐ向かいにある応接室の扉を開き。


 中にいた成人して数年程度の若い冒険者のパーティーを見ると、リーダーらしき茶髪の青年が立ち上がって腰を折った。



「わざわざありがとうございます、ギルドマスター」


「顔出しは駆け出しの頃以来か? マシュラン」



 王女殿下が以前に所属して、かつ脱退させる事で関係を終わらせた冒険者パーティー。


 そいつらが、ホムラで功労してきた知らせとギルド側からの報酬を与えるために、わざわざ呼び出したのだ。

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