161-1.玉座の間へ①






 *・*・*








 お師匠様達がまた後で、と部屋から出て行かれてから少しして。


 またノックの音が聞こえてきたが、今度は知っている人達じゃなかった。



「大変お待たせ致しました。……玉座の間にご案内致します」



 案内係さんらしい男の人は、とても綺麗な礼服を着ていらっしゃって。いよいよだな、ってほぐれてた緊張感が戻ってきた。


 だけど、お師匠様達が言ってくれたように堂々としていなくっちゃ。


 カイルキア様の腕に手を添えて、エスコートしていただきながら控え室から出た。


 いきなり控え室に着いたから、お城の中なんてほとんど知らない。


 廊下も、赤色と金色がメインの装飾ではあったが目が痛くなることはなかった。派手は派手なんだけど、落ち着いた雰囲気と言うか。


 それと、どことなく懐かしさを感じるような……。私がお城に来たのは初めてなのに?



(……どうして……?)



 前世では全然なかったのに、チャロナは懐かしさを感じているのだった。


 千里にはなくて、チャロナだからか。まさか、と思っても憶測は良くないと軽く頭を振った。


 すると、カイルキア様が不思議そうに私の顔を覗き込んできた。



「……どうかしたか?」


「あ、いえ! だ……大丈夫、です!」


「……そうか。もうまもなく、玉座の間に着くぞ」


「は……はい!……カイル様はいらした事がおありなんですか?」


「…………そうだな。……とにかく、驚く事が多いはずだ。あまり騒がないように」


「? 今でも充分驚いているんですけど」


「それ以上だ」



 どう言うことなのかよくわからなかったが、前を歩いている案内係さんがゆっくりと止まった。私達も止まってから前を見ると、これまた豪華な扉が。ただでさえ大きなお城の造りなのに、その扉ですら芸術品のよう。


 扉の前には、甲冑を身につけている門番のような人達が二人立っていて、案内係さんを見ると持っていた槍を軽く地面に置いた。



「ローザリオン公爵並びに御一行!! おなぁりー!!」



 ちょっとだけ、江戸時代のお奉行? とか思ったけれど……間違ってはいないので黙っていた。


 門番さんの大声で、中の方から扉が開いて……案内係さんはここまでだと言う風に中に入るように促してきた。


 だから、カイルキア様が行くぞ、と小声で教えてくださったので転けないように中に入る。


 中はより一層赤と金のゴージャスな装飾が目立つ広い部屋だった。玉座の間って言うから、きっと王様がいらっしゃるのだろうと前を見れば……?



(……あ、あれ?)




 服装はゴージャスなんだけど。


 国王様が座っているらしい、玉座って場所にいたのは。


 アインズさんと、シュライゼン様だったのだ。

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