174-3.神との馴れ初め(ウルクル視点)
*・*・*(ウルクル視点)
あれは、人間の時間だと二十年近く前か?
日々、豊穣の力が失われつつあるこの世界の行く末を嘆くしか出来んかった妾は……本当に途方に暮れていたのじゃ。
最高神方に、助力を乞うも『今はその時でない』と仰るのみで……妾は情け無いが人間のように泣くしか出来ないでいた。
そんな妾は自力で豊穣の力を取り戻そうと奮闘しつつ……定期的にとある洞窟で泣いてばかり。
人間のように悔しくて悔しくて、情けなかったのじゃ。神であれ、何も出来ない己が。
泣いて泣いて、泣き続けて……そんなある日じゃ。
まだ成人前のラスティが、妾のいる洞窟にやって来たのが。
「……誰か泣いているの〜?」
少し間延びた口調の、人間の男の声。
妾はすぐに泣き止みたかったが、顔もだが嗚咽もなかなか止まらないでいた。その日は特別に泣き過ぎたせいじゃ。
『誰じゃ!?』
振り替えれば、水色の髪に若草のような瞳を持つ少し幼い青年が立っていた。背に籠のようなものを背負っておったから、採取の途中か?
泣いている妾の声が届くにしても……ここは洞窟の奥じゃぞ?
どう言う事じゃ、と妾にはわけが分からなかった。
「うわ〜〜、綺麗な人〜!!」
その男は、妾が美しい身なりでいるのに驚いたようじゃ。妾は誰もが羨むほどの美貌を持つ豊穣の女神であるから当然じゃが……その男が感動する表情には少々照れ臭くなったわ。
『な、なんじゃ? 主はなんじゃ?』
「僕? 僕はラスティ」
『……ほう。主よ、妾の声が聞こえていたのか?』
「うん。洞窟の外から……女の人が泣いてる声が聞こえてきたから気になって」
嘘を言う顔ではなかった。
であれば、この者……ひょっとして、稀にない神との共鳴者か?
妾ら神でも最高神方に次ぐ、高位の神である妾に??
このような幼い人間の男にか??
(…………可能性があるのかえ?)
まだ確認はしていないが、もしこの男が共鳴者であれば……妾の力と混ざり合い、衰退していく豊穣の力を一時的に止めれるかもしれない。
相手は人間であれ、神との共鳴を可能とする魂の持ち主は……魂を通い合わせれば、妾ら神に力を与える事が出来るのじゃ。
『ラスティとやら』
ダメ元でも聞かぬよりマシだと、妾は泣くのをやめてラスティに詰め寄った。
「なぁに?」
『いきなりじゃが、妾は美しいと思うか?』
「思う〜! お姉さんとっても綺麗だよ〜?」
『……妾が神だと言って信じてくれるかえ?』
「え、神様??」
『…………豊穣の女神が一角、ウルクルの名は知っているかえ??』
「…………ごめんなさい、わかんないや〜?」
『まあ、あまり伝承に関わってないからのお?』
やはり、知られていないものは仕方がないと思うしかなかった。
だがしかし、妾の本命はそこではない!
妾は軽く飛んで、ラスティの前に立った。
「わぁ!?」
『いきなりで悪いのじゃが……ラスティ、妾の
「つがい??」
『うむ。恋仲以上に……
「え、え? なんで僕に??」
『主が妾の共鳴者じゃからじゃ。それに……』
神と知らずとも、女子を心配してここまでやって来た心意気。
そこに、少々絆されたからのお?
あと、タレ目じゃが妾の好みのど真ん中だったからじゃ!!
その欲望は口にせんと、共鳴者の理由の方をきちんと告げたら。
「! 神様がお嫁さんって、まだ信じられないけど〜……君みたいな綺麗な神様だったら大歓迎〜〜!!」
『うむ!! であれば、今日より妾達は番じゃ!!』
じゃが、情事云々をしてしまうと成長を止めてしまうので……ラスティの身体が整ってからにしたが。
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