161-2.玉座の間へ②(アインズバック視点)






 *・*・*(アインズバック視点)









 とうとう、きた。


 とうとう……この時がきた!!


 マンシェリーが、この城に帰ってきた時が!!


 だが、玉座の間に来て……可愛らしく目を丸くしているマンシェリーに抱きつきたくても今は出来ない!!


 王として対面したのだから、今日の趣旨を伝えねば!!


 それは主に、側に控えているカイザーの仕事ではあるがな?



「……遠路はるばる、よく来た」



 俺がまずそう告げると、カイルキアもだがマンシェリーも綺麗にお辞儀してくれた。さすがは、ギフラの夫人であるメイミーの指導だ。周りでさっきまでざわざわしていた臣下らが余計にざわついている。


 まあ、それについてはどうでもいい。強固派の連中も今のところ何もして来ないが。……イシューがいつマンシェリーを狙うかはわからん。警戒は暗部部隊を筆頭に気を配っているからな?



「……初めての者もいるな? 私は……アインズバック=ミュケラン=セルディアスだ。この場にいるから理解はしてくれただろうが……このセルディアス城の主であり、国の主だ」



 国王らしく、厳つい物言いになったが、マンシェリーはさらに目を丸くした……可愛過ぎる!!?


 だが、この内心を表に出してはいかん!!


 超頑張れ、俺!!


 神のご意向があるかもしれぬが、今日こそマンシェリーに実の父親だと告げられるのだから!!


 マンシェリーは口をぽかんとはしなかったが、状況整理に追いつかないのか目が少し泳いでいた。仕方ないが、バカ息子のこともきちんと告げよう。



「……ここにいるのは、我が息子であるシュライゼン=アゲート=セルディアスだ。王太子としての地位にいる」


「はっ」



 玉座の間なのでいつものふざけた物言いはないが、さらにマンシェリーを混乱させてしまったのか。親しくしていた貴族が実は王太子だと知って、マンシェリーはシュラを思いっきり凝視していた。



(だが、ここからだ……)



 本題は俺達の素性をマンシェリーに話す事。


 今日の式典は、生誕祭と成人の儀を改めて行う事。


 ホムラへの派遣についての任命も当然するが、それくらいなら書簡で言い渡すだけでも十分だ。


 だからこそ、シュラの提案で今日を設けた!



「……本日皆様にお集まりいただいたのは、他でもありません。カイルキア=ディス=ローザリオン公爵のお隣にいらっしゃるのは……」



 カイザークがいよいよ告げるのだ、マンシェリーの本当の名を。


 それを告げる事で、神が何を成されるかはわからないが……数ヶ月とは言え、待ったんだ!! マンシェリーを……俺の娘と言いたくても言えなかった事を!


 カイザークは一度だけ俺を見てから、声高らかに告げた。



「マンシェリー=チャロナ=セルディアス様!! 行方知れずでした、我が国の第一王女殿下であらせられます!!」



 そしてその声と同時に、臣下が集まっている場所から誰かが飛び出してきた。


 ここからでは、顔はよく見えないが……おそらく、イシューであるだろう。俺は、奴がマンシェリーの目の前に来るまで待った。



「王女殿下、お命頂戴する!!」


「……止めろ」



 そんな事はさせないので、潜んでいた暗部部隊に指示を出して捕縛させた。イシューの持つ短剣ダガーはマンシェリーに届く事はなく床に落ちて、暗部部隊が証拠品として回収。


 イシューは動きを止められても、ジタバタともがいていた。



「陛下…… 何故!?」


「お前の計画など、既に知れていた。だが、本当に実行するかは真偽を見極めるのに……今日まで泳がせていたのだ。だから……お前を含める強固派の連中には、今日と言う日に引導を渡そう」



 俺が手を上げれば、他の暗部部隊が姿を現して……リストに載っていた強固派を次々にひっ捕らえていく。


 少し、少なくなった臣下の群れは俺に対して跪いていた。自分達もいずれは……と思う者もいたのだろう。


 俺は上げたままにしていた手を下ろしてから、再びマンシェリーを見た。


 怖い想いをしたはずなのに……その瞳には光がなかった。



「……マンシェリー?」



 気を失ったかと思ったが、俺が呼ぶとマンシェリーはすぐに立ち上がった。



「…………選定の時が来た。この王女の身体は一時的に預からせてもらう」


「「「「「!?」」」」」


「姫!?」



 カイルキアが叫んで、マンシェリーの腕を掴んだ瞬間。


 玉座の間を覆うくらいのまばゆい光がほとばしり。


 消えた時には、マンシェリーだけでなくカイルキアもいなかった。

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