176-1.孤児院でも(ライア視点)
*・*・*(ライア視点)
その知らせは、国中を駆け巡っていた。
長い間行方不明になっていらした、王女殿下がセルディアスに帰還なされたと……。そして、【枯渇の悪食】が未だ進行していたのを、その王女殿下がお止めになられたとも。
これまでの間違った、料理の知識は少しずつ回復するだろうと言う国王陛下からのお言葉も各地に広げているらしく。
私は……喜ばしくもあったが、複雑な思いでもいた。
この孤児院やリュシアの街では、既に王女殿下が戻られている事を知っていたからだ。もちろん、発表があるまでの秘密であったし、その……殿下ご本人は本来の身分を知らないでいたようだから。
それに、王太子殿下からも口止めされてたから……身分を知った王女殿下はどのように思われたのだろうか?
「叔母様も……この知らせをご存知かしら??」
ホムラ皇国はセルディアス王国とは密接した関係を持つ友好国だ。すぐではなくとも、王女殿下が王宮にお戻りになられた情報は届くだろう。
さらに、とんでもない事実が判明してしまったのだ。
「王妃殿下の復活……叔母様は驚くだけで済まないと思うわ」
ソーウェンとの紛争で命を落とされた、アクシア王妃殿下。
王女殿下の秘法で復活なされたらしく、お姿も当時のままではなく、いくらかお年を召されたそうだ。その絵姿はまだ城下には広まっていないが、きっと素敵なお姿のはず。
私は二十年前には頻繁にお会いしていたけれど……今のお姿はどのような感じかしら??
是非、お会いしたいが……色々立て込むのは想像が出来るので気長に待とう。
それに、国王陛下からの通達が来たのだ。
『以前のように、我が娘が主催で行なっていた差し入れもだが……菓子などの教室を続けたいと娘本人が頼み込んできた。時期は未定だが、いずれ再開する。しばし、待っていてくれ』
もう最後の教室だと思っていたのに、王女殿下は再開したいとおっしゃってくださったのだ。子供達もきっと喜ぶわ。
そのために、私は通達を受け取った直後に……子供達と職員を講堂に集めた。
「皆さん? ご存知かもしれないですが……以前より来ていただいてたお姉さんは、実は行方不明になられていた王女殿下です。その王女殿下たってのご希望で、最後だとお伝えしたお菓子教室などを……また再開したいとおっしゃってくださいました」
『『『『『わー!?』』』』』
それから子供達は騒ぎに騒ぎまくり、次は何を作れるのか言い合いっこしていたわ。
私はそれが落ち着いてから、リトの墓に向かい祈りの姿勢になった。
「リト……。王女殿下がまた来てくださることになったわ」
幼い命が無闇に消えないように、私達も力の限り尽くす。
そう誓い、私はしばらく墓前で神に祈りを捧げるのだった。
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