166-4.母娘の入浴タイム






 *・*・*










 お城のお風呂だから、とっても大きいのはわかってたんだけど。



(まさか、湯船が露天風呂だなんて)



 思うだろうか?



「……広い」



 体を洗う場所もだけど、湯船の範囲がとてつもなく広かった!?


 何この規模!? レジャー施設程じゃなくても広過ぎやしないだろうか??



「ふふ。セルディアス城には……今はわからないけれど、昔はよく他国の王家を招いていたの」



 お母さんはなんてことのないように言うけど……それだけ、この世界に転生した私にはそうは思えなかった。


 カイルキア様のお屋敷の女風呂だって、めちゃくちゃ広いと思ってたんだから……その何倍も広いお風呂だなんて、前世の知識や経験でしか比べようがないもの。


 それと別でもう一つ。



(お母さんの胸って、エイマーさん並みにご立派だわ!?)



 なんで、その遺伝子が今の自分にはないのだろうか!?


 四十代になったとは言っても、お胸は垂れているどころか形が素晴らしく整っている。ユリアさん達のお陰とは言え、やっぱりなんで私にはそこが遺伝してないんだ!?


 とりあえず、秋とは言え涼しい風が外から吹き込んでいたので急いで体を洗うことに。確認したが、私の胸はBカップ以下だった。



「……お母さん、これってどっちがシャンプー?」



 綺麗なガラスのようなボトルに入っているアメニティ達。カイルキア様のとこも高級そうだったけど、ここはお城だからもっとお高いだろう。



「変わってなければ、ピンク色のはずだわ」



 なので、それの中身を手に載せて泡立たせると……素晴らしく泡立ちがいいシャンプーだった。念入りに優しく洗ってから、トリートメントもしてタオルで髪をまとめてしまう。私もだけど、お母さんも結構長いからちょっとしたエステ前の装いに見えた。


 湯船に浸かると、とてもいい温度だったので思わずため息が出ちゃう。



「極楽〜〜……」



 ついついそんな言葉が出てしまうくらい。



「ふふ。けれど……あなたの選んだ選択とは言え。……またこの城に戻って……大きくなったあなたやシュラを目にすることが出来ると思わなかったわ」


「……お母さん、どうして一度死んじゃったの?」


「それはね……?」



 それから、お母さんが一度死んだ経緯を聞いた。


 ソーウェンという過激な戦争を好む国からの襲撃により、お母さんは赤ん坊だった私と幼いカイルキア様を庇うのに……命を掛けて守ったこと。


 そして、命を失った時に……ユリアさん達から条件を得て私の成長などを見守らせるために、ロティを創って人柱状態で魂だけ閉じ込められていたこと。


 もちろん、お父さん達も見守っていたらしいけれど、優先していたのは私だそうだ。



「…………私があの選択を選ばなかったら、本当に生き返らなかったんだよね?」


「そうね? 最高神のお二人は大丈夫と仰っていたけれど……あなたの選ぶ選択はきちんと把握されていたかもしてないわ」


「……うん」



 ユリアさん達と接した期間も短いけれど、私の性格はよく分かってたみたい。


 だから、提示された選択肢もあんな内容を用意してたんだと思う。



「ふふ。過ぎた事を振り返り過ぎるのも良くないわ。ところで、チャロナ?」


「なーに?」


「カイルキアにはいつ言うのかしら?」


「え゛!?」



 見守っていたからか、私とカイルキア様とのやり取りも全部見てたかも。あと、ついさっきまで封印されてた記憶の数々もおそらく。



「ふふ。あなた達の可愛らしいデートも全部見てたもの? 記憶の封印も解けたのでしょう? 屋敷に戻ったら、すぐ言うのかしら?」


「わ、わわわ、わかんないよ!?」



 たしかに、両想いかもしれないけど……確信していいか自信がない!!


 前世もだけど、今でも恋愛事にほとんど関わっていなかったから。


 とりあえず、お父さん達を待たせちゃいけないからと、お母さんにはコロコロ笑われながら脱衣室に向かえば。



「王妃様、王女様。装いを整えさせていただきます」



 そして、待機していたらしいメイドさん達によってピカピカに磨かれてしまいました。

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