165-1.お父さんの誕生日プレゼント
*・*・*
自分の本当の誕生日。
それが本当は今日だと言うのには驚いたけど……お父さんが、今日のために用意してくれていた誕生日プレゼントがあるらしい。
この前の時にも、今身につけているアクセサリーをいただいたんだけど……もらい過ぎじゃないかな? 用意してくださったのを拒否したいわけじゃないんだけど。
お父さんは、立派な執務用のデスクの後ろにある棚のとこから、赤い布に包まれた何かを手にとってから持ってきてくれた。私に手渡すと、さあ、と布を取るように促す。少し重いが……これは何だろうか?
ゆっくり布を外すと、見えてきた緑色の髪に思わず目を丸くしてしまう。
「あ!」
布の下にあったのはお人形さんだった。
ただのお人形さんじゃなくて……これって『ヴィスクドール』ってお人形さんだったかな? けど、私そっくり。
髪も顔もだけど、服装まで今のドレスと同じだ。つまりは、このドレスもお父さん達が用意してくださったんだろう。
「まあ、アインズ様? チャロナと瓜二つの人形をお作りになられて?」
お母さんが横から覗いてくると、綺麗にふふっと笑った。同じ顔のはずだけど、ユリアさん達のお陰で四十代くらいの年齢になったお母さんだから、少し……いやだいぶ美しい!!
これが将来の私の姿なのか……。お兄さんは逆にお父さんそっくりだから……うん、兄妹で親に似過ぎだ。
「ああ、そうだ! 一から俺の手作りだ!! 受け取ってくれ!!」
「え、お父さんが全部手作り!?」
チート過ぎやしませんか、この国王様は!?
ヴィスクドールってたしか陶器に似た材料で作るっぽいけど……精巧過ぎやしませんか? 目の部分もキラキラし過ぎているけど、まさか宝石? なのかもしれない。
「うふふ。チャロナ? お父様は人形作りに関しては職人顔負けなのよ? そのお人形も大事になさいね?」
「はい!」
「チーちゃんに瓜二つって……」
「まあ、陛下だからしょうがないんじゃない?」
今日から、私が過ごす場所がどうなるか先に決めることになった。お母さんは当然お城ではあるけど……。
「チャロナも城で過ごすんだぁあああああ!!」
私が悩み出したら、お父さんが私の腰にしがみついてきたわけで。
嫌ではないけど、少々暑苦しい。それだけ、今まで過ごせなかった期間も長いせいもあるから。
「陛下!? チーちゃんも今まで過ごしてた期間もあんのよ!? そりゃここがチーちゃんのほんとの家だからって、いきなり城で住むって決められないでしょーが!!?」
「だがな、マックス!? チャロナの部屋は既に準備してあるんだ!? いつでも王女としての生活が出来るように整えている!!」
「だからって、決めるのはチーちゃんでしょ!?」
「ぬぬぬぬぬ!?」
私の代わりに、悠花さんがいつもの口調でヒートアップしてしまっている。私のマブダチだから気持ちを代弁してくれているけど……なんで、そこまで反対してくれているのかな?
たしかに、このままお城に住んじゃったらカイルキア様達とも離れ離れになってしまうから、嫌だ。
それを知ってくれているからかな?
でも今は、お母さんが生き返ったからもっとお母さんと一緒にいたい気持ちもある。
「あのー……」
「「なに!?」」
「たしかに、私は王女だって知れたんですが。私は今までローザリオン家での料理人でしたし。まだまだシェトラスさん達にパン作りを教えてない状態です。その……定期的にこちらに戻って来るのではダメですか?」
「ぬぬぬ……たしかに、神から食文化については改善されていないと伺ったが」
「チーちゃんしか出来ないもの? シェトラスやエイマー達だけでまだ作れるとは思えないし」
「お父さん達とは過ごしたいと思うのは本当です。けど、ホムラへの派遣もありますし……今までと近い状態がいいかなって」
「そうね、チャロナ? あなたにはすべき事がきちんと自分で理解出来てるもの?」
お母さんに頭を撫でてもらうとつい嬉しくなっちゃう。
お父さんはうなっていたけど……やがて、がっくしと肩を落とした。
「だが……今日は全員城に泊まってくれぇええ!!?」
「俺は家族だけで、パジャマパーティーしたいんだぞぉおお!!」
「よく言った!!」
「……あなた」
「はは……」
騒がしいけれど、とりあえずパーティー会場に行く前に今後の過ごし方が決まって良かった。
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