156-3.こちらも実は(シミット視点)






 *・*・*(シミット視点)








 チャロナ姫様と出会った時は。


 正直言って、焦った。


 メルク……メルクキスの超絶好みだろうって。


 あたしとあいつは幼馴染みで。


 ちょっと歳上だったあいつと再会したのは、旅先で出会ったマシュランにパーティー勧誘された時だけど。ただでさえ、強面だったメルクが……さらに強面だったけど、かっこよくなってて。


 でも、見向きもされないだろうなあって。けど、側にいられるなら、とうじうじしてたわ。


 だから、姫様が加わった時は。本当に焦った。小柄で胸はないけど……顔が、メルクの好みなんだなって。


 あいつが姫様を見た時に、そんな顔してたんだもの。だもんで、あーあ、失恋かなって自覚したんだけど。


 マシュランが姫様を脱退させるまでも、一度も、あいつは彼女に何も告げないままで終わった。


 二年もよ?


 姫様も途中で成人したのに。


 なんでかは……わからなかった。


 聞いちゃったら、傷えぐっちゃうことになるし。失恋しても、まだ好きだって相手に嫌われたくない。


 だから、姫様がいなくなってから野営とか頑張ってみたけど。あの人が来るまで、野営をほとんどしてこなかった私達がうまく出来るわけもなく。


 結局、姫様が来る前のような生活に戻ってしまった。


 不満がないわけじゃないけど、出来る出来ないを無理に押し通すのも良くないもの。



「あーあ、諦めなきゃなんないかなあ?」



 ホムラで報酬とマザーからの罰? を受けてから。なんとなく、またセルディアスに向かうことになり。


 その旅路の途中、親友でもあるメンバーのミッシュが。想いを寄せていたラトと結ばれた。


 騒いでたから何事って思ったけど、いい事なら大歓迎!


 結婚とか脱退は当分先だから、今は心配しなくていいみたい。


 だから、じゃないけど。あたしは諦めようと思った。


 いい加減、長年の片想いを終わりにさせようと。


 メルクの方は、どうなっているかわかんないけど。



「……何を諦めるんだ?」


「ほわ!?」



 ちょっと川べりで休憩している時に、ぼーっとしてたら。……後ろからメルクが来た。


 マジ、最悪!?



「諦めるだなんて、お前らしくないな?」


「ほっといて!」



 あーあ、あーあ。


 姫様とかと違って、自覚出来るくらい勝気な性格だから、ついつい声を荒げてしまう。


 なんて、可愛くないと思っていると。


 メルクが隣の岩に腰掛けたのだった。



「……もう少ししたら移動だ。今日も野宿しないようにしないとな?」


「……そうね」



 あと少し、で移動。


 そうしたら、この無駄な想いも終わらせよう。


 そう思っていたら、メルクからいきなり頭を撫でられた。



「!?」


「シミット。俺で良ければ話は聞くが?」


「……いいわよ」



 あんたについてなんだから、言えるわけないでしょ!?


 だから、首を横に振ってから立ち上がり。あたしはその手を振り払って、ミッシュ達のところに行くことにした。

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