170-4.千里と悠花③
びっくりして意識を現実に戻してみると……とても温かい腕によって抱きしめられていた。
その腕の正体を、
「…………チャロナっ!!」
凄い、悲痛な思いが伝わる声。
その後に、私の頬とかに温かい涙がこぼれてきた。
(……泣かないでください)
カイルキア様に、涙だなんて似合わないから。
「……大丈夫です、カイル様」
私が彼の顔の方に手を伸ばすと、カイルキア様がその手を掴んでくれた。抱きしめていただいている腕よりも熱かった。
「チャロナ……目が、覚めて!?」
「少し……記憶の封印が解けただけです。ご心配おかけしました」
「……そうか」
「んもぉおおお!? びっくりさせないでよ、チーちゃん!!」
悠花さんに向かって笑ってみると、悠花さんは涙を引っ込めてから……私のとこに来ると軽めのデコピンをお見舞いしてくれた。
「あう……!」
「まーったく、いきなり倒れるたんびに心配させないでちょーだい!! んで? あたし達が日本でどういう関係だったかも思い出した??」
「うん。……あの時殺されたのも」
「そ。けど、今は今よん? あたしもあんたも生きてるわ」
「うん!」
とここで、外野になっていたカイルキア様が私から離れようとしたので、私じゃなくて悠花さんが私達を密着させるように逞しい両腕でサンドしたのだ。
「マックス!?」
「早いうちがいいだろ? 俺は邪魔だしな?」
「ゆ、悠花さん!?」
悠花さんは男言葉で言い捨ててから、部屋から出て行き。……私とカイルキア様は絨毯の上で抱き合っている構図が出来てしまったのだ。
「「…………」」
カイルキア様は気づいているはず。
そして、私も記憶の封印が昨日解けた範囲では知っている。
お互いに、両想いだと言うことを!?
「……とりあえず、座り直すか?」
私の手を引き、立ちやすい姿勢でエスコートしてくださった。なので、私も頷いたんだけど……足が痺れてしまい、情けないが少しの間立ち上がれなかった。
「……すみません」
しばらく、痺れを抜いてから私達は私のベッドに二人で腰掛けることになった。カイルキア様は気にするなと言ってくださったけど。
「……記憶の封印が、解けたと言っていたな?」
そして、切り出された話題について……私は嘘を吐きたくなくて、ゆっくりと頷いたのだ。
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